第90話 モテキ到来


 街コンやアプリでは凡退を続けていますが、最近モテキがやって参りました。そして、何となくモテる年代が分かってきました。


 声を大にして言いましょう。

 今、最もアツい年代は3~5歳です。


 え、大丈夫だよね? この時点でBanされたりしないよね? まぁ、もう少し聞いてから判断してくださいな。その上でBanされるのであれば、ここに令和のモテキ悶着が勃発しますから。運営さんが諦めるまで僕は僕のモテキを綴り続けますから。


 話を戻しますが、この年代にモテるのははっきりした理由があります。ずばり「一番遊んでくれるから」。これに尽きます。お相手は駐在している先輩方のお子さん達。一回り年上の先輩が多いのですが、皆さんご家族で駐在されています。そのため、ホームパーティの際は、お子さん達も一堂に会するのですよね。


 僕は料理のお手伝いも出来ず、広いお家の片隅でその身をブルブルと震わせながら、ビールで申し訳なさを胃に流し込んでいます。すると当然、遊びたい盛りの子供たちは余った僕を見つけ、「お兄ちゃん遊んで!」となる訳ですね。「誘われたら断らない」が信条(※1)なのでいそいそと遊び部屋に行きますよ。


「今日はお買い物に出かけます!」

「行きましょう」

「見てー、ネジネジ」

「おー、○○ちゃんが組み立てたの? 凄い」

「レモンも買います」

「レモン」

「みてー、バイキンマン!」

「バイキンマンだねー」

「これは買いません」

「にんじんは買わないんだ」

「メロン! ねー、この前ね! メロン食べたの!!」

「美味しかった?」

「メロンね、とっても甘くて好き!!」

「メロン甘くて美味しいよね、僕も好き」


 …………。


 下手か!! もう少し引き出せよ!! オウムでももう少し多彩な言葉を使いこなすわ!! よくこれでいそいそと遊びを引き受けたな、こいつ。


 お父さんがやって来てりかちゃん人形を持ちながら「あれー、私のクツしらない?(裏声)」とごっこ遊びを始めた時は「レベルたけぇ」と感心しました。そのくらい僕は子供と遊ぶのが苦手です。物心つく前だとどう接して良いのか分からずに怖がられます。


 しかし、僕には物心ついた子供を魅了する武器――フィジカルがあります。技術は無いが、体力でカバー。三輪車や手押し車をひたすら押し続け、かくれんぼを繰り返し、人間回転ブランコになり、小さい滑り台の上に運ぶ機械と化す。お洒落な対応は碌に出来ませんが、ひたすら遊びに付き合います。まさにフィジカル勝負ですね。ご両親が心配されるくらい付き合いますとも。それだけで喜んでくれるんですよ。


 結果、女の子3人と男の子1人に腕を引っ張られながら「次は私(僕)!」とせがまれるようになりました。両手どころか四肢に花と若草。こんなにモテたのは人生初です。


 喋らなくて良いんだ!

 

 身体を動かすだけでモテるこの年代に少なからず感動しました。子供の手ってこんなに温かいんですね。小さい手がぎゅっと僕の手を握るだけで、なんだか不思議とぽかぽかしてくることを知りました。モテることは良いことです。


 今、待ちに待ったモテキが到来しているのです。Whooooooooフーーーーー!! 


 


 ん? その上の年代はどうなのかって?


 そうですね。じゃあ小学5年生の女の子の例を挙げますか。大学生の時、バイトで小学生から高校生まで勉強を教えていました。その生徒の一人です。


 授業中、僕は女の子が解いた問題を見直していました。


 年頃の女の子は躊躇なくデリケートな質問を飛ばします。

「ねぇ、先生って彼女とかいるのー?」

 大人のズルさを発揮しながら正直に答えましたよ。

いないよ」 (今迄もいません)

 

 それを聞いた女の子は笑顔でこう言いました。

「だよねー、だと思った!」


 あの時の無邪気な笑顔が忘れられません。






※1 「誘われたら断らない」が信条

第62回 軽い男 - 誘われたらすぐ飛びますよ

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888425664/episodes/1177354054889251026


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