〈interlude〉ACT 2


【ACT・2】

※リプレイ形式(会話のみ)です。


・ラディアス……銀河〈竜〉ティスティル帝国王兄(次男)。魔族ジェマ水晶竜の部族クリスタルワーム

・ラァラ……ラディアスが養っている翼族ザナリールの女児。好奇心旺盛なお年頃。

銀闇ギンヤミ(ジェイス)……現 《闇竜》の纏め役。獣人族ナーウェア黒豹の部族ウェアパンサー

・グラッド……元 《闇竜》、現 《黒鷹》所属の暗殺者アサシン獣人族ナーウェア狼の部族ウェアウルフ



ラディアス 「――で、グラッドは遠出だから戻らないってさ、ラァラ。夜になる前に城に行けって言われたけど、これだけ終わらせるからちょっと待ってなー」

ラァラ 「ぅ?」

ラディアス 「これねー、薬草天日干しにして粉にしたヤツなんだ。調合の割合でいろいろ効果変わるんだぜ」

ラァラ 「ぁ、ぃあ」

ラディアス 「これくらいしか役に立てないからさー、もうちょっと待ってな」



??? 「……ふぅん、なるほどこの子が小鳥ですか」

ラディアス 「……ぇ?」

??? 「あなたが《星竜》の風来坊君ですね? 私は《炎纏いし闇の竜フレイアルバジリスク》の『銀闇ギンヤミ』と言います」

ラディアス 「えーと、グラッドの元上司サン……?」

ラァラ 「ふぎゅ」

銀闇 「そういうことになりますね。……別に何もしませんから、そんなに小鳥を抱え込まなくても大丈夫ですよ(笑)。苦しがってるじゃないですか」

ラァラ 「ぅぃうー!」


ラディアス 「――っごめラァラ、でもだって、誘拐とかされたら困るしっ」

銀闇 「しませんよ(笑)。そういう手段は、能力のない者が苦し紛れに使うくらいで一般的じゃありませんからね、心配しないでください」

ラディアス 「ん、……じゃあ何しにしたんだ? グラッドなら、留守だけど」

銀闇 「だから来たんですよ。彼と出会でくわしたら、立場上殺さなきゃならないですからね、一応裏切り者ですし」

ラディアス 「何? キミって俺に会いに来たわけ……?」

銀闇 「正確にはあなたと、小鳥の顔を見に、ですよ」

ラァラ 「ぅー?」

ラディアス 「…………見てどうするんだ」


銀闇 「そんなに怖いですか?(笑)」

ラディアス 「怖い、とかじゃなく。キミら《星竜》の首狙ってるだろが」

銀闇 「本部の方はそうですね。ゼルスの《闇竜》にそんな力はありませんよ」

ラディアス 「……? 一緒だろ?」

銀闇 「海隔ててますし、どの道こっちからじゃ牙は届きませんからね」

ラディアス 「…………(後退)」

ラァラ 「………(じぃぃ)」

銀闇 「何もしませんよ(笑)心配なら、【嘘探知センス・ライ】使ってみなさい?」

ラディアス 「ん、じゃ一メートル内に近づくなっ(下がりつつ魔法唱え)」

銀闇 「その距離にどれだけの意味があるかはともかく(笑)。解りました」



ラディアス 「で、なにしに来たわけ?」

ラァラ 「…………(首傾げ)」

銀闇 「諸々の確認です。私とした事が、少しばかり勘違いが過ぎましてね……。気づいたら《星竜》と《黒鷹》両方を敵に回してるじゃないですか。驚きましたよ」

ラディアス 「……敵にって、元々 《闇竜》は」

銀闇 「元々敵、とか言わないでくださいね? 少なくともここ数年のゼルスの《闇竜》に、誰かを脅かすような力はありませんよ。あなた方 《星竜》にとっては《黒鷹》の方が余程、将来的危険因子でしょうに、なぜ《黒鷹》の側に付いたりしたんです?」


ラディアス 「……別に、俺は《黒鷹》の一員じゃないし」

銀闇 「一員でないなら尚更、内部に関わるのはどうかと思いますが」

ラディアス 「そうなんだけど、でも」

銀闇 「グラッドが《黒鷹》に付いたから、ですか?」

ラディアス 「そういう訳じゃないって、色々世話になったし借りあるし」

銀闇 「小鳥を守ってくれるから、ですか」

ラディアス 「………切り捨てたんだろ? 《闇竜》は、このコの親たちを」

ラァラ 「ぃぅ?」


銀闇 「結果的にはね。見通しが甘かったとしか言えませんね、これは」

ラディアス 「結果って」

銀闇 「確かに、黒鷹は女性に優しいですよ。小鳥を守ってはくれるでしょうし、養うだけの経済的余力もありますし。……でも、あなた自身は彼らに受け入れられてるんですか?」

ラディアス 「――…………。俺はー、いいんだ必要なくなれば出て行くから」

銀闇 「あなたは、ロン・クリシュナに疎まれているでしょう。小鳥の保護者という理由意外に、《黒鷹》にとってあなたは価値がない、……違いますか?(笑)」

ラディアス 「……俺が悪いんだから仕方ないさ」


銀闇 「良い悪いはさて置き。将来的に《星竜》の脅威に成り得る力を秘めた《黒鷹》に、《星竜》の血族たるあなたが嫌われているというのは、あまり良い状況に見えませんね」

ラディアス 「……銀闇サン、何言いたいの?」

銀闇 「あなたと《星竜》の守護者を共に好ましくないと思っている相手に、深く関わるのは危険だと思っているだけですよ」

ラディアス 「……ん、ゴメンだいたい解ったから、それ以上はイイや」

銀闇 「まぁ、だからといって我々があなたに、何かを与えられる訳でもないですがね」


ラディアス 「銀闇サンは、《黒鷹》から離れろって言いたいの? 今の内に潰せって言いたいの?」

銀闇 「《黒鷹》は《星竜》の戦友にはなり得ない、と言っているだけですよ」

ラディアス 「……でもそれは《闇竜》だって一緒だろ?」

銀闇 「私に、本部を動かす力くらいありますが?(笑)」

ラディアス 「え、……?」

銀闇 「私としては、余り、食い合ったり噛み合ったりは好きじゃないんですよね」



??? 「――ジェ、銀闇!! 貴様ここに何しにっ」

ラディアス 「え? グラッド?」

ラァラ 「! らぁ!」

銀闇 「おや、嗅ぎ付けて戻って来ましたか。別段何もする気はありませんよ、グラッド」

グラッド 「――ラディアス、おまえ銀闇に何を吹き込まれたんだ」

ラディアス 「……別に、なんも」

銀闇 「グラッド。あなたという因子ファクターさえなければ、私が今ここで彼に敵対する理由はないんですよ? それをわざわざ戻って来るなんて、相変わらず考えナシですね(笑)」

グラッド 「無関係ならなぜ来たっ」


ラディアス 「にいさん、大丈夫だって。このヒト嘘は言ってねーから」

銀闇 「正直、あなたには失望しましたよ。グラッド、せめて宝玉を返しなさい――と言いたい所ですが。ロン・クリシュナ直々に所有してるんでは、無理でしょうね」

グラッド 「ラディアス、こいつは嘘をつかなくてもヒトを言葉で操るのが得意なヤツだ。耳を貸すな」

ラディアス 「……でも、にいさん相対したら危険じゃないか」

ラァラ 「ふぃ」

銀闇 「――サーベルを抜いたという事は、私と戦う気ですか? グラッド」

グラッド 「おまえが出て行かないなら、やむを得んだろう」

銀闇 「脅しにもなりませんよ。実力をかえりみなさい」


ラディアス 「――っ。キミたちさー、やめろよなこんな場所で! ラァラの前で斬り合いする気なのかっ!!」

ラァラ 「なぁぅ!」

グラッド 「ならおまえはラァラを連れて先に城へ行け」

ラディアス 「バカ言うなっ、テレポート使えるんだから先に行く意味ないって」

グラッド 「私は任務があるんだ」

ラディアス 「にいさんさ、大将は融通利くヒトなんだからこういう場合は城戻ったっていいと思うぜ?」

ラァラ 「ぇぅ?」


銀闇 「…………(忍び笑いしつつ)成る程、理解しましたよグラッド」

グラッド 「――何をだ、銀闇」

銀闇 「あなたが《黒鷹》に忠誠を売ったのは、贖罪のためですか。あなたは《星竜》の彼を、リジィの代わりにしようとしているでしょう」

グラッド 「――銀闇!!」

ラディアス 「リジィ、……って、もしかして」

グラッド 「黙れ銀闇! 憶測で俺のことを決めつけるな!!」

銀闇 「ラディアス、リジィはあなたの予測通り。グラッドの弟分で私が見殺しにした、人狼ワーウルフの彼ですよ」

グラッド 「銀闇!!」


ラディアス 「なんだよにいさん、なんで止めるの?(笑) 話されちゃ困るわけ?」

グラッド 「………そういうわけでは、ない」

銀闇 「名前も教えていなかったんですか、グラッド。もしかしたら小鳥の父親かもしれないでしょうに」

ラァラ 「ぇぃ?」

グラッド 「煩い。帰れ、頼むから帰ってくれ銀闇」

銀闇 「解ってますよグラッド。あなたの性質は、十分にね。……ラディアス」

ラディアス 「はい?」

銀闇 「グラッドは、哀しいだけの過去あるいは真実など知らずに済めばそれでいい、そういう主義の人物なんですよ」


ラディアス 「うんー、知ってる一応」

グラッド 「だから俺のことを勝手に代弁するなと言ってるだろうが!」

銀闇 「声を荒立てるのは罪悪感の証明です、グラッド。ラディアス、私はグラッドほどではありませんが、リジィの事も彼女、レリアの事もよく知っています。聴きたければ話して差しあげますよ」

グラッド 「……貴様っ! 見殺しにした癖に今更なにをっ!!」

銀闇 「確かにね。私は組織のため二人を見殺しにしましたよ。……ではグラッド、あなたは?」

グラッド 「――っ」


銀闇 「あなたは死者への義理立てのため、私や《闇竜》を見限っただけでなく、よりによって天敵の《黒鷹》に付いたじゃないですか(笑)。違いますか?」

グラッド 「俺は、……畜生っ」

銀闇 「前にも言いましたが、覚悟の上での行動をなじる気はありませんよ。ですが、あなたに彼らの事で私を恨む権利があると同じく、私も今ここで、裏切り者であるあなたの命を奪う権利を持っているんです。それを容赦している意味くらい、考えナシのあなたにも解るでしょう?」


ラディアス 「銀闇サン、にいさん死のうとしてたのを、無理やり引き留めたの俺だから」

銀闇 「ええ、そのようですね」

ラディアス 「俺にいさんに死んで欲しくないから、殺すって言うなら俺も容赦しないから」

銀闇 「何もしませんよ(笑)。むしろ、納得いかなかった事が理解出来て、私としては満足ですからね」

グラッド 「満足したなら、もう帰ってくれ」

銀闇 「そうしますよ、グラッド。……ラディアス、私は小鳥の保護者にはなれませんが、あなた方に危害を加えるつもりもありません。名乗れば通して貰えるよう話は付けておきますから、そこの狼と喧嘩したり黒鷹に追い出されたりしたら、いつでも来なさい(笑)。歓迎しますよ」


グラッド 「いい加減にしろ銀闇っ!」

ラディアス 「まぁまぁにいさん血圧上がるよー。了解ですよ、ありがと銀闇サン」

グラッド 「低血圧よりはマシだ!」

ラディアス 「えー、なんでそこでそういう答えになるわけ? ラァラが怖がるから怒るなよー」

ラァラ 「ぅぃ?」

グラッド 「怒ってないっ」

銀闇 「……(笑)。良いもの見させていただきましたよ。では、またいずれ。あなた方に良い幸運を祈ってますね」

グラッド 「おまえが祈る幸運なんて要らん」

ラディアス 「(笑)ハイ、ありがと。バイバイ」



グラッド 「……ラディアス、おまえまさか、行こうなんて思ってないだろな?」

ラディアス 「ん、思ってないよ(笑)」

グラッド 「おまえは平気で嘘をつくから、信用ならん」

ラディアス 「嘘はつかないよー。にいさんが喋らなさすぎなだけじゃねーか」

グラッド 「………別に無口なつもりはないが」

ラディアス 「そうじゃなくさ。にいさん、自分の中で要不要決めちゃって、不要と思ったことは絶対ぜってェ教えてくれないんだもん、嘘かホントか以前に判断できませんよー」


グラッド 「私から話せることなど何もない、ただそれだけだ」

ラディアス 「……にいさんが、俺って言ってるの初めて見た(笑)」

グラッド 「そうか?」

ラディアス 「口で言うほど銀闇サンのコト嫌ってないくせに。戻れるなら戻りたいって思ってるんじゃねーの?(笑)」

グラッド 「厭味イヤミな猫にこれ以上付き合ってられるか。戻る気はないし心残りも全くない」

ラディアス 「あ。にいさん今嘘ついた」

グラッド 「は? ――おまえまさか【嘘探知センス・ライ】っ」

ラディアス 「まだ効果残ってたッぽい、さっき銀闇サンに……――っ、いってー叩くなっ」

グラッド 「阿呆」

ラディアス 「殴っといて、ひどっ」


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