03 夢と現実の狭間 Ⅲ

「で? これは何だ?」

「とても素晴らしい朝ね、おじいちゃん。ついにぼけたのかしら?」

「寝ぼけておるのはお前であろうが」

 頭を掻きながら爺さんが答える。

 うるさい。

「うるさいじーさんね。アタシが何をしようが勝手でしょう。それともなにかいいたいことがあるのかしら?」

「……メリラ。いるか?」

じじいが勝手に私の友人の名を呼んだ。なぜこんなにイライラしていたのか分からないけれどなんだかムカつくので噛みつく。


 ◇


「年頃の娘がはしたない。何をしておるのだ」

「ふぁみついてるのょ」

「何を言っておるのか分からんな」

 特に気にした様子がないのがムカつく。あれ? 目が覚めてきた?

「…………」

「気は済んだか? それに目もそろそろ覚めてきたのではないか?」

「夢なんか醒めてないわよ」

 反射的に答えた。

「そうであったな」

 よく分からないが、目が覚めたので態度は改める。はしたないとは思わないが老人に噛みつくはよくない。それになんでこんな――

「目は覚めたか?」

 思考は遮られ、老人がなぜか私の手を取って起き上がらせられた。

「……痛かった?」

 噛みついたことを思い出し、訊く。

「小娘に文字通り噛みつかれた程度で痛むほど耄碌してはおらぬよ」

 呆れたような様子に急に罪悪感がこみ上げる。

「……ごめんなさい」

「謝るのであれば最初からするでない」

「――あの」

「良い。気にすることはない。それにお前の寝起きの悪さなど今に始まったことではないであろう?」

「治したいとは思っているのだけれど」

「ああ、それは嘘だな」

 そういいながら、彼は苦笑した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

眠い魔王と天然勇者 優。 @renren334511

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る