長かったような、短かったような1日
ようやく納得してくれた翼を連れて、私はリビングに戻った。
「今日のカレー、多めに作っておいたから好きなだけおかわりしてね。余ったら明日カレーうどんにするから」
「やったー! いただきます!」
ちゃんと挨拶をし、スプーンでカレーをすくって口に入れる。
「うーん、美味しいー!」
「うまっ! 辛さもちょうどいいよ!」
「よかった! そういえば紡ちゃんは食事とかはどうするの?」
「確かに……バーチャルだから食事はとらないんだっけ?」
『はい、食事はできないので味は分からないんです。でも匂いは判別できるんですよ。このカレー、いい香りしますね!』
私がカレーを頬張る様子を、ニコニコしながら眺める紡。一緒に食事ができないの、何だか悲しいな……
「紡ちゃん、後で私オリジナルの曲作りたいから、お風呂から出たら相談乗ってほしいな」
『もちろんです!』
「ありがとう。ごちそうさまでした! 美味しかったよー」
「お皿下げて水張っておいてね。お風呂わいてるから入っていいよー」
「はーい!」
「あ、姉ちゃんずるい!」
「しょうがないでしょ、私の方が先に食べ終わったから。じゃあ紡ちゃんは私の部屋で待ってて」
お皿を下げて水を張り、パジャマと下着、タオルを持って脱衣所へ。脱いだ服を洗濯カゴに入れて眼鏡を外し、湯船に浸かって大きく息を吐いた。
「ふぅー……今日は何だか疲れたなぁ」
それもそのはず。電子教科書を壊して修理してもらい、紡をお迎えし、最初は隠そうとしたけどお母さんに紡を家にいさせていいか交渉して、弟を呼びにいったら紡を幽霊だと勘違いされて……と、いつにも増してドタバタな1日だったからだ。
「あ、紡ちゃん待たせてるから早く出なきゃ」
体と髪の毛を洗い、タオルで体を拭くと軽めに化粧水をつけ、脱衣所を出て自分の部屋に直行した。
「ごめんごめん、お待たせ!」
『大丈夫ですよ! それじゃあ、始めましょうか』
私はパソコンを立ち上げ、ソフトを開いた。先程と同様、カーソルが画面の上でチカチカと点滅している。
「うーん、どうしようか……」
少し悩んでいると、ふと、あるものが目に入った。国語の授業中に作った詩をまとめたメモ帳だった。
「あ、これ使えるかも……!」
試しに、ジャンルを≪ポップス≫に設定し、詩の中から適当に一つ選んで、入力してみた。
そして、カーソルを≪再生≫まで動かし、ボタンをクリックした。紡の元までデータ化された音楽が送信され、清らかな声で歌いだした。
『♪いつだって君のこと 私は応援してるから
だからあきらめないで 最後にはいいことあるよ』
私は思わず、彼女の歌声に聞きほれていた。初めて自分で、曲ができたんだ……!
「や、やった……!」
『凄いですよ未来さん! はじめて自力で曲ができましたね!』
「いやいや、半分は紡ちゃんに助けてもらったわけだし……」
そんなことを言いながらふと時計を見ると、寝ようとしている時間を少し過ぎてしまっていた。
「ありゃ、いけない! もうそろそろ寝なきゃ……」
『そうですか……。そしたら、また明日よろしくお願いしますね』
「うん! それじゃ、おやすみ」
『おやすみなさい!』
私はベッドに入り、紡も投影機を充電台につないで、部屋の電気を消した。あまりにもたくさんの出来事があったからか、あっという間に寝てしまった。
君と私で、未来を紡ぐ 竜巻Girl @tatumaki1208
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。君と私で、未来を紡ぐの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます