第3話
トウゴくんはなかば私に強引に説得されて勢いのままに、有名少女マンガ雑誌の新人賞へ応募しました。
私は郵便局まで一緒に来てほしいとトウゴくんに頼まれて部活帰りについて来ました。
蝉しぐれがあたりに響き渡っていた。
暑い暑い夏休みのあの日。
よく覚えています。
「楽しみだね」
「うん。ありがとう。捨てるより断然いいや」
トウゴくんの顔は晴れやかでした。
そうして私とトウゴくんは、郵便局の帰りにドーナツ屋さんに寄りました。
ドーナツ屋さんにはイートインスペースがあります。
トウゴくんと私はドーナツをあれこれどんな味かなと話しながら選びます。
二人で新作を食べてみようと二つずつ買いました。
トウゴくんは「今日のお礼」と奢ってくれました。
「半分払うよ」
「いいよ。これぐらい」
大きな窓のそばの席にトウゴくんと私は二人で座りました。
私は目の前のトウゴくんの顔はあまり見られずに、ジンジャーエールのシュワシュワシュワっと弾ける泡ばかり見ていました。
(これってデートになるのかな?)
どきどきした時間はあっという間に過ぎました。
あれから数カ月が経ちました。
秋も深くなった頃。
トウゴくんは有名少女マンガ雑誌の新人賞を獲りました。
彼がはさみで切ろうとしたあの漫画はプロの人たちに編集者の人たちにちゃんと実力があると認められたのでした。
素晴らしいと絶賛され類まれなる逸材と評されて、トウゴくんはまたたく間に天才中学生漫画家になったのでした。
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