エピローグ

村長に事の顛末を報告をした時はすでに夜。


私達は、その後すぐに首都ハ−ヴェスへ発つ予定だった。


街道沿いに設置されている、簡素な旅人用の宿泊小屋に泊まれば良い。

早くこの村は離れた方がいい。


フローラは村を襲撃していた蛮族を倒すため、異貌して魔法を使うところを村人に見られていたからだ。


稲妻を呼び、LTLTにファナティシズムをかけて、私を庇いながら率先して前衛で戦った。


彼女の額のねじれた一本角と、人間離れした能力に村人は怯えきってしまっていた。


戦いが終わった後のフローラの顔を思い出すと、今でも胸が痛い。


・・・にも関わらず、村長に報告を終えた途端に、私たちは村で唯一の酒場兼宿屋に一泊するよう引き止められた。


私たちは村で一泊させてもらい、翌朝ハーヴェスへ発った。


「ゆっくりできて、よかったですね」


フローラの髪が朝日を反射している。光に溶けてしまいそうな華奢で綺麗な髪。


「村長が、あの後村人を説得したのだろうな」


LTLTが大事そうに両手で花瓶の入った袋を抱えて、歩いている。


淡々としているが、LTLTは怯える村人や村長に、フローラが蛮族ではないことをずっと熱心に説明していた。


私やアントニオは、理解は諦めてすぐに蛮族討伐に行こうとしていたのに。


一人一人、他人との接しかた、アプローチは違う。


昨日の事を振り返ると、みんな仲間のことを考えていたのかも。


それが私と違うアプローチだったのが、理解できなかったんだろう。


(子供だったな、私)


熟練の冒険者たちは当然私を守ろうとするし、思えば簡単な仕事ばかりだ。


私は特に誰のことも考えず、目の前のことをただこなしていれば、良いだけだった。


「薬草まで分けて頂いちゃいましたよ。ちょっと本格的に勉強してみようかな」


アントニオの言葉に頷く。


そして、ハッとなる。


アントニオは、薬草が使えるようになって、今度は誰と冒険をするのだろう。


フローラや、LTLTもそうだ。


また一緒に、仕事を受けられないだろうか。この4人で。今度はもっとうまくいくのではないか。


「ね、ねえねえ。あのさ」


何故か、早く言わなきゃいけない気がして、慌ててしまった。


3人が、キョトンとしている。


「その、これから戻ったら、みんなどうするの?」


「どうするって・・・、あ、花瓶の売り手で良い伝手があるんですか?高額で買い取ってくれそうな?」


「そうじゃなくて」


アントニオめ。


「あのさ、また戻ってからも私たち、一緒に仕事しない?」


3人の顔を見る、キョトンとしたままだ。


(あれ?)


「私で良ければ、是非」と、フローラ。

「勿論そのつもりだったぞ?」と、LTLT。

「今度は、もっと安全で楽に稼げる仕事が良いですねえ」と、アントニオ。


「はは」私は少し笑って、早足で首都へ向かいたい気持ちを我慢するのに、必死だった。


終わり

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ガーディアンは花が好き ハリィ @cuttingdorothy

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