〇〇一
君は腕の立つ冒険者だ。
依頼人の代わりに危険に身を投じることが君の仕事だが、依頼が無かろうが自ら進んで血と金の匂いのする場所に乗り込んでいくことだってある。
冒険者とは、常に険しい道を冒す者だ。
そんな君には相棒がいる。
情報収集を得意としており、戦闘に長じた君とは持ちつ持たれつの関係にある。
名をロヴァルト=フェイク。
君を含め、彼を知る者は親しみを込めて「ロヴァ」と呼ぶことだろう。
ある日のこと。
酒場で仕事を漁っていた君のもとにロヴァは上機嫌で訪ねて来た。
「聞いてくれよ相棒、すげぇブツが手に入ったんだ。此処じゃ見せられねぇから、ほら、こっち、こっち」
人目につかない場所に君を連れ込んだロヴァはおもむろにズボンを脱ぎだした。
君はギョッとするだろう。
だが、露出した彼の尻を見てみれば、その理由が分かる。
普通では有り得ないような形の痣が浮かび上がっているではないか。
墨を入れたようにどす黒い色の、渦の形をした見事な幾何学模様であった。
「『マダラメイアのしるし』だ。どデカい冒険のチャンスが手に入ったんだよ!」
ロヴァは目を輝かせて語る。
しかし、君はマダラメイアという名前を知らない。
「おいおい、この業界じゃあ有名な話だぜ。情報が命のこの稼業でよく今まで生き残れたな? あ、俺と組んでたおかげか、ははは」
ロヴァはベルトを締めると、君の肩を叩く。
「つっても、この件については俺も知らねぇことだらけだ。まずは情報(ネタ)を仕入れに行こうや」
ロヴァは君の手を引いて、街の下層街に向けて歩き出した。
君たちが今いるオーングロリアム王国の都ウェストグレイには、国中の情報が様々な形で集められているという
君たちはその中でも贔屓にしている情報屋へと向かう。
情報屋の事務所は街の下層の中でもかなり奥まった場所にある。
僅かに糞尿の匂いが立ち込める下層街を君たちは慣れた足取りで進む。
「マダラメイアってのは、神様の名前だ。十数年前に滅んだローランダルク王国で信じられていたらしい」
ロヴァは道すがら君に語って聞かせる。
「ローランダルクはな、火山の噴火だか大火事だかで国が滅んじまった後、炎と幻に包まれたヤベェ場所になっちまったらしい。だが、今でもその亡都には王国の財宝が今もたんまりと眠っていやがるって話だ」
ありがちな話だ。と、君は思うだろう。
しかし、同時に胸が弾むのも感じている。冒険の匂いには君も逆らえない。
そして、それだけではないとロヴァの目が言っている。
「今はマダラメイアを信仰する『幻日教団』って奴らが都への道を守っているらしいが、唯一、マダラメイアの『しるし』に選ばれた巡礼者とその仲間だけは通してくれるらしい。しかも、都の奥にある祭殿までたどり着くと、マダラメイアに何でも一つ願いを叶えてもらえるときたもんだ。で、俺はな……」
言いかけて、ロヴァは口を止めた。
「おっと、着いたな」
君たちは話に夢中になっている内に、いつの間にか情報屋の事務所の前に辿りついていた。
「どーも、そろそろ来る頃かと思ってましたよ」
馴染みの情報屋は事務所奥の椅子に深々と腰掛け、愛猫に餌をやりながら君たちを横目に見た。
「今日はアレっすか、廃都ドラクロイツの遺跡に棲みついた怪物のことが知りたいんでしょ? その件についてならさっき面白い情報が入ったんで、持って行っていいっすよ。お代はその辺に置いといてくれればいいんで」
愛猫の背を夢中で撫でながら机の上の紙束を顎で示すが、ロヴァは笑って首を横に振る。
「その件も気になるけどよぉ、俺達が知りたいのはローランダルク王国、それとマダラメイア神についてだ」
すると、情報屋は目を丸くして君たちを見た。
「次の獲物、あそこにするんッすか?」
「おうよ、しるしに選ばれた。本当にツいてるぜ」
ロヴァは自らの尻をポンと叩くが、情報屋は眉をしかめた。
「うーん、あんまり良い噂は聞かないっすよ。関われば早死にする、冒険者業界の厄ネタっす」
「だからいいんじゃねぇか。冒険ってのはそうでなくちゃいけねぇ」
ロヴァは笑い飛ばすと、君を見た。
「相棒もそう思うだろ、なぁ?」
ロヴァの軽い問いに、君はどう答えるだろうか。
物語は常に君の選択を求めている。
選択したまえ。
・ロヴァの問いに対して肯定的な返答をするならば、【〇〇二】に進みたまえ。
【https://kakuyomu.jp/works/1177354054888453186/episodes/1177354054888454397】
・ロヴァの問いに対して否定的な返答をするならば、【〇〇三】に進みたまえ。
【https://kakuyomu.jp/works/1177354054888453186/episodes/1177354054888454432】
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