応援コメント

/10 寄宿舎(六月十日)」への応援コメント

  •  ジョン・ロックが『人間悟性論』の中で述べた命題に、タブラ・ラサが存在します。ルマランゼ氏に於いては承前の事でしょうが、もしこのコメントを読まれる奇特な方が居た時の為に蛇足ながら解説をすれば、人間は産まれた時は何も刻まれていない白紙の石板であり、経験と内省によって観念を獲得するという、経験論者のロックらしい素朴な命題です。
     現在の生物学や行動学の観念から見れば、この命題は偽であるのは明確です。人間行動や思考は、遺伝子に刻まれた先天的な傾向に大きく影響され、赤子は白紙の石板だと述べるのは不可能に近いでしょう。
     その例外となるのが、一卵性双生児です。かつてアメリカで養子に出された一卵性双生児の成長に関する大規模な追跡調査が行われた際、成長環境が違っても、身体能力や学力に於いて得意分野がかなり似通っている事が確認されました。この調査で興味深かったのは、養子に出されて違う環境で育った双子の方が、メンタリティが似通っているという調査結果が出された事です。
     双生児は育つ際に、親たちによって、あるいは自分たち自身によって、互いを強く差別化しようとする意識が働くからではないかと考察されています。
     この物語は、マナとミナという違う存在に別たれた双子が、ロックの唱えたブランクストレートが如き一つの無垢の魂に戻る物語であり、科学思想によるタブラ・ラサの解体史が好きな私に刺さりまくり、非常に神秘的でファンタジックな感銘を受けました。
     物語の本筋に関係ない無駄口失礼。
     まひろちゃんといたみの百合百合シーン凄く美味しかったかったです。
     まひろちゃんは裏切ったら刃物持ち出してきそうな子だなあ、と思っていたら、最後に心臓痕の幻を相手に本当に刃物持ち出してきて、ちょっと笑いました。
     この最終話で散りばめられた伏線、そして三章の登場人物紹介を読むだけで、次章への楽しみが抑えられません。
     ありがとうございました!