作者一流の文体と構成がピタリはまった芳醇な快作。なによりも手品師の謎めいた、それでいて律儀な描き方がいい。最初は少しばかり迷惑そうだった男が、手品師のするりするりと入り込む話術に引き寄せられていく様子がたまらない。小道具の配置も完璧だ。宝塚で実演されてもおかしくないと思う。