ダンジョンの最奥にいるラスボスを倒した最強パーティー。だが、真の冒険はそこからスタートした。
邪悪な魔術師の死とともに崩壊を始めるダンジョン。通路が組み変わり、強さを増した敵が襲い掛かる、しかも、パーティーは分断されていた。
脱出を図るパーティーメンバーたちにつぎつぎと襲い掛かる苦難、そして危機。まさに本作は、シナリオで読ませる冒険譚である。
行きは最強チームだったパーティーが、帰りは分断され、それぞれの思惑や利害、立場が絡み、それらが目前の敵以上に各メンバーたちの脱出を阻む。張り巡らされる罠と苦難。いつ裏切るとも知れない仲間。信じていいのか? 疑ってかかるべきなのか? 歯車を狂わされたメンバーたちが絶望的な危機へと叩き込まれる。
本作は、文章は読みやすく、解説も丁寧。しっかり設定された世界観のなかで、つぎつぎと襲い来る危機また危機のシナリオが読者を釘付けにする。
そして、その物語に走る一筋の瑕疵のごとき謎。これはいったい、どういうことなのか?
階層をひとつあがるごとに、ひとつ解ける謎。最後の門をくぐるとき、果たしてこのダンジョンの真の姿は現れるのか?
出口に近づけば近づくほど難易度があがるこのダンジョン。あなたなら一体どうやって脱出する?
ラスボスとの戦いというクライマックスから物語は始まる。
邪悪な魔術師の思惑がストーリーラインの根底に在るものの、崩壊していく地下迷宮からの脱出の中で明らかにされていくものは登場人物たちのしがらみ、その真実。とある一面で見ると『うまくいってはいけない』が、世界的に見れば『うまくいかねば滅ぶだけ』という、大きな着地点と小さな着地点を読みながら追うことになる。
序盤こそ脱出劇であろうと身構えるが、その困難の中でそれぞれのキャラの本音が現われていくのを楽しむお話です。ポロっと出ちゃうんだ、サクっと動いちゃうんだ、ヒョイと聞き流しちゃうんだ、こういうのって、ね?
懐かしの迷宮ものシリーズ漫画を思い出す大きい世界と閉じられた世界のお話、堪能いたしました。
祈る気持ちを忘れずに。