第98話 影響を受けやすくて困る
僕はすぐに影響を受けます。現実の人物の在り方よりも心情的なことですね。特に音楽、漫画、科学書籍、エッセイ、アニメなどありとあらゆるメディアでよく震えます。映画やドラマも良いのですが正直あんまり見ません。所要時間的に見るのに気合がいるから敬遠してしまいます。勿論、好きな映画はいっぱいありますけどね。最近は機内で見た「Green Book」がガチっとハマりました。
黒人ピアニストShirleyが白人ドライバーTonyと、差別意識が残るアメリカ南部を公演して回る実話です。音楽も良いですし、頑固で礼儀に煩いShirleyと粗暴なTonyの掛け合いが面白い。そして、真に迫るこの台詞。
――So if I’m not black enough, and if I’m not white enough, and if I’m not man enough, then tell me Tony, what am I?!
話がズレましたね。さて、影響を受けやすい人は容易く考えが染められます。恋愛作を読んで恋愛をしたくなったり、社会不適合者の奮起を見て発奮したり、興味深い学説を手放しに受け入れたり……。内容は多岐に渡りますが、数日は読後ロスというのか、感動の残響が宿り、感傷を引き摺り、それに伴って行動し、何かが変わったような錯覚に陥ります。
ただ、困ったのは一貫性がないこと。影響を受けるのは良いのですが、その後、他の影響も受けるので目移りが激しい。良いなと感じると、以前の行動と辻褄が合わなくとも実行に移します。短絡的で衝動的な欲望に抗えないんですよね。馬鹿の一つ覚えのように感動したことをトレースしようとします。最たるものが大学生の最後の夏休みでした。
以前、『信じれば夢は叶うなんて馬鹿の言うことだ』と書きました(※2)が、そこで言及したように、僕は羽海野チカさんのファンです。「ハチミツとクローバー」もしきりに読んでいました。大学生真っ只中、大学が舞台の恋愛漫画を読む。自殺的ですね。
漫画世界の虹色の生活を眺めると憧れは無駄に増幅し、バラ色の大学生活とは程遠い現実を際立たせ、その自傷的な行為に一種の甘美さえ感じていました。この物語では主人公の竹本くんが好きです。これほど回りの人間より才能に欠けていて、ヒロインとも結ばれない恋愛漫画の主人公を知りません。でも、恋愛模様の中でほんのり光っているんですよ。
そりゃもう、多感な大学生は行動に移しちゃうんです。恋愛漫画なんて読んだらいてもたってもいられませんでした。皆さんもありますよね、そんな若き日の
という訳で僕はすぐに思い立ち、4回生の夏休みにある計画を立てました。
関西から北海道の宗谷岬まで自転車で行こう――と。
※1 Green Bookトレーラー 英語版の方がオチが笑えるので好きです。
公式トレーラー| https://www.youtube.com/watch?v=uC-_Gon2p9M
日本版 | https://www.youtube.com/watch?v=awUd_khNEcc
※2 信じるだけで夢が叶ったら訳無いですよね。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054888425664/episodes/1177354054888793400
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