新しい「家族」
「あらまあ、かわいい子じゃない」
「ふへっ!?」
予想外の返事に、私は思わず拍子抜けした。正直絶対怒られると思っていたから、驚きはなおさら大きかった。
「確かその子、私の幼馴染が開発にかかわっているって話してたっけ。まさか本当にこうやって見られる日が来るなんてね……」
「お、お母さん……」
完全に見とれちゃってるよこれ。
『え、えと、これはどういう状況なのでしょうか……』
「お母さん、話脱線してるよ。紡ちゃん困っちゃってるし」
「あらあら、ごめんなさい。この子を、未来が一目ぼれしてお迎えしたんでしょう?」
「まあ、そうだけど」
「私は未来の買ったものには口出しはしないし、家にいさせてあげていいわ。ただし、一つ約束して。ちゃんと曲を作って、大事にしてあげなさいね」
「え、いいの!? よかったぁぁぁ!」
『未来さん、よかったです! これで私は追い出されずに済むんですね』
「そうだよ! それだけじゃない、紡ちゃんは私たちの家族の一員だよ!」
『家族……? それは一体何なのでしょうか?』
きょとんとする紡。どうやら家族というものをわかっていないようだ。
「うーん……説明しようとすると逆に難しいなぁ……血縁関係がある人のことを家族って言ったりするけど、今はそんな形でもないパターンが多いし……」
『未来さんの言いたいことは大体わかりました。つまり、ざっくり言ってしまえば大事な人の種類の一つの形、ということですね』
やっぱり、理解が早い。
「まあ、そんなもんかな……説明下手でごめんね」
そうやって少し話をしていると、時計が午後6時を告げた。
「あらいけない! そろそろ夕ご飯にしなきゃ。未来、ちょっと翼呼んできて!」
「わ、わかった!」
私はリビングを出て弟の翼がゲームをしている(と思われる)部屋に向かった。
ノックをし、部屋の中に入る。
「翼? もうご飯にするってー」
「姉ちゃん! 今行く……って、うわぁぁぁ!?!?」
「どうした?」
「姉ちゃん……後ろ……ユーレイいる……!!」
どうやらついてきた紡を一目見て、幽霊だと勘違いしてしまったらしい。
「ありゃりゃ……紡ちゃん、幽霊だと勘違いされちゃったね……」
『初めてホログラムで投影されたバーチャルシンガーを見た人の中にいるんですよ、こうやって勘違いしちゃう人。夜中暗い部屋で私を見たら、それこそホラーですね』
「何それ、リアルに想像しちゃったじゃない!」
『うふふ、ごめんなさいね。とにかく今は、弟さんの誤解を解いてあげた方がいいかと思いますよ』
「ひえぇ……姉ちゃんユーレイと話してるよ……!!」
「違うから! 幽霊じゃなくて、バーチャルシンガーだから。とりあえず落ち着いて!」
この後翼を落ち着かせるのに5分くらいかかった。全く、ホログラム投影機の本体を見せるまで
理解してくれないなんて、どんだけ頭硬いの。
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