エピローグ
厳島神社で神社巡りの本とテンマの行く末を見届けた私達は、約半年に渡る神社巡りも終了となった。
私達に力を貸してくれた厳島神社の御祭神である
そして、広島から東京に無事戻って来た私や
月日は流れ、2019年5月某日―――――――――――――
「よぉ」
「
内房線の君津駅で待ち合わせしていた私は、
「時間に余裕持って来た方が、いざって時に慌てずに済むだろ?それに…」
私の前まで小走りで寄って来た
「俺は兎も角、お前みたいなヒールのある
「…それもそっか」
彼の
会話をひと段落した私達はその後、目的地へと足を進める事となる。
今日は、健次郎と裕美の結婚式という事で、私達はお互い新郎側及び新婦側の友人として招待をされているのだ。二人の職場関係上、東京で挙式を行う事も考えていたらしいが、当人らの話し合いによって
「直子の葬式後に、私達は再逢したじゃん?…去年のあの時期から、少しずつ交際を開始していたみたいね」
「あいつらはあいつらで、俺らに気を使っていたのか…。別に、お互いの事名前呼びしていたって、
式場へ向かいながら、私達は健次郎と裕美の馴れ初めについて語っていた。
要は私が
まぁ、広島の一件で二人に何かあるのは薄々勘付いていたけどね…
会話する一方で、私はそんな事を考えていた。
というのも、裕美がテンマに拉致されて広島へ向かった際、厳島神社にて健次郎が裕美の事を名前で呼んでいた
「…っと。本当にすぐ着いたな…」
「確かに、”君津駅より徒歩1分“と公式ホームページに書いていただけあるね」
私と
「まずは、行きましょう!」
「…だな」
そうお互いに述べた後、私達は式場へと足を踏み入れていく。
今回、私達がお呼ばれした式は、所謂”ホテルウェディング“で、ホテルの敷地内に教会や神前結婚式向けの神殿が存在するという式場だ。私や
「綺麗なチャペルだよね…」
私は、教会内の席で待つ中、周囲の綺麗さに見惚れていた。
挙式を挙げる教会はブラウンと白をあしらったチャペルで、天井も高く、白い床でできているバージンロードはとても長く感じていた。
「…俺も、お前とこんな場所で式できたらな…」
「
すると、隣で
ただし、小声で呟いていた事に加えて周囲は他の招待客がざわついていた事もあって、はっきりと聞きとる事はできなかったのである。
「…っ…」
聞き返された事で、彼の頬が少し赤く染まっていた。
しかし、すぐに何かを思い出したような
「…そういえば、お前。披露宴にて、友人代表でお祝いのスピーチするんだろ?内容はバッチリ暗記したのか?」
「ちょ…!もちろん覚えてきたけど…もう!」
今はスピーチするからって緊張しているんだから、改めて言わないでよー!!
私は、心の中で叫びたい気分だった。
それは当然、ざわついているとはいえ、このような厳かな
その一喜一憂を隣で見ていた
「…まぁ、せいぜい頑張れ。ちゃんとやり切ったら、俺もちゃんと言うから」
「ちゃんと…?」
穏やかな笑みを浮かべながら口にした
え…
しかし、一瞬だけ考えた後に彼が何を言おうとしているのかに何となく察しがついたため、頬が真っ赤に染まり始める。
その後、挙式が執り行われる訳だが―――――――――――私は、披露宴のスピーチをする事による緊張と共に、
挙式が無事終わり、フラワーシャワーを終えてから披露宴会場へ向かう事となる。
移動するにはまず、一度チャペルを出てレッドカーペット等の装飾が施されたガーデンを通り抜ける事となる。
式の最中は新郎新婦共に緊張しているようだったが、挙式が終わりレッドカーペットの上を歩いていく彼らの表情は、とても幸せそうに見えた。
本当にお似合いのカップルだな…!
健次郎と裕美の表情を見た時、私は友人として本当に彼らが幸せになってほしいと切に思った。
そして同時に、二人を結び付けたもう一人の功労者―――――――――――
因みに、私が花窟神社で受けた呪いにも似た“穢れ”の件だが、厳島神社の宗像三女神からの教えを経て、厄払いを主とする寺社にてお祓いを受ける事で少しずつ弱める事ができるという事が判明した。
まだ完全に消滅した訳ではないが、ここ半年で次第に体の調子が落ち着いてきたという所だ。
「今日の
披露宴会場へ向かう途中、招待客の一人が一緒に歩いている別の招待客と話している内容が、私の耳に入ってくる。
そうだ…。結局、平成から令和になってすぐも何も起きなくてよかったな…
彼らの会話を聞いた時、私は不意にそんな考えが脳裏をよぎった。
それは神社巡りを始めるにあたってテンマより説明を受けた際、期限を2019年4月30日までという話があった。それよりも前に終えてテンマと手を切る事はできたが、その期日に何か起きるのではないか―――――――そんな予感を、私はしていたのである。
しかし実際は、日付が変わっても特に何も起こらなかったという具合だ。
「おい、
「あ…」
その場で立ち止まっていた私は、
気が付くと、他の招待客の姿がほとんどなく、私と彼の二人きり状態になっていた。
披露宴開始まで、もう少し時間はあるだろうけど…。流石にこれは、急がなくては…!
周囲の状況に気が付いた私は、頬を赤らめながら
「慌てすぎて、スッ転ぶなよ?でないと、せっかくのドレスが台無しだ」
それを見た私は一瞬だけ固まるが、すぐに笑みを浮かべる。
「…ドレスも然り、こけたらストッキングが破れて予備に履き替えなきゃいけない可能性もあるしね!」
私は、少し皮肉るような口調で述べながら、差し出した彼の手を取る。
私は、神社巡りにてお参りの際にもやっていたように、心の中で“誓い”を立て、
そんな私や彼の後姿を、式場の上空――――――――
<完>
あの後、彼女は宙(そら)を舞った 皆麻 兎 @mima16xasf
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