02 夢と現実の狭間 Ⅱ

「私の眠りを妨げたこと、後悔するがいい」

 寝ぼけた頭で寝ぼけたことを私は言う。寝ぼけているから仕方がない。眠い眠い眠い。この起きたばかりの頭の重さは昔から変わらない。とても迷惑な話。思わず呻きながら起き上がった私は敵対者を見る。

 都合の良すぎる戯画のように勇者が起き上がっていた。それはとても綺麗で規定で機械のようで。その言葉すらなにかに操られているように思えた。

「あたしは、あんたを許さない」

 苦笑がこぼれた。

「なれば、私を殺してみろ。そうすれば貴様は本当の勇者になれるかもしれないな」

 この時の私は甘かったのかもしれない。

「……そうさせてもらうわ」

 不敵な笑みを浮かべる彼女を見て、思わず私も笑みが浮かんだ。

「覚悟ッ!」

 勇者が剣を振るう。その斬撃はとても綺麗で幻想的で規定で――

「剣が泣いているぞ。勇者」

 泣いているのは私かもしれない。

「黙りなさいッ!」

 自身の剣に固執することなく、彼女は蹴りを放つ。

「ほう」

 人間にしてはマシな攻撃だった。

「いい戦い方だ。さらに研鑽を積むが良い」

「何様ッ!」

 どこからか取り出したのか、彼女は青白い光を放つ双剣を持っていた。

 そして、その剣から斬撃を放つ。

―― アタシハ

 ――『王』だ。 



「…………」

 倒れ伏した勇者――、少女を見ながら私はどうしたものかと思案する。

綺麗なものを見せてもらった。だから殺すのは勿体ない。生かせば私の脅威に成り得るこの可能性を私は――

「ふわ……」

 疲れたなぁ……。

「何をしているのだ小娘」

「あら、おじいちゃん。まだ起きる時間には早いのではありませんか?」

「老人だからといって遅く起きるなどとは偏見もいいところよな」



 ◇


これは私のキオク。

貴方には、どう見えるのかしらね?


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