後編

「早瀬さん、大丈夫ですか?」


 私は板東さんの言葉に我を取り戻し、深呼吸をして板東さんの話を聞いた。


「はい、大丈夫です。それで、どういう状態で花丸さんは殺されたのですか?できるだけ詳しくお願いします。」

「はい、花丸は、公園の遊具のトンネルにうずくまった状態で死んでいました。胸から血が流れていたので殺されたとそこで遊んでいた子供たちが発見しました。」


 板東さんの話を聞いて、私は抱いていた違和感の正体に気づいた。

 ああそうか。そういうことだったのか。ということはまだアレがあるはずだ。


「板東さん、私も現場に行ってもよろしいでしょうか?」

「えっ、でも早瀬さんはめったに現場に行くことなんてないのに…」

「気が変わりました。私も行って確認しておきたいことがあるのです。お願いします。」


 私の申し出に少し考えた板東さんはため息をつくと承諾の返事をする。


「はぁ…分かりましたよ。でも、現場を荒らさないでくださいね。」

「了解です、それと現場にいた子供たちにも少し話をしたいのですが、子供たちは今どこに?」

「発見した子供たちは警察の方で親の帰りを待っていますが…少し遅らせますか?」

「お願いします。すぐにそちらに伺いますので…。」


 私はそれだけ板東さんに告げると車いすを器用に使い、事件現場の公園へと急いだ。

 私が、公園へ来た時にはすでにたくさんの警察の方々がいた。

『keepout(関係者以外立ち入り禁止)』と書かれたテープを平然と超えて板東刑事を探した。

 でも、こんなに多いと板東刑事を見つける前に私が警察に何か聞かれそうだなと思った。


「すみません、ここからは関係者以外立ち入り禁止ですよ。」


 案の定、聞かれた。

 私は、車いすを翻して目の前の警察官を見た。


「いえ、私は関係者なのでここを通らせてもらいました。」


 私の素直な回答に戸惑ったのか警察官は目をそらしながら少し戸惑って言う。


「ええっと、関係者という証明はありますか?」


 私は、この言葉を待っていたかのようにニヤッと笑って言う。


「板東刑事はいますか?彼に『早瀬胡桃が到着しました。』と言ってください。」


 警察官は私の言葉を素直に受け取ってくれたらしく坂東刑事と確認を取ることができ、ОKをもらった。


「分かりました。では、あなたをこれから関係者と認めます。」

「はい、お願いします。」


 私は、こうして関係者と認められた。

 物わかりの言い警察官で助かったとその時は思った。


「さて…事件の現場よりまずは子供たちに話を聞きにいかないといけないな。」


 私は子供たちを探すために公園を一周してみた。勿論、板東さんを探しながら…。


「うーん、特に目立ったものはないな、もっと何か特徴的なものがあると思ったのだけれど。というかアレが未だに見当たらないということはすでに持ちさらされた可能性もあるなぁ。」


 そんなことを言いながら私は板東さんを探していた時にとある遊具で私の足は止まった。


「あれ…おかしい、この遊具はこの公園では使用禁止になっているはずなのに…どうして足跡がついている?それに、ほこりがここだけなくなっている。ということは誰かが使った後だということになる。だが、だれが使ったのだ?」


 そこで私は意識を推理の頭脳に切り替えた。


 その遊具は前に遊んでいた子供が転落したため、今はテープが張ってあったのを数日前に自分がここにきて確認をしている。

 しかし、本来ついているはずのほこりが一切ついてない、ということはここ数日の間にここに誰かが来たということだろう…では、誰がここに来たのだろう…そこで私の意識は現実に戻された。


「あ、こんなところにいた。早瀬さん、事件現場はそっちじゃなくてこっちですよ。」


 私は、その声に振り向き声の主を探した。


「ここですよ、早瀬さん。私です、板東ですよ。」

「ああ、板東さん。こんなところにいたのですか、それで子供たちは?」


 私は、板東さんに事件の内容を見ていた子供たちから話を聞こうとしていた。


「子供たちなら全員、こちらにいますよ、ついてきてください。」


 そういって板東さんは何かを納得したように私を見た。


「久しぶりに…早瀬さんの車いすを押してもよろしいでしょうか?」


 私は、高校生の頃にはもう車いす生活を送っていたため板東さんに押してもらっていたのだが、さすがに大人になってその機会は減っていった。

 それを思い出したのか板東さんは私の後ろに周り車いすを押してくれた。


「あはは、こうしているとなんだか高校生の時を思い出しますね。」


 私は押されている中、そんなことを板東さんに言った。


「そうですね…。あ、あそこですよ。」


 そういった板東さんは指をさし、子供たちの方へと案内してくれた。


「初めまして、私は探偵の早瀬胡桃といいます。ここで起きた出来事を調査しています。早速で悪いのだけれどここで起きた出来事の事をよく知っている人はいますか?」


 私はそういって子供たちに話しかけた。

 子供たちは誰も手を上げようとせずに押し合っている。

 さて、どうしたものかと思っていると一人の男の子が手を上げていった。


「早瀬さん、でいいですか?僕が一番初めにここにいた男の人を見つけた人です。男の人は僕に水を求めていました。とても低い声で『み、水を…』と言っていました。そして僕が水道で水を汲んできて男の人の方へと行きました。ですが、男の人は僕が水を運んでくる前に息絶えていました。この光景が見た男の人の最期です。」


 その男の子はとてもはっきりした声で私に話してくれた。

 その話を聞いた後、私は自分の推理と合わせた。

 そして一つの結論と私は導いた。


「そうか…そういうことだったのか…なら、この事件は…とても悲しい嘘が原因でそうなってしまったのか…。ふふ、なるほどね。」


 私の独り言に不思議そうに眺めていた板東さんは私の顔を見て何かを感じ取った。


「早瀬さん、もしかして…事件の犯人が分かったのですか?」


 板東さんの言葉にびっくりしたのはさっきの男の子だ。


「早瀬さん、まさか本当に僕の言葉で事件を真相へとたどり着いたのですか?すごい…なんでそんなことをサラッとやり遂げてしまうのか。僕にはわからないですよ。」


 男の子の言葉に私は車いすを翻した。

 そして、私は自信にあふれたような言葉で言った。


「ああ、これで全部分かった。やはりこの事件、すべての真相のカギを握っている人物を私は見ていたのだ。その人物を連れてきてくれませんか?板東刑事。」


 私は板東刑事に耳打ちをしてその人物の名を告げた。

 その人物の名を聞いたときに板東さんはありえないような表情をしていた。


「まさか…そんなことがあるなんて、分かりました。すぐにその人物を連れてきます。」


 板東刑事はすぐに自分の車に乗り込んで発進させた。

 その光景を見た後に私は男の子に向かって言った。


「君はよくこの出来事を見ていたね。正直、君の観察力には驚いたよ。よかったら今度私の事務所に遊びに来るといい。君の才能を開花させることができるかもしれない。」


 私は、この少年の観察力に賭けた。

 この人材はこれからも必要になってくるだろうと。

 そして、男の子は凛とした格好でこう言った。


「分かりました。今回のあなたの事件の活躍を見て僕も勉強をしたいと思いました。なので、これからちょくちょく遊びに行きますのでよろしくお願いします。」


 少年の言葉に私は少しうれしくなった。

 これから飽きない事務所になるだろう…とね。



 ここまでの話を聞いていた僕はふと、疑問を感じた。


「師匠、その男の子はその後、どうなったのですか?ここへは来たのですか?」


 僕の質問に少し笑いながら師匠は答えた。


「ふふ、その少年は今でも私の前に現れているよ。中学生になってあんまり遊びには来てくれなくなったけど来てくれたら私のお世話をしてもらっている、とてもいい子だよ。」

「そういうこともあるのですか…もしかして、その子は僕も知っている人ですか?」


 僕の質問に師匠はなぜか、少し考え込んではっきりした声でこう言った。


「ああ、勿論、君も知っているさ、それに私以上に君の方が知っているのではないのかな?」


 師匠の言葉の意味は分からなかった。

 僕は話をもとに戻そうと師匠に向かっておかわりを要求した珈琲を渡して、言った。


「師匠、とりあえずその少年の話は置いといて事件の方はどうなったのですか?」

「ふむ、そうだな…では、続きを話そうか。あちち…。」


 私が板東刑事に事件の真犯人を伝えてから二日後、警視庁に勤めている板東刑事から連絡があった。


「真犯人を発見しました。早瀬さんの言っていることがすべて正しければ奴が犯人です。」

「分かりました、ではその人を確保次第、私にモニターを映してください。後はこちらの方で何とかしますから…。」


 私はそれだけ板東刑事に告げると準備を始めた。


「長かったな…この事件もいよいよ終盤だ。そうだな、題名は『三月ウサギ殺人事件』と言っておくか…。別に三月の出来事ではないが、まあいいだろう。」


 私はそんなことを言いながら車いすを押して、ファイルを取り出し、モニターにあるソファーに座った。 

 その時、板東刑事からの着信があった。


「早瀬さん、お待たせしました。犯人を捕まえましたのでモニターにつなぎます。」

「はい、お願いします。」


 板東刑事にそう伝えた私は、映ったモニターに向かってこう言った。


「さて…事件を解決していこうか…。」


 その時にモニター越しに映った犯人の驚いた顔を私は一生忘れることはないだろう。


「な、どうしてあなたが…そんな…。」


 犯人は驚きを隠せなかった。私はそれを見てこう言った。


「ふふ、あれで、うまく私をまいたと思ったか?残念ながら私は執着心の強い方なのだよ。さて…それではまずは二つ目の事件から解いていこう。1番最初の事件から私が車いすだということは君もよく知っているはずだった。だから私が現場に来ることはないだろうと思って油断をしていたようだね。君が被害者を殺そうとしていた時に被害者はどこにいたと思う?この回答権は坂東刑事、あなたに渡そう。」

「はい、あのほこりのあるあの場所ですよね。」

「そう…普段は使用禁止になっているあのジャングルジムだよ。あのほこりの付き加減に私は疑問を持っていた。そして、君は近くにいた目撃者とは違う子供を脅し、大方『この子を傷つけたくなかったら降りて来い。』とでも言ったのだろう。君の子供を脅して…ね。そして、あとあとまずくなった君は口封じのために被害者を殺した。つまり一番、最初の事件の犯人を被害者は目撃していたために殺されてしまった。ということになる。では、それをなぜ早く警察に言わなかったのか…。ふむ、ここに私も見落としていたポイントがある。つまり、あなたは言えなかったんだよ。なぁ…そうじゃないのか?花丸さん、いいや正確には『第二の被害者花丸』の弟さんよ。」


 一連の犯人、及び花丸さんの弟は私に名前を言われて目を驚愕させた。


「早瀬さん、どうして私だと疑ったのですか?確かにそれだと辻褄は合う、しかしそれは想像の世界の話だ。証拠がないと私を犯人にするのは不可能ですよ。」


 花丸さんの言葉に共感したのは意外にも板東刑事だ。


「確かに、物的証拠がないと犯人と断定するには気が早い気がしますが…」


 板東刑事の言葉に私は少し呆れかえった。


「やれやれ、それでも君は警視庁の刑事か、それに物的証拠ならここにあるじゃないか」

「えっ?」


 私の言葉に花丸さんと板東刑事は驚いた。


「早瀬さん、どういうことですか?」

「そうだ!私が犯人だという証拠が何処にあるというのか。名誉棄損で訴えられることもできるぞ。」


 私はファイルから坂東刑事を得て入手した一番初めの被害者の遺言を見せた。


「こいつだ、すべてはこいつが物語っている。この悲しい事件のすべてが。」


 私は遺言の中の一文を抜きよるようにして言った。


「ここをよく見てほしい『最後に友人の花丸に会ってからこの人生を終わらせます。』と書いてある。しかし、この被害者は勘違いをした。それは、花丸という人物が二人いるということ。どちらかにあうということを記述していなかったから招いた悲劇でもある。おそらく、ここに書いていることはほとんど、君が書いたことだろう。さすがに被害者の字をまねるのはよほどの訓練が必要だからね。だから、君はワープロを利用して、文書を作った。そこに私は不自然を抱いた。どうして、この人は手書きではないのだろうか。普通、遺書と書かれたものにはワープロではなく、手書きによって、作られる。君は、友人を脅し、そして、殺すと不自然だとバレないように手の込んだことをやってのけた。まずは、この殺人をどうにか自殺に認めないといけない。そのために、君が行ったことは、大きくわけて三つ。」


 私は指を三にして、一つ一つ、折り曲げながら言う。


「まずは一つ目、これは誰でもできる。遺体を首にかけることだ。それも、死因を縊死にする必要があるからね。一般的には首吊り死ともいわれているが、基本的な成り立ちとしては、頸部を斜めに圧迫すると、頸部大動脈(頸動脈と椎骨動脈)、気管などが強く圧迫され、窒息状態となる。これらにより、血液が脳に供給されなくなり、中枢の機能が停止し絶命に至る。と医学ですでに出ている。つまり、首をカクリと落とし、宙ぶらりんにすることで死ぬ。ということだ。二つ目は、ドアの隙間から一酸化炭素を流し込むこと。三つ目は、鍵が被害者の手の中にあること。たったそれだけだよ。」

「それで、あなたは何が言いたいのですか!私を犯人にすることで、何のメリットがあるというのです!」


 モニターから、花丸さんの怒涛が響く。

 私は一つ、息を入れなおすと珈琲を飲み、はっきりという。


「ここまで回りくどいことをやりながら犯人にとってのメリットは何なのか。これは簡単、遺産をすべて奪い、裕福に暮らすためだろう。だが、犯人は知らなかったのだろうな。自殺では金は降りないということを。殺人にしておけば、降りたかもしれない金を。ここで、犯人はターゲットを変えた。一番手っ取り早く、そして、犯人に直結して、なおかつ誰も不自然になることはない。だから、二つ目の事件が起きた。朝方に呼び出し、殺すと、トンネルの中へ入れた。もちろん、指紋がでて、簡単に解決されてしまっては困る。だから、他殺ということで、金をもらう計画だった。そういうことじゃないのか?」

「く…だが、だが、どうやって一つ目の事件が被害者の手の中にあることが必要なのですか。他殺なら他殺でよかったのではないか。」

「自分が、だろ?」


 私は淡々と告げる。

 事の顛末を。


「犯人は、ここまで計画通りだったが、一つ、ミスを犯した。それは、遺体のそばに椅子を用意してしまったことだ。自分が、遺体を首にかけるときに使用した椅子。それを片付けるのを忘れてしまった。そこで不自然な自殺が出来上がってしまった。一人目は確か、妻子持ちだったそうだね。おそらく、指輪に糸か何かを通して、鍵をかけた後、通したのだろう。だが、そのあとに、火を着火して一酸化炭素を出そうとしたが、あいにく、火がなかった。これでは一酸化炭素中毒は作れない。考えた犯人は部屋の中に酸素充満しているのを確認、そこから、部屋を密閉にして、酸素だけを流し込む。酸素は空気の中に含まれているものだが、単体では毒にもなる。これで、トリックが完成したと思った犯人は、急いで、逃げた。これで、ある程度トリックは完成。一般的には自殺にしか見えないだろうけどね。私の推理はここまで。何か言いたいことでも?」


 私の言葉に花丸さんは特別何も言わなかった。

 きっと、すべて事実だろう。


「…私はね。兄が許せなかった。」

「ほう…聞こうじゃないか。」

「私の子供を脅した。あいつが私は到底許されることじゃない。あいつは一度目の殺人を終えると、私に言った。『金は全部長男である俺がもらう。お前はその一割にも満たないことしかしていないのだから。』と。ふざけるな。と何もしていないのは兄のほうだった。すべての計画が済んで、兄が捕まるのなら、私はそれでもよかった。だが、あの日、子供を脅しながら兄は言った。『お前が通報するなら、事件はすべてお前のせいにする。』と。ここで私は何かが切れた。今まで、ため込んでいた堪忍袋の緒が切れるかのように。だから、私は兄をあの公園で殺した。子供は幸い意識を失っていたのか、気づいてくれなかったが、これでよいと思った。これで、私は平穏に暮らせると思った。あなたが出てこなければ!兄があなたを紹介しなければ!こんなことにはならなかった。」


「…花丸さん、お兄さんは言っていました。『友人の為にもそして私の為にも…』と。あの言葉はすべて、謎が解けたら罪を償うと思っていたそうですよ。私にはそう捉えることが精一杯でした。お兄さんはあなたを助けたかったのですよ。救いたかったのは友人と、あなた、この二人を救う。そのために人を殺した。お兄さんの選択肢はもっと他にあったかもしれません。当然、殺人は許されないことです。でも、お兄さんをあなたは許したのではありませんか?」

「……早瀬…さん。私は…とんでもないことをやったのですか?」

「ええ、ですが、しっかりと償ってください。それが今あなたのできる最善策ですよ。」

「……。はい。」

「もう行きましょう。詳しくは署で聞きます。」


 坂東刑事が花丸さんに手錠をかけ、連れて行った。


「ふぅ……。」


 私はブレイクタイムの珈琲を一杯飲むと、誰もいないはずのモニターに呼び掛けた。


「花丸さん、私はあなたをこういう形でしか救えません。それを願ったから事務所に来たのでしょう?」


『ええ、本当にありがとうございます。約束、果たしていただいて。』


「とんでもないですよ。さあ、私との会話はここまでにしましょう。あなたは行くべき場所があるのですから。」


『はい。』


 ここでモニターを私は切った。

 数日後、新聞には容疑者の名前と、被害者の名前が小さく書かれてあった。


「以上が、私の一番苦労した事件簿だね。って、聞いているのかい?一真くん。」

「え、ええ。ですが…何とも言えませんね。その事件については。」

「そうかい?私にとっては現場に行くだけで難事件だと思っているけど。」

「…何とも言えませんよ。探偵という仕事は。」


 僕は静かに、そして吐き捨てるようにして言った。

 それを師匠は車いすに乗り、言う。


「まあ、確かに何とも言えないな。だが、私はこの短い人生を探偵という仕事に費やしたことはとても大きいと思うよ。」


 そういった師匠はとても大きく、壮大に見えた。


 それから数十年後、僕は今日も珈琲を淹れる。

 長年、淹れてきたこの味を変えることはない。

 探偵としての仕事は珈琲を淹れることから始まるのだから。


 師匠は去年、五十八歳でこの世を去った。

 最期まで謎を解いていたその姿を僕はもう見ることはできない。

 残されたのは僕と、この一つの車いすだけだ。

 そして、今日も扉をたたく音が聞こえる。


「おい!一真!事件だ。」

「おじさん、今回はどんな事件ですか?」


 僕は車いすを用意して、あっ、と思うと、写真立てから写真を一つ取り出し、車いすに座る。


「お前はいつもそこだな。」


 叔父さんが聞いてくる。

 当然、ここは僕と師匠の特等席なのだから。


「叔父さん、僕は動きませんよ。さあ、珈琲ブレイクです。」


 そういって、僕の探偵としての仕事が始まろうとしているのだった。


(終わり)

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