君はゴースト

杉ノ梅

第1話 

カシャッ


静かな空間にカメラのシャッター音が鳴り響く。


「今日も綺麗に撮ってくれた?」

彼女はそう言いたそうな笑みでこちらを見ている。


僕は微笑み返す。彼女はとても綺麗だから。僕にはもったいないくらい君は眩しい。

この世のモノではないような白い肌、艶やかな髪、そして僕を見つめるその瞳。


「ねえ、もう終わり?」

彼女は首を傾げてこちらを見ている。


「ああ、今日はもう終わりにしよう、君も疲れただろう?」

そう言って僕は彼女の頭をそっと撫でて帰路に就いた。


その後も毎日、毎日同じ場所で彼女を撮り続けた。



彼女とは同じ部活だった。

僕は綺麗な彼女をどんどん好きになっていった。僕は幸せだった。


彼女は僕のために毎日被写体になってくれた。ある日は教室で、またある日は彼女の家で。


そんな時だった。彼女が突然僕に話しかけてきた。

「もうやめて」

僕には彼女が何をやめてほしいのか理解できなかった。


そんな僕に彼女は続けた。

「勝手に写真を撮って、私のことを監視するのをやめてって言ってるの!」


「何を言って......君が撮っていいって言ったんじゃないか」

「そんなこと言ってない!いつか被写体になってもいいって言っただけよ!」


「それに好きだって......」

「あなたの写真がね!いつでもどこでも撮っていいだなんて言ってない!!!」


全て僕の勘違いだったのか?そんなわけないそんなわけないそんなわけないそんなわけないそんなわけないそんなわけないそんなわけないそんなわけないそんなわけない


「でも僕は君を愛してるんだ、君は綺麗だ」

「そんな好意嬉しくないのよ、気持ち悪いわ」


彼女は何を言っているんだ?僕は君を綺麗に撮って、それが生きがいで、彼女にとっても幸せで......


「とにかくもう近付かないで」

彼女はそう言って僕に背を向けて歩き出した。


僕はついカッとなって傍にあった三脚で彼女を殴った。

何度も何度も殴り続けた。

彼女はまだ息はあったが頭から血を流して倒れた。

「な、なに、を、す、る......」

彼女はそう言って心臓を止めた。


「嗚呼、なんて綺麗なんだ」


この世のモノではないような白い肌、艶やかな髪、僕を見つめるその瞳、そして滴り落ちる紅い血液。


「これからも君を撮り続けるよ」


僕はそっと彼女を抱き締めて、誰にも見つからない場所に隠した。

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君はゴースト 杉ノ梅 @nombery

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