市街戦(下)

 現れたピジョンホーラーのマーカーは「プラム2」の表示。立ち上がって歩行している。平均台の上を歩くような足取りだ。その後ろにストロベリー2(ICV)と5(MGS)が続く。隊列にこれといって変化はない。随伴歩兵は車両の背後を離れて両側のビル伝いに進んでいる。

 ふとプラム2の左右真横、三十メートルほどの距離に敵のマーカーが同時に現れる。建物の三階、ずいぶん奥まったところに隠れていた。被発見を遅らせてプラム2の砲塔側面を狙おうとしたようだ。

 しかしプラム2の両腕がそれぞれ真横に向く。銃口を向けられた敵の歩兵は無力化判定を食らう。

 ほぼ同時、五十メートルほど後方につけていたストロベリー5の両側、八階建てビルの最上階の窓に敵の反応が現れる。

 プラム2とストロベリー2が行き過ぎるのを待っていたようだ。

 早い。出現から攻撃まで数秒の空白もない。

 ストロベリー5は対戦車ロケットにほぼ直上から車体を射抜かれる。エンジン損傷の判定。操縦手が渋々アクセルを離すとともに行き足が止まって停車。

 もどかしいほどゆっくりとストロベリー5の砲塔が回る。砲身がいっぱいまで上を向くが、それでも仰角が足りない。せいぜい四階を狙える程度。だが敵は八階だ。

 MGSは市街戦を考慮していないわけではない。トップアタック対策も充実している。しかしそれは彼我距離百メートルで十階建てビルの屋上にいる敵兵を照準できるという話であって、この至近距離、ほとんど真上では手が出ない。

 すぐにプラム2が後進してストロベリー5の援護に入る。バックもなかなかの速さだ。敵の真下に立ってグレネードを撃ち上げる。

 発射筒を飛び出した弾頭は一度建物の天井で跳ね返ってから炸裂、次の攻撃にかかろうと身を乗り出した敵兵の背中に破片を降らせる。無力化の判定。

 プラム2はすぐさま照準を向かいのビルに移す。

 その間にもう一方の敵の第二射がプラム2を真上から狙う。

 が、危うくミスの判定。外れた。

 どんな乗り物も壁より天井を厚く造るのは構造的に難しい。だから天面装甲というのは薄くなりがちなのだが、そこを狙うのがいわゆるトップアタックだ。真横から狙っても敵の手前で一度上昇して真上から突入するといういやらしい対戦車ミサイルだってある。天面が薄いのはストライカーもピジョンホーラーも変わらない。でも背が高い分ピジョンホーラーの方が上を取られにくいし、取られたとしても起立状態であれば投影面積が小さい。

 つまり直上の敵からしてみればストライカーよりピジョンホーラーの方が狙いにくい相手なのだ。

 ストライカーに比べれば機銃の照準範囲もピジョンホーラーの方が上だ。容易に真上や真横を狙うことができる。ピジョンホーラーがシティ・ドミネーティング・ヴィークル、つまり「市街戦支配車両」と呼ばれる理由はおそらくそこにある。

 敵弾を躱したプラム2は十二・七ミリで応射、無力化。

 ストロベリー5は撃破判定。残ったプラム2とストロベリー2が隊列を組み直して交差点に向かってくる。

 私の死角に入っていた交差点の敵が一気にマークされていく。プラム2からの情報だ。私が捉えていた敵のマークも向こうに送られているだろう。

 判定ログを見た感じ、プラム2は敵の攻撃を尽く弾き返しながら交差点のこちら側を制圧している。

 プラム2の手前に黒い横線が走っているのが見えた。架線だ。交差点に入る手前に架かっている。

 私は跳躍で飛び越えたが、さらに重いピジョンホーラーがどうやってクリアするのだろうか、やはり一度車輪走行の姿勢に戻すのかと思って見ていたけど、ちょっと驚いた。

 プラム2は架線の前で一杯までしゃがんで踵を地面につけ、そのまま脚部を前方に押し出すように脚を伸ばして走行姿勢に移った。架線をくぐったところで爪先でブレーキをかけ、その勢いに乗っかるように腰を浮かせてそのまま元の歩行姿勢に戻った。脚の裏側に車輪がついているからそういう流れになるのは理解できるのだけど、その動きはあまりに滑らかで素早かった。まるで身軽なローラースケーターが走りながらちょっとしゃがんでみただけみたいな感じだった。とても重さ数十トンの鉄塊がやっている動きとは思えない。

 交差点に入ったプラム2は砲塔をぐるりと回して、時折脚で高さを調節しながら一帯を制圧する。建物の奥に逃げ込んだ敵をストロベリー2の随伴歩兵が追い立てる。敵方の演習判定システム端末の赤いレーザーの輝点がプラム2の外板の上でいくつもきらめく。しかしプラム2はその攻撃をものともしない。三十ミリまでのあらゆる弾丸が無効の判定を食らっている。ログがずるずると伸びていく。プラム2はその場に立ち止まったまま悠々と敵に狙いをつけてバーストのように短い射撃で次々と片付けていく。敵が逃げ込んだ部屋の窓にグレネードを投げ込む。

 敵役の二個歩兵中隊はこちらの進撃ルートをいくつか想定して要所となる交差点に戦力を分散していたようで、こちらが選ばなかったポイントから余った兵士たちを細い路地伝いに移動させて抵抗しているらしかった。制圧に時間がかかるのはそのせいだ。敵の戦術は用兵が上手いとはお世辞にも言えないが、ゲリラ的といえばゲリラ的だった。

 私はプラム2の邪魔をしないように角の遮蔽に機体の左側を隠して射界に入った歩兵を炙っていたが、プラム2が撃つのをやめたので交差点の中へ入った。

 付近の敵マーカーは完全に消滅していた。役目を終えた敵役の兵士たちが適当なところに出てきて座ったり水を飲んだりしている。彼らもごく普通の米陸軍装備だが、袖や首に黒い布を巻いているのがちらほら見える。黒というのがどうやらゲリラの精神を表すカラーらしい。味方の歩兵たちは建物を降りてきて北側の角に集まる。

 その交差点から目標の広場までは二百メートルほどの距離だ。道もまっすぐなので見通せる。しかし自動車のスクラップを積み上げた厚いバリケードが車両の通行を妨げていた。

 プラム2はストロベリー2に対しその場に留まって援護するよう指示を出す。どのみちストライカーICVではバリケードを越えられない。

「マスカット3、ついてきてくれるか?」とプラム2。

 自分が突出するから背後についてくれ、ということらしい。

 了解、と私は答える。

 プラム2は脚を伸ばして腰の位置を上げ、片脚を高さ二メートルほどのバリケードの上に乗せた。そのまま重心を前にスライドさせて足の下のスクラップをばりばりと煎餅のように押し潰す。沈むところまで沈んだところで今度はその足を軸に、後ろの脚を抜いて先の地面に下ろし、また一歩進んでバリケードを突破した。あるいは戦車なら助走をつけてぶつかれば突破できないこともないだろうけど、ピジョンホーラーのやり方の方がいくらかスマートに思える。

 私は先ほど電線を飛び越えたのと同じようにジャンプしてそのバリケードを越えた。また装甲板が銅鑼のように鳴った。スマートじゃない。

 プラム2は歩行で前進を始める。歩兵に合わせていた先程よりはるかに速い。三十キロは出ている。足を踏み出す度に踵と脛の後ろについた車輪のサスペンションが揺れた。それは少し腕時計のムーブメントを思わせる動きだった。車輪は直径は小さいがかなり幅広だ。それで接地圧を受けているわけだ。でもそれにしては足裏の面積が小さすぎる感じがした。こういった硬地盤の市街地で歩くことしか考えていないからだろうけど、アスファルト舗装だったらばりばりと路面を割りながら進むことになりそうな気がする。幸いニューハウィックの道は荒野の硬い地面がそのままになっているのでスムーズに動ける。

 脚が太い割に車体も結構幅があって、ターレットリングも大きい。そこは日本の道交法を気にしているマーリファインの設計との大きな違いだろう。砲塔は全くブレない。歩行姿勢での目の高さはマーリファインの方が一メートルほど高いようだ。ピジョンホーラーの脚が短いわけではないが、マーリファインよりも脚の屈曲を深くとっている。なので私はプラム2の肩越しに前方を狙うことができる。つまり、ストライカーMGSが失われた今、プラム2は三十五ミリの火力支援を私に期待しているのだ。

 正面から対戦車ロケット(M72)の照準。

 私は機体の両腕をやや内側に向けて露出している砲塔上部を防御したが、ロケットは二発ともプラム2に吸い込まれる。一発は左脚の付け根、もう一発は砲塔正面に命中する。

 一発目は脚部の正面装甲に深い角度で進入して貫通、タンデムHEATの二段目が内部の複合装甲を抉ったが、一段目でやや確度が変わって進入角が浅くなったため非貫通。跳ね返ったメタルジェットが外部装甲の裏を食い荒らした、という判定。

 二発目は砲塔のHEAT防護柵で一段目を消費、二段目が砲塔上部装甲に浅く入って長さ一メートルにわたって表面を抉ったという判定。飛散した弾頭や装甲の破片が私の機体にも飛び散ったが大した被害はない。

 結果、プラム2は健在だった。さすがの装甲厚だが、単に装甲だけで凌いだわけでもなかった。着弾の直前、思い出してみると、プラム2はやや腰を落とすと同時に砲塔を左に振っていた。それは確かだ。両方ともできるだけ敵弾の入射角を浅くするための措置、悪あがきといってもいいくらいの行動だけど、たった一度二度の角度の違いが生死を分けることもある。生き延びるのはそれができる軍人たちだ。

 敵兵は物陰に飛び込んで再装填を始めていただろうけど、私の放った三十五ミリ榴弾数発がそれを許さない。無力化判定。

 敵はさっきの交差点に一つ大きな防衛線を引いていたようで、目標の広場からの反撃はその程度だった。

 私とプラム2が広場に一番乗りする。角のビルの間に電線が架かっていたので例のローラースケートをもう一度披露してくれたけど、スピードが乗っているとまた少し迫力が違った。潜ったあとに車輪で横滑りして立ち上がりざまにこちらを向く。見事な操縦だった。

 一つ南側にある細い路地のクリアリングをしてストロベリー2を広場に迎え入れる。

 しかし敵の配置が妙に手薄だ……。

 広場は駅のロータリーのようなところで、周囲に向かって井桁状の道路が何本も伸びていた。守りにくい城だ。

 二番手はマスカット1と2、つまり松浦と檜佐、それからプラム・ストロベリー小隊が集まってくる。各機各車、小さな損傷は負っているが健在だ。松浦機はほぼ無傷、檜佐機は地雷が掠って右の踵と大腿部の装甲が剥がれたという判定を食らった程度だった。

 小休止。息を整える。機体は問題ないか? 

 チェック。油温正常、やや高め。燃料あと半分。

 歩兵は周りの建物に上って陣地を固める。ありあわせの建材で機関銃(M240)用の銃座を積み、バルコニーに軽迫撃砲(M224)を据え付ける。

 敵役の戦力の捕捉率は予測で六十パーセント。殲滅までもう一息だが、まだ集団で攻撃を仕掛ける体力は残っているはずだ。こちらが目標エリアに入った以上、今までのような散発的な防御配置で打って出てくることはあり得ない。何か別の手を打ってくるだろう。敵の残りの戦力がどこに潜んでいるのかまるでわからないから、こちらも下手に出ていけない。膠着状態だ。

 広場にはディーゼルとガスタービンのアイドル音が静かに響いている。広場を囲む砂まみれのビル群は運命の時を待つ使途たちのように固唾を飲んで震えている。

「オレンジ・ワンより。路地に砂煙が見える」と無線。

 上空のヘリからだ。

 なんだ、ヘリもちゃんと仕事をしていたのか。そうそう、ヘリのコールサインはオレンジだった。忘れてたな。

「特定した。自動車だ。いまプロットする」オレンジ1は間もなく続報をよこした。

 仮想マップ上に四つの敵マーカーが現れる。マーカーはヘリが捉えた情報に従って絶えず移動している。

 エンジン音が聞こえた。ガソリンエンジンだ。

 通りの遠くにピックアップトラックが現れる。色は黒。荷台に対空銃座のようなものを載せている。拡大。おそらくボフォース四十ミリ機関砲。

 狙いをつけるが、こちらが撃つより早くトラックは通りを駆け抜ける。

 相手も撃ったが走りざまでは当たらない。

 敵は四台。各車各機が掴んだ情報を総合すると、ボフォース単装が二台、ベースはともにフォード・タンドラ。M40百五ミリ無反動砲単装が一台、これはシボレー・S10。そしてZSU‐23‐2二十三ミリ機関砲単装が一台。シボレー・シエラ。

 ZSU? ソ連製の機関砲だぞ。それをアメリカ軍が訓練用に持ってるのか。しかもフォードの荷台に乗せてあるのか。びっくりというか、ちょっと感動するくらいだった。演習だから使えるのだ。アメリカにはZSUに合う二十三ミリ弾がないから実戦では使いようがない。

 ともかく、ここにきて敵は機動戦を仕掛けてきたわけだ。最初のアタックで無反動砲の百五ミリHEATをまともに食らったプラム4が砲塔左側を損傷して戦闘不能判定を食らった。行動不能とは違う。右腕は生きているだろうし、とすれば砲手をやられたという判定なのだろう。MGSの主砲と同じ口径のHEATだ。さすがのピジョンホーラーでも防げない。

 さらに発射レートの高いZSUの斉射で向かいの建物にいた歩兵数人がやられた。

 ストロベリー・リードが指示を飛ばして各機各車に目標を割り振る。ストロベリー隊は広場の防衛に残る。一番身軽なマスカット隊が追撃してプラム隊と挟撃、ストロベリーの射線に引きずり出す。乗用車に装甲などない。歩兵装備の小銃、7・62ミリ、あるいは5.56ミリでも十分有効だから、とにかく手数の多いストロベリー隊に攻撃させるのがいい。

 私は南端の通りをまっすぐ出てタンドラを追う。案の定交差点にワイヤー式の地雷が仕掛けられていたのでジャンプで避け、足を振って着地をずらす。

 黒いタンドラは二つ先の角を左に折れるところだった。ボフォースを乗せたリアを滑らせながら地獄の呻りようなエンジン音を轟かせて姿を消す。

 お互いぎりぎりのところで撃てない。

「マスカット3、こちらプラム2。そっちから一つ東の通りの交差点にいる。待ち伏せだ。こっちに追い込め」プラム2が無線で言った。

 私は油圧ポンプを全速で回してタンドラの後を追い始めていたが、その指示を聞いて一つ手前の角で立ち止まった。脇道の方から機体が見えないようにビルの陰に隠れる。

 少し待ってからその脇道に顔を出す。

 私の予想した通り、タンドラは二つ先の角に右から入ってきたところだった。慌てて右手の通りへ逃げ込んでいく。左には道がなかったからだ。

 私は通りに戻って一つ東の路地に急ぐ。顔を出すのと、二つ先の路地をタンドラが東へ抜けていくのがほぼ同時だった。

「敵は来たか、プラム2」私は訊いた。

「いや、まだだ」プラム2が答える。やはり女の声だ。

 ということで私はそこで待つことにした。たぶん敵は罠に気づいて止まったのだ。

 仮想マップを確認。マスカット隊の他のマーリファインも各々テクニカルを追っている。

 私はマップ上にタンドラが止まっている道を示してプラム2に送信した。敵の位置がわかっていて出口を両方見ているのだから取り逃すはずがない。

 プラム2の表示が地図上で動いて、しばらく待っていると空砲の音に次いで「OK、仕留めた」という連絡が入った。

 静かな撃破だ。

 演習では各火器が空包を詰めているのと一部の大口径砲に発煙装置が取り付けてあるだけで、着弾の砂煙もなければ撃破された車両が炎上することもない。

 敵のマーカーが消える。それが撃破の印。判定が全てだ。

 その判定とほぼ同時に視界の左側に何かが走った。

 他のトラックだ。さっき私が来た南向きの通りをまっすぐ走り抜けていった。

 被弾のログが増えるが、幸い致命傷ではない。

 ZSUか。とすればシエラだ。

 ついでに味方のログも見たけど、広場のストロベリー隊にいくらか損害が出ている。一つ西の通りに出ていたプラム3も軽傷。いまのシエラが殴り込みをかけたのか。

 二十三ミリではピジョンホーラーの装甲は破れないが、センサーのレンズやサスペンションは別だ。致命傷は与えられなくても機能を削ぐことはできる。

 追いかけていくとシエラは通りの一つ前の路地ですでにこちらに砲口を向けて待っていた。

 私は左腕で砲塔を守りながら一歩下がってジャンプ、路地の右のビルの角に足をかけてシエラの鼻先に着地点を定める。踏み潰すわけじゃない。マーリファインの両足の間にシエラの広いボンネットがほぼ収まる。

 シエラは衝突回避のために急ブレーキ。

 ZSUは仰角不足でマーリファインを捉えられない。さすがの対空砲でも九十度以上は考慮していないのだ。百八十度旋回にも時間がかかる。

 すでにかなり負荷が蓄積していたのだろうけど、着地の衝撃で昨日取り付けたレールが折れて装甲板が何枚か脱落した。マンホールのようにシエラの周りに転がり、あるいは地面に突き刺さる。

 私はかなり血の気の引く思いをしたが、幸いシエラにも敵役の兵士にも直撃はなかった。


 結局広場に到着してから十分程度で決着がついた。敵役にはもはや反撃する戦力が残っていなかった。

 各車各機広場でエンジンを止めてデブリーフィングに移る。

 敵役は約二百人。マーキング率の内訳はプラム隊が六十パーセント。ストロベリー隊が十パーセント。マスカット隊が二十五パーセント。残りが偵察ヘリだった。

 やはりピジョンホーラーの対人識別能力の高さが窺える。

 装備損傷率の平均はプラム隊が十パーセント余り、マスカット隊が三十パーセント弱だった。私の装甲板落下は演習システムでは判定されないから、それ以外の損害をまとめた結果ということになる。やはりピジョンホーラーよりマーリファインの方が脆弱だ。むろん中身の人間が市街戦のためにきちんと訓練されているか、それともされていないか、という点は差し引く必要があるだろうけどさ。

 ストロベリー・リードことアリンガム中佐曰く、広場集結以降の戦術は結果的に早期の決着をもたらしたが、陣形の緩みを考慮すると危険性も高いと言わざるを得ない。捨て身を良しとしないアメリカらしい評価だ。

 それから周波数を切り替えて小隊内でも軽く話し合ったけど、マーリファインによる市街戦については、装甲は大事だけど重い、とか、三十五ミリが重くて取り回しが悪い、とか、架線を越えるのが面倒だ、といった意見が出た。他の二人も私と同じような感想を抱いたようだった。ピジョンホーラーについては、案外動きが機敏だ、というのと、対人センサーがすごい、というのが満場一致の総意だった。

 小隊の牽引車が広場に到着する前に機体の外に出て点検を始める。各種センサーのガラスを拭いながら傷が入っていないか確かめ、首や肩の関節に変形やオイル漏れがないか確認する。砲手の担当は砲塔から上だけど、今日は足回りの点検もやっておく。脱落した装甲板が路地に置いたままになっているから、漆原と栃木にはあとで回収を手伝ってもらわなければならない。

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