人並み半

白川津 中々

第1話

 道に躓き蹲るのが常であれば生きるとは此れ災難也。

 夜毎欠かさず呟くその言葉に私は呪詛を重ねる。生まれた事が罪ならば何と業の深い事か。前世とやらがあったとしたら、余程の大罪を犯したに違いない。何をやるにしても実らぬ花があるとすれば、これ程残酷な話もないだろう。


 私はどうにも無能となるように生まれたのだった。身体に異常なく思考も不自由ないくせに学業振るわず、拙い読み書き算術に他者から嘲笑されていたのだった。

 そんな私が並に働けるはずもなく、かといって飯を食わぬわけにもいかず、なんとか工場の事務方で雇っていただいたのだが失敗続きで、周りの方は私の尻拭いするのが常であった。

 人は口を揃えて私を白痴と呼んだ。後ろ指を指し、愉悦の肥にしていた。情けなく、恥ずかしく思ったのだが、事実を言われ怒る道理はなく、また、後ろめたさもあり、私はヘラヘラと笑っている事しかできなかった。大変な屈辱だが、無能である私には他に手段がないのである。


 生きているのが辛いと思うのが当たり前であった。

 死んだ方がましであると思わぬ日はなかった。


 どうして私は人並みに産まれ、人並みに生きられなかったのだろうか。ただ生きるというだけで、なぜこれ程までに辛苦を感じなければならないのだろうか。何をやっても人並み半の私には、幸福になる資格がないというのだろうか。

 鬱々として腹が腐っていく。いっそ死ねたらどれだけ楽か。

 けれど、あぁきっと、私は安らかな死さえ迎える事ができないのだろう。なぜなら私は、人未満の生き物なのだから。

 どうせ、何をやっても駄目なのだ。どうせ、何をやっても……

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