第2話

 子どものように小柄、折れそうに細い体、総白髪。穢れた右目を伸ばした前髪で覆い、大きな被り物で蓋をするように顔を隠す。無礼を極めた私は王様に言葉を投げる。

「あの、その……こんにちは」

 快活でないのは、私がお城で分不相応な椅子に腰を掛け、数十の兵に守られた王様と対面しているために極度の緊張状態であるからだ。道具としての使い道があるのかさえわからない人間が立派な場所に通されれば、当然頭が真っ白になりかけるというものだ。緊張している様子が面白かったようで、王様は下品な声で私を笑った。

 場違いな女がどのような理由で王様と対面しているのかというと、理由はとても簡単なもので、数日前に受け取った差出人不明の手紙に、数年の捜索の末にそなたを見つけた。城を訪ねろと書かれていたからである。悪戯かもしれないと疑いはしたが、同封されていた紙に足を切られた少年の写真が添えられていたため、恐怖した私は王様の趣味で建てられたお城の門戸を叩いたのだった。

 そして、

「お手紙をいただきました。少ない手続きでこの場に通されましたから、手紙の受け取りは私で間違いがなかったようですね」

 丁寧な言葉が苦手な私は、失礼がないように気を付けながら、幼い声で王様に言った。

 敬意が足りなかったのか、王様はつまらな表情で近くの水飲みを床めがけて投げた。硝子で作られたそれは呆気なく形を崩す。破片を拾おうとしてだろう、何人かが動いた。しかし王様は右手を挙げてそれらを制止する。 

「急き立てるな。友として、奴隷として、道具としの心構えが半端だ。長い間隠れていたようだが休養は足りたかな。余からだけでなく、すべてに背を向けていたようだが」

 お友だちの期間はあったかもしれないし、駒として動いたことがあった気もするが、奴隷となったことなど一度もない。そもそも奴隷制などない世なのだから、例え私が下等な人間だとしても適切な表現ではないだろうに。それとも、王様にとっての民は、みな等しく道具であるのか。道具に愛着をもつ種類の人間ならば、まだ人民のための政に力を注ぎそうではあるが、どうにもそのような性格をした顔ではない。彼の蛇のような目付きに獣のような口は、弱者を苛めて喜ぶ悪趣味な人間のそれである。人を見かけで判断するのは良くないと言うが、現に国は政治のせいで年々廃れている。ここ十年での国の衰退は酷いもので、いつ敵対する国に占領されても不思議ではない。

 王の称号を奪われてしまえば国の傷は癒えるのではないだろうか。彼の年齢は私と同じくらいであるから、まだ青いゆえの間違いとして、今ならば皆許すはずだ。私三人分程の身長の大男を、二十五手前の若者として見てもよいのかはわからないけれど。

 「私は仕事を受けるだけの、可愛い気のない人間です。雑談がお望みならば応じますが、いかがなさいますか」

「指示が必要か。以前よりも冷たくなったのではないかな。快活なそなたが懐かしくはあるが、その気がないのならば強制はしない。ここからは王として接しよう。各国にのさばり人々を苦しめ生き血を啜る、数匹の幽鬼を捕獲してほしい。駆除と研究、世のためにして余のため、一石二鳥。そなた向きの仕事だろうよ。六体を越える数が望ましい」

 私が石と同程度の能力を有しているかはさておき、どうしてそれだけのために私を捜し出したのだろうか。幽鬼と呼ばれる化け物の多くは、それなりの魔法使いならば簡単に狩れる。中には強靭な種もあるが、その大概は人の住み着かない危険な環境に身を置いているから、相手にする必要はない。一石投じて得らるものは王様の満足だけである。

 それに、数年間に渡る私を捜索するための人件費を考えれば、腕利きの魔法使いに仕事を依頼したほうが、明らかに財と時が少なく済んだはずだ。撤退しようにも今までの行為を惜しんで、諦められなくなってしまうことはあるだろうが、埋没した費用は基本的には早々に諦めて次に活かさなければ無駄になるだけだ。

 この王様はどうして私にこだわったのか。

「私である必要はないかと」

「他に適任がいないから執着しているのだろうが。求めるは力が強く、傷なく知能的、そして壮美な幽鬼だ。応えられるのはそなたしかいない」

「私では敵いません。国内の小物でしたら引き受けられましたが、それ以上となると……」

 力が強ければ過酷な地でも生存し、無傷で生きる個体の大概は生まれながらにして種の頂点にあり、知能的であると人を欺き、壮美であると人々から身を隠す。つまり欠陥の多い私が手を出せる相手ではない。私は誰よりも無力である。

「虚偽は罪、罪には罰を。城の二つ三つを容易に陥落させられたそなたが、幽鬼の一や二に苦労するはずがない」

「城の二つ三つとのお話は誰かが流した噂です。私は見栄を張っていなければ、恥ずかしさのあまり表を歩くことすら満足にできませんから、噂をそのままにし、楽な生き方をしていたのです」

 この反抗的な態度、聞いた人間によっては王様への反逆にも似たものだろう。己を否定することはそれを捜していた人間、今回の場合は王様を、頭から否定することととられてもおかしくはない。自己否定が王様の否定となってしまうとは、何とも言えない話だが、話し手にその気がなくとも、話というものは聞いている側の解釈が最も重要であるから納得せざるをえない。話し手にとっては卑下だとしても、聞き手にとっては侮蔑であるのだ。

 だからなのだろう、王様を警護していた兵士の一人が「無礼は許さぬ」と大声で叫んだ。兵士の声を合図として部屋のドアが勢いよく開かれ、数十の兵士が流れ込む。彼ら彼女らは、まるで統一性のない数々の武具をこちらに向けた。

 銃や剣、鞭に槍といったありふれた道具以外にも、見たことのないようなものも用意されている。共通するのはどれもが殺意をもって私に向けられていることだ。間抜けな顔で全体を見ていると、拳だけの者を確認できた。格闘と飛び道具の連携が難しいと考えるのは、私が素人だからなのだろうか。銃を手にしている者が射撃の名手なのか、拳だけの者は誤射される覚悟で私を殴ろうとする捨て駒なのか。それとも兵士は脅しの手段で、私を殺める気などないのか。

 どれにせよ下手に動けば大事となる。可能な限り小さな声で、身振り手振り少なく、丁寧な言葉を選択し、頭を下げる。

「あの、申し訳ありません。どうかお見逃しを」

「頭を下げるのは兵の方だ。近頃は小規模ではあるが民の反発が多く、この城にも危険が及んでいてな。兵士は過敏なのだ。この失態は兵士の死で償おうか」

 王様の声に続いて、殺意の矛先が変わる。先程声をあげた兵は膝をつかされ、腕を縛られ、首根っこを捕まれ、短刀を向けられていた。

 私の返答次第で簡単に一つの命が奪われる。一突きで覚めることのない闇に沈む。それが幸せなことなのかは、兵としての人生を経験していない私にわからない。間違いなく言えることは、兵士間での処罰など誰が見ても笑うことのできない、拙い演劇のようなものだということだけだ。楽しむことのできない劇を面白がれるのは王様だけだ。

 兵士が妻子ある身かどうかは知らないけれど、誰からも愛されない私と違い、兵士を愛する人間はいるはずだから、私一人のために命を落とさせるわけにはいかない。野蛮な王と無愛想な私のためには死んでほしくない。私のために生きてほしい。

「弾も刃も魔法と併用しなければ、私を傷付けはしません。見たところ兵は魔法を自由には扱えないようですから、えっと、ですから……危険はなかったかと」

「罪を見逃せと申すか」

「いいえ。罪を被る人間など、初めからいないのです」

 視界の端で何かが転がった。

 まさかと哀れな兵士の方に目を向けると、首より下だけとなってしまった死体を眺め、手を真っ赤に染めている立派な体躯の青年がいた。筋骨隆々、大丈夫、偉丈夫、無表情。幽霊も驚く恐ろしさを纏う青年は私を一瞥して奥の方へ下がる。兵は減り、士気は下がった。

 素手で人を殺せることを見せつけて、私を御そうとしているのかもしれないが、そこらの幼児と大差のない体格であるちびっこにそんなものを見せつけたところで、初めから格闘で互角に渡り合えるだけの算段などないのだから、驚くわけがない。それに体格や筋力のような、魔法の源の一つである精神と絡まないものは、命の取り合いにおいての強い弱いとはまったく比例しないので、戦う武器の主が魔法である人間には参考にできない情報だ。

 兵士の死は不要、というか無意味なもの。誰が望んだことかと問えば、それは天下人の王様であるから、誰も文句は言えないわけだが。

 王様も無表情であった。無表情で、

「さて、友よ。愚か者を救う善人の友よ。余に協力してはもらえないだろうか。褒美は望むものを与えよう。金や地位に名誉、人の本懐には忠実であれ」

「ほしいものなどありません……ありませんので」

 従わなければ処罰の対象だろう。爪を剥がされ指を折られ、腕を砕かれ切り落とされて、舌や歯を抜き取られ、目をくり貫かれ、鼓膜を突かれ、腹を裂かれて掻き回され、などの私の想像範囲内だけでは済まないような、人の道に背く拷問が平然と行われるのだろう。王様はそういう人間だ。動かぬ人間は憂さ晴らしのためのそれだ。それも、拷問相手は私ではなく顔も知らないような他人だ。私が承知するまで、取っ替え引っ替えに人を交換し、山々となった死体を前に後悔する私を従わせ、肴とするのだろう。

 他を巻き込まずに済むのならば、どのような痛みだろうと平気で許容できるし、むしろそれを誰かのための犠牲として喜び、素晴らしい快挙、気晴らしの自傷として味わうが、誰の得にもならない拷問を楽しめるほど痛みに強くはない。

 こうして無駄なことをうだうだと考えている間に、王様の機嫌は――堪忍袋の緒の期限は、悪い方へ向かっているのだろう。このまま黙り込んでみるという選択は、話の種として笑えないこともないが、植えても芽吹かぬ無意味なものである。可愛い声で、いやですぅー、とでも言っておくのが最善の不正解、王様の言いなりとなるのが最悪の正解。どちらだろうと最低だ。

 何をもって間違いでないとすれば良いのか。

 頭が痛い。

「余は英断を知らぬ人間と可能性に否定的な子どもは見たくない。そなたは正しい選択がわからぬほど愚かな人間ではないよな。そなたに関連する塵の居場所はこちらの手中にあるのだが、頷かぬつもりなのか」

「城を容易くどうこうできたというのは、本当に嘘のことなのです。それどころか、今の私はイロハ並みの魔法しか扱えません」

「精霊の加護に守られ、精霊から数多の魔法を引き出すことができるそなたならば、大きな力を使えるはずだろう。偽るな」

 体内に巡る魔力を消費しての魔法と精霊を利用することによる魔法。精霊の加護を受けることができれば、身の丈に合わない絶大な力を自分のものとすることも可能である。昔に私の魔法が優秀であると誉められたことがあるが、あまり精霊に好かれる体質ではなかったので、基本的には自身の魔力を消化していた。私の力が精霊発のものならば、今でも魔法を自由にできるのだろうが、自身に問題があるのではどうしようもない。そういえば、今の私は強力な魔法を使えないわけだが、これはどうしてなのだろうか。王様の手紙の内容は数年の捜索の末に私のことを見つけたというもので、つまりその間かその直前に力を失う何かが私を襲ったというわけだ。

 なぜ私は力を失っているのか。なぜ捜索されるような生活を送っていたのか。なぜ今の今まで力を失っていることを疑問としなかったのか。なぜ。

「そなたを討つことはできないかもしれないが、しかし塵を払うことは余であっても難ではない。それとも余に敵意を向け、城内外のすべてを敵とするか」

 なぜの連続に頭が混乱している。しかし不思議なことに晴れ晴れとしていた。

「……わかりました。ええ、わかりました。ですが、万一私が死んでしまった場合、他所に害がないようにしてはもらえませんか。もしくはこの場で首を落としてください。この命、城の肥やしとして捧げましょう」

 そこには抗おうとしない私がいた。脅す王様、睨む兵士、それに屈しているわけではない私だけがそこにいた。頭痛だ。それのせいだ。目の前が歪んでいるせいだ。都合の悪い頭痛がそうさせたのだ。私の言葉ではないはずだ。ああ、すぐにでも正常な思考に戻さなければ。

 歪む頭を正常に戻したのは、鼓膜に響いた発砲音だった。誰かが銃の引き金を引いたようで、弾は熱を帯びて顔前に迫っていた。銀製の銃弾が、速度を落としながらも私を貫こうとしたのだが、目の前に到達する頃にはピタリと停止する。罪の分散、特定からの回避、姑息なお人たちだ。皆で一斉に射撃すればいいのに。

 私を怪しむのならば――止めたいのならば。

「銃の一二で死ぬ私ではありません。刃で首を落としください」

「そなたの命など誰も求めない。されるがままに撃ち抜かれなかったのだから、そなた自身も死を望むわけではないのだろうよ。死ぬ気で働け。死なずに働け」

 なんと殺生なことか。 

「えっと、捕まえた幽鬼はどのような研究での道具とされるのでしょうか」

「魔女の魔に人間の人、形状の形、繋げて魔人形。そなたならわかるのではないか」

 学生時代の研究が魔人形に関するものであった。複数の幽鬼を一つに纏めた肉塊を人の形に固めたものが魔人形である。魔力を込めれば制作者の意思の通りに動かすことが可能なそれは、材料となった幽鬼の質によって肉体的な強度が変化する。出し惜しみなく幽鬼を足し合わせれば、一国を滅ぼす個体に仕上げることも可能だろう。

 王様の目的がわからない私ではなかった。

「私の製作した魔人形は不完全なものでしたが、それでも危険であると判断され、すぐに処分されてしまいました。ご要望通りの幽鬼を扱った魔人形は、誰の手であっても制御ができなくなることは目に見えています。私の実験が終了すると同時に、鍵本に記載されましたし……ええっと、鍵本とは使用を禁止された魔法が載せられている、三千と四十三の頁からなる本のことです。死者を出さないために禁忌とされた魔法群、現在約七百の魔法が対象となっています」

 王様は口を開けたまま私の話を聞いている。鍵本を知らないのかもしれない。

 それならばあれがどのようなものか想像もできないだろう。その場でしゃがみ指先で床に円を描くと、そこから発生する薄紫の煙が右手を覆った。私の動作に合わせて兵士たちは武器を構え直す。彼らの矛はすぐに収まることになるだろうが、また無関係な誰かが犠牲になっては困るので「特殊な形で保存されているから煙と一緒になってあらわれる」と簡単に説明する。中身の安全性を信用と結びつけるには、百聞は何とやら、実際に見て確かめてもらう他にない。

 十秒ほど待ち、手元に息を吹きかけると、途端に煙は消えて汚れた本が姿を見せた。濃い緑に青白い液体が滴るそれは、異臭を放ち不快感を煽る。高貴なお方には嫌悪を招く品であったらしく、王様は表情を曇らせた。

 罪な本は王の元へ向かう。ふわふわと自由気ままに部屋内を浮かんでいるようで、その実目的地はただ一点、王様の元である。途中でふらふらと寄り道し、もしかすると本が撃ち抜かれる様子を見届けなくてはいけないかと心配したが、誰も発砲することはなく、無事に到着した。

「そなた、この異様に汚らわしい書を余に読ませようとしているのか」

 王様は恐る恐るといった様子で鍵本を手に取った。パラパラとページをめくるが、読もうとはせずに宙に放り投げた。

 鍵本は十を越える言語を合わせた混成言語が用いられていて、そのどれもが古くに滅びた少数民族のものであるから、普通を逸していようがまさか読めはしないだろう。

「変わった文字だ。読ませる気があるとは思えないな。多国の言葉を身に付けているつもりであるが、一文字たりとも見た覚えがない。魔法に長ける者同士に共通する文字なのかな。はて、しかしそれでは妙だな。注意喚起を目的とした一冊なのだろうが、こうにも捻られた文字が使われていては、大衆はこの本をガラクタとするだろう」

「その文字はヨルンと呼ばれるものです。ヨルン文字が用いられている鍵本には、魔法を使用する方法までが記されているのですが、一般に流通するものは方法が省かれ、ヨルンはその国に合った言語に訳されています……との説明は必要がありませんね。魔人形の作成手順は難しくありませんから、国の魔法使いの誰かは簡単にしてのけることでしょう。私などがわざわざ触れるべき問題ではありません」

 禁忌の魔法が複雑化され、普通の人間には方法すらわからないようにされているということを知っておいてもらいたかった。危険だと。皆が恐れていると。

「話は変わりますが、王様が目的とする幽鬼は国境の彼らでしょうか」

 一石二鳥を掲げて私を動かそうとした以上、力の強い幽鬼の中でも、人々に危険をもたらす幽鬼だろう。それらは国の境を住む場所として人を食べる。私の力は通用しない。無謀に挑んだところで初めから相手方にねじ伏せられる運命にあるのだ。

 間抜けな顔で依頼を受け入れたが、一人の力で達為するなど夢のまた夢。虚言や妄言とほぼ同義である。それを王様はどこまで見越していたのか、調子の変わらない声で笑ってみせた。しかし解決策として優秀なものを提示してくれるわけではないようで、得意気に「訓練した兵の半分をくれてやる。半分の兵のすべてをくれてやる」とだけ言った。

「そなたが枷をかけろ。手綱を引け。指揮を執れ。兵士の声に耳を貸す必要はない」

 すべてとは、すべてである。

 手中から漏れる情報など一つもなく、頭頂から爪の先、内心から外向きに繕った感情、人格や人権も、多難も多幸も、苦痛も快感も含めて例外のないすべて。逆らう人間が一人もいないとは考えられないので、皆が両の掌をこちらに向けて忠義を誓うわけではないだろうが、極端な話、忠義の有無すら私の意思のままというわけだ。便利な生き人形。便利な便利な肉の塊。兵士を自由に動かしたところで、目的の幽鬼の一匹にすら手が届かない無惨な結果しか想像できないので実際に動かしはしないけれど、自由になれる人間が、自由にさせてあげられる人間が多いに越したことはないとも言える。兵士にとっては喜ばしいことだろう。

 皆、自由でありたいはずだ。

「……兎窓環、六体の幽鬼を得て、再びここに参じることを誓います」

「内密な話だ。追っての連絡は待つな」

 その後もいくつか大切な話をしたが、一人きりで幽鬼と対峙するには必要がなかった。話が切れたところで適当な礼をし、背を向ける。扉の方へ歩いていくと、何人かの兵士が重い扉を押し開けて道を示してくれた。彼らの何人かが私に動かされる運命にあるのかもしれない。憎みとも懇願とも取れない視線が、私の内を刺した。

 去り際に「どうか末永くごじあいください」とだけ言い残し、目的なく漂っていた鍵本を引き寄せ、帰路につく。

 胸の奥の方が痛かった。


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