第4話

 トウゴくんのまわりにはいつも人だかりが出来るようになってしまった。


 私は席替えをしたらもうトウゴくんの隣りの席ではなかったし、彼の近くの席でもなかった。


 トウゴくんは漫画の連載が本格的に始まって部活にはほとんど顔を出せなくなった。

 トウゴくんは文研に来ない。

 私はトウゴくんと話せない日が続いた。


「トウゴの奴、ほんとすげえよな」

「まじすげえよな」

「サインもらっとかなくっちゃ」

「アイツの漫画は面白いよな」

「私もトウゴくんの漫画にでたいな」


 文研は大いに盛り上がっていた。



 私だけがみんなの会話に加わらなかった。

 一人窓際の席でシャープペンシルを握りながら外のなんてことない校庭を眺めていた。


(よく言うよ。みんな)

 そんなつもりもなかったかもしれないけど、君たちの言葉はトウゴくんの作品を潰そうとしてたんだよ。


 私はみんなは態度を変えすぎじゃないかなあとあきれていた。

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