〇〇六
『ローランダルク王国とその滅亡について』
ローランダルク王国は、大陸の西半分であるところの『西紳(せいしん)』と東半分の『東蛮(とうばん)』を隔てるミラージ山脈に囲まれた小国であった。
国土は小さいながらも、四方を山々に囲まれた地理的要因と『メンシス湖』と呼ばれる淡水湖に連なる運河を持っていたために、大陸の東西を結ぶ交易の中継点として栄えていた。
古くは東蛮から流入した民族の連合が山を開拓して創始したとされるが、その詳細は記録に残されていない。東蛮はつい最近まで歴史を文字で残す習慣を持っていなかったのである。
名物は各国の文明の入り混じったローランダルク市街や腕自慢の集う闘技場など。料理はメンシス湖で採れた魚を東蛮からの交易品である胡椒で味付けした香味焼きが有名だった。
そんなローランダルク王国だが、今から十数年前に一夜にして滅び、都にいた者の全てが死に絶えた。
その晩に都で何が起きていたか。ミラージ山脈の西紳側で運悪く遠巻きに目撃した者がいた。ローランダルクに向かっていた孤独な旅人であった。
曰く、
「大地のあちこちから炎が噴きだし、ローランダルクが誇るメンシス湖が干上がった。どいつもこいつも炎に焼かれながら互いに殺し合い、炎の中を大きな魚が泳いでいた。街が融けて混ざり合い、どんどん大地に沈み込んで、女の子の泣き声が、泣き声が、泣き声が……」
とのことだ。
男は見聞きしたものを断片的にしか語ることが無かった。事件の直後から精神に異常をきたし、後に不可解な死を遂げたという。
滅亡の直後にローランダルクに挑んだ冒険者たちの言葉から、彼の証言の多くが真実であったことが確認された。
ローランダルクの都は陥没した大地に沈み、人々は死して尚燻り続ける炎に焼かれ続け、空には魚たちの怨霊が泳いでいるという。
それらは確かにそこにあったのだ。
以上の情報を閲覧したならば、【〇〇四】に戻りたまえ。
【https://kakuyomu.jp/works/1177354054888453186/episodes/1177354054888454991】
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