夏は終わらない

「琥珀」

俺は愛しい少女の名前を呼ぶ。

あの日出逢った彼女は綺麗だった。勿論今でも彼女は綺麗だ。

俺は彼女を愛してる。それだけだ。

東山は琥珀には告白しなかった。理由は分からない。

「伊集院君、どうしたんですか?」

琥珀は俺の顔を見つめながら尋ねた。

彼女にもっと触れたい。

俺は琥珀の長い髪にそっと触れる。

彼女は俺に優しく笑い掛けながら言う。

「アキラ君と海に来れるなんて思わなかったです」

「うん。俺は琥珀と来たかった」

俺の言葉に彼女は笑う。

週末に海へ来た理由は琥珀とあの日の余韻に浸っていたいからだ。

「アキラ君、私を此処に連れてきてくれてありがとう。愛してます」

彼女は顔を赤くしながら俺に言った。

可愛いな。こんな笑顔を向けられたら誰だって彼女に惚れるだろう。

しかし、彼女はすでに俺の事が好きだ。

「せっかく海に来たから歩くか?」

俺は靴を脱いで裸足になる。

「うん。暑いからね」

琥珀も靴を脱いで裸足になった。

さんさんと照らす太陽の下で俺達は砂浜を裸足で歩く。

打ち寄せる波を見て琥珀が遠い目をする。

「夏が終わる前にアキラ君とまたデートしたいです」

「分かった。俺も琥珀と行きたい」

「ほんとですか?嬉しいです」

俺と彼女はまた海に来るだろう。ずっとこの景色を彼女と眺めていたい。

ずっとこれからも。

夏が終わってもまた二人で海に行くんだ。

彼女と一緒に生きていくと俺は決めた。

凪いだ海が動き出すように俺達も一歩へと前を踏み出す。

琥珀は俺の手を握りながら微笑んだ。

「アキラ君、行きましょう」

彼女の言葉に俺は頷く。

「うん。琥珀と一緒がいい」

俺はあの日から琥珀に恋をしていた。

その気持ちは今でも変わらない。




















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夏のアメジスト PREラッシュ(活動休止中) @adana21

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