第99話 滅私奉公は物語を殺す
「この夏は何するん?」
「北海道行こうかなーって思ってる」
「えー、ええやん。いつ?」
「8月10日から5週間」
「は? 5週間?」
「うん、自転車で行ってくる」
「え?? 自転車? なんで?」
「
「???」
こんな会話が夏休み前に繰り返されました。見事に会話がかみ合っていません。どうしてでしょうか。みんな
皆さんはハチミツとクローバーは読んだことはあるでしょうか? あれば誰がお気に入りですか?
分不相応な年上への片思いなら真山。叶わない同級生への片思いなら山田。この世にいなくなった人に縋ってしまうなら理花さん。己の才能に向けられるプレッシャーに悩むならはぐ。己の才能によって孤独を感じるなら森田さん。才能の不在と恨みにとりつかれるなら
細かい内容はどうでも良いのですが、様々なキャラがいて誰かに感情移入出来るというのは大切だと思います。立場が違って当たり前。でも、どの立場の人もどこかに共感できる。それが良い作品が持っている要素なのではないかと思います。
ただ主人公を立たせるだけの噛ませばかりでは共感もへったくれもありません。作品を作る際には人物を独立させること。主人公のためのモブではなく、
ともかく、僕はハチクロを通して感性の違いを実感し、竹本君に入れ込む自己を認識し、不完全とはいえ人物造形への見解を醸造しました。そして、フィクション上で主人公以外の人物を重視することは、逆説的に「現実の自己の存在軽視へ異議を立てる」裏付けになると気付いたのです。
僕は何度も自己中だと高唱してきましたが、その考えが書く度に強化されるようです。誰かのための自分であってはいけない。誰かの為だけの存在が興を削ぐのなら、滅私奉公は物語を殺すのです。からっぽだからせめて誰かの為にあるべきだ、なんて馬鹿げている。
全ては自己満足のために。
これが北海道の旅で学び、ここで伝えたい、唯一つの教えです。百話になるまで大切に取っておきました。少し長く汚い話になりますが、我慢してお付き合い頂けると嬉しいです。汚い話になるのはわざとではありません。不可抗力であることを先に弁明しておきます。
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