勿論まず第一に。怪獣は架空の存在である。だけど架空の存在だからこそ、怪獣が街を壊して暴れ回る姿に私たちは興奮する。ぶっ壊せ、と応援したくなる。だけどそれがある時、怪獣が現実になったら。そしてもう一つ、私たちの中で現実が現在じゃなくなったら。怪獣達は本当に街を壊し始めるし、私たちはそんな街ではこれまで通りには生きていけない。怪獣の存在意義は、多分虚構の中で生きていく事そのものなんじゃ無いかとこの物語を読んで思った。
こちらの作品は死体ではなく怪獣探し(笑)子供の頃はなんでも冒険。むしろ冒険自体を探してた。怪獣を探すまでは子供の冒険でも、見つけて呼び出した後は大人の社会への入り口に立ってしまう。子供から大人になる為の前段階が、主人公達には"怪獣探し"だった。ラストは、あの名曲が聞こえてきそうな切なさがある……
淡々としつつも切なげな三人称により小気味よく綴られる場面達は、変わり映えしない、けれど失えば寂しくなるだろう等身大の青春を丁寧に紡ぎ出す。そんな愛おしい日常の中に突如放たれる異分子、怪獣の顔や謎の少女の言葉などがゆっくりと、しかし着実に主人公達の生活に影を落とし始める。その先に待つものとは何か。日常は守られるのか。答えはあなたの目で確かめてください。また、怪獣等に興味のない方も是非触れて欲しい作品です。きっと期待を裏切ることはないでしょう。