眠い魔王と天然勇者
優。
01 夢と現実の狭間 Ⅰ
◇
この世に救はない。
誰も彼も自身が一番で、他人を気遣うことなど考えもしない。生物としては正しい形かもしれないし、知的生命体を気取るならそのくらいできたほうが自然だとも思う。きっと、現実に併せて暮らすほうが楽で楽しくて、そこには「幸福」があるのかもしれない。たとえ奴隷であっても、だ。
しかし、そこに『自由』はあるのだろうか。
その思考はいつまで経っても私の心の底にこびりついていて、ときおり思い出す。
◇
ガンガンと何かを叩くような音がする。
もぞもぞと手を動かすと、柔らかい感触があることに気が付く。
寝る前に毛布をかけていたことを思い出した。柔らかくてずっと抱きしめていたくなるような材質で部下が作ってくれたものである。
「んんー」
温かい。
頭まで引き寄せて、その音を遮ろうと試みる。目を開けたら起きるしかない。今はそんな気分じゃない。まだ眠いんだ。目を開ける気分じゃない。
しかし現実は残酷だ。そんな行動をしていたら、さらに頭が覚醒した気がした。
「滅びなさい、魔王!」
現実離れした『魔王』という言葉が私を少しだけ現実へ引き戻す。
覚醒しきっていない私の頭にそれはキンキンと響く。
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