若くもないウェルテルの悩み

その後の私

――私、そう、私は、私だ。聖美ではなく、私だ。ああ、またこんがらがってきた。


 最近は眠っていても脳が覚醒状態でずっと配信しているような状態になっている。あるときは聖美として、世界へ。あるときは聖美の姉として、聖美へ。あるときは、聖美の父の友人として――どこかへ。


 私の言葉など、どこにも届きやしないのだ。


 そもそも私は、聖美として喋るとき以外、声を出すのも「フクロイリマセン」「アタタメテクダサイ」程度で生活している。Amazonが何でも届けてくれる現代において、競合他社のサービスを試そうとも思わないし、せいぜいはごくまれに新商品をチェックしにセブンイレブンに行くときだけ。


 新商品のチェックが欠かせないのは、聖美としての配信を続け、友人の心が砕けないようにするためだ。に私は存在している、と言っても過言ではない。


 私は誰に向けてこの手紙を書いているのだろうか。


 誰か、私の言葉を受け止めてくれる人間が、こんな冷たい世の中にもまだ存在したならば、どうか一緒にいてほしい。会う必要などない、連絡先の交換も必要ない、ただ、聖美のチャンネルに、「初見」と言いながら入ってきてくれれば、それだけで構わない。

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