雪の日のパンケーキ
私は毎日、娘のチャンネルを観る。
亡くした妻の忘れ形見の娘までも亡くしてしまったのだが。
外では雪が降っている。
今日が特別な日だと知っているかのように、空が
オンラインでは、友人が娘のふりをして配信している。それを観るのが、日課だ。
私が引きこもるようになって、どれくらい経っただろう。
――娘を亡くして、彼に配信を続けるよう頼んでから。
自分でも配信しようと考えたが、亡くした妻と娘を
私の記憶の中の妻は、本当になんでも美味しそうに食べる女性で。
私の記憶の中の娘も、好き嫌いこそあれ、食べっぷりが気持ちのいい子で。
私の記憶の中の私は、妻や娘の手料理を、不器用に食べては怒られていた、気がする。
私の記憶の中の彼は、やはりなんでも美味しそうに食べるのだ。
そして、
今日も新発売のスイーツの紹介をしている。
スイーツか。
長らくそんなモノを食べていない。
娘を亡くしてから、食欲などなくなってしまった。
いろいろなひとが心配して食べ物を持ってくるが、ほとんどは腐らせている。
だが、今日くらいは……
何か娘のお気に入りのモノを食べて、偲びたいと思ったのだ。
そこで、彼のチャットルームに文字を打ち込む。
「お父さんだけど、今日は雪だから、パンケーキを食べに行かないか?」
YouTuberになれなくて - God bless you - 後日談 天照てんてる @aficion
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