episode2 探求心はショットガンを殺す

 ショットガンがぶどう飴を弾にして撃ったらどうなるのだろうと考えた。

博識なスナイパーライフルに意見を求めると彼はこう言った

「そんなこと試すまでもない。この前リボルバーがのどが痛いと言って銃身にのど飴を詰めたら窒息したじゃないか」

「でも俺は弾倉に詰めるんだぜ。呼吸には何の問題もないはずだ」

「どこに詰めるにせよ銃弾じゃないことに変わりはない。長生きしたいのなら妄想で終わらせておくことだな」

そう言ってスナイパーライフルはマッスルカーに乗って水族館に帰った。


 誰かによせと言われたところでショットガンの探求心は収まらない。むしろよせと言われたことを率先してやるのがショットガンという生物だ。

 だが、さすがのショットガンもいきなりぶどう飴を詰めるのには躊躇した。

そこでショットガンは慣らしでポッキーから始めることにした、が、

最近県警本部に不登校気味だったため、仏壇にポッキーは一つもなかった。


 やろうと思ったことがすぐやれないとショットガンは激しく怒り狂う。

顔面に鯉を押し付けながら、手にコンドルを携えつつ、北京ダックをハチの巣に押し込んでいると案の定となりの部屋から雨がっぱを重ね着したマグナムが突入してきた


「そんなにポッキーが欲しいならくれてやる!オラ!銃口おっぴろげろ!」

「ちがう!銃口じゃなくて弾倉だ!ゴフッ!」

 ハンマーに届くんじゃないかって勢いでショットガンの銃身に棒状菓子が突っ込まれた。

あわやショットガンはリボルバーの二の舞になってしまうのか。いやならなかった。

銃身に突っ込まれたのはポッキーではなく出来損ないのトッポだったのだ。


 最後までチョコぎっしりでなかったためなんとか窒息を免れたショットガン。

しかし残念ながら銃口はホルンのように開いてしまったので、リモコンを財布に入れて医者の経営する金管楽器屋に出向いた。


「先生、口がこんなんになっちまったからにはショットガンとしての俺は捨てます。だから俺をホルンにしてください!」

「たしかに私はマシンガンをチューバにしたことはある。ほら、そこでショーケースに入っているやつがそうだ。だけどそれは彼女の祖父がラッパ銃だったからできたことなんだ。君の家系にはバイクのマフラーはいてもラッパっぽいやつは無い。だから諦めて」

「リモコンならいくらでも出す!なんだったらイヤホンもつけてやる!」

「私の母は小さい私と妹を残して、イヤホンと駆け落ちしたんだ。そのオーディオ機器を二度と私に見せるんじゃない!出てけ!」


追い出されたショットガンは、やけになってペンキを段ボールに塗りたくったものを激しく抱きしめた。

だがそんなことをしたら缶スプレーが黙っちゃいない。

手加減を知らない缶スプレーは熱々の天ぷら油に水をぶっかけたものをショットガンにぶっかけた。

当然ショットガンは大やけどを負い、今度は普通の病院に担ぎ込まれた。

     

       ーーーー病室ーーーー

「先生!ショットガンは助かるんですよね!?そうだと言ってくださいよ!」

「キュキュキュキュユッキュー(残念ながら5段階で言うところの8ってところなんです。さぁ、お別れをこのマイクに、スナイパーライフルさん)」




ショットガンは死んだ。いつも生死の境界線を渡り歩いていた彼は、ついぞ向こうに行ったきり帰ってくることはなかった。

「ショットガン、我が無防備な心に火災がかくれんぼした友よ。お前の疑問に私は答えてやるぞ」

スナイパーライフルは弾倉にぶどう飴を詰め、缶スプレーを狙撃した。

結果、缶スプレーは塗料とガスをぶちまけ、ただの缶になった。

そしてスナイパーライフルはというと、食べ物を粗末にするなと壊れたレコーダーのように繰り返す、壊れたラジオにバックを取られ、芸術的で残虐的なバックブリーカーを決められ、いけない角度まで曲げられてしまった。


    ーーーーー向こうーーーーー


「やはり弾丸以外を詰めたらろくなことが起きなかったな」

「しかしコーヒー飴なら結果は変わるんじゃないか?あれは飴らしからぬ香りを発しているから分からないぞ」

「食べ物を本来の用途で使わないことに変わりはない。そらみろ、またラジオがすごい角度まで曲げているぞ」

「ならラジオがいなかったら?」

「…死人が知る必要はないさ」



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行き当たりばったり奇文 エホウマキ @shimotsuru

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