第89話 素材系男子の主張
合コンとか紹介ってなんだかワクワクしますよね。どんな人が来るのかな、どんな雰囲気になるのかな。今日はちょっと良いスーツに、がっちりジェルでセットして来ちゃいました。みたいな祭り前の感覚が好きです。
人見知りでコミュニケーションは苦手なくせに、未知の場に飛び込みたくなる。という何とも面倒な人種なので取り扱い注意になるのは理解しています。多くは望みません。
ただ、これだけは言わせて欲しい。合コン、特に社会人の合コンでは、職業は全員さらっと流して欲しいんです。
僕は文系出身なので、そりゃ金融マンやら商社マンやら、ネームバリューも年収も敵わない友人がごろごろいる訳ですよ。そしていつも最初に食らうのが「お仕事は何されているんですか?」攻撃。
もうほんと止めて。もちろん女性にとって男性の甲斐性は大切でしょうけど、
友達は言いますよ。
「○○銀行の法人営業をしています」
「○○商事に勤めています」
「○○(超有名BtoCメーカー)で働いています」
有名な企業だったら評価爆上がりで、玉の輿に乗ろうと目を光らせるのも道理です。良い物件なら嬉しいですもんね。
「すごいっ、すごい!!」
「うそー、じゃあ海外とか飛び回っているんですか? 良いなー!」
「あの商品のファンなんです! CMの女優さんも可愛いですよね!」
もちろん、こんな反応されたら男も嬉しいってもんです。
で、その次の僕はこう。
「○○(無名BtoBメーカー)というメーカーで働いています」
「へー、そうなんですね? ……営業さんですか?」
「いえ、○○部門なんです」
「へー……○○……。……な、何を作っているんですか?」
「○○です、色々なものに使われている素材なんですよ」
「なんか難しそう。わかんない」
ここでいつも試合終了です。明らかに困惑の表情を浮かべられるとそこで心が折れます。またコールドゲームですよ。いや、コールドゲームならまだいいですけど、レフェリーがいないリングの上で立つことも出来ないまま、ただボコボコにされる時があるんです。
具体的には書きませんが、いかんせん地味です。そして、説明をしなければいけない時点で負けたようなものです。良く分からないものに対して、諸手を上げて称賛し話を広げるなんて、誰にとっても簡単なことじゃないですから。
同業だと結構伝わることがあります。
「え、お前NERVなの?! 可愛い外人の女の子たちとイチャコラしてるってマジ? ちなみに、俺
「まじかよ! お前ZEELE? うちの口下手おじさんと繋がりあるらしいじゃん!!」
みたいに盛り上がることがあるんですけどね。(例え下手)
だからね、分かりにくい無名素材系男子の主張としてはですね。「リアクションが取りにくいのは分かるから、いっそ全員流して欲しい」ということなんですよ。
「別の話題で盛り上がればいいだけじゃないの。何この意気地なし。ザラキーマ」
というご指摘(呪詛?)は甘んじて受け入れましょう。その通りです。ただ最初にあまりにも反応が違うと、出鼻から鼻血が止まらずに、どうしようもなくなることもあると言うことです。そんな負け犬の遠吠えを少しでも聞いて欲しいという、しがない願望です。
だから、僕は職業を聞いても出来るだけ平穏に波は立てないように頑張っています。CAだろうが、モデルだろうが、女優だろうが「そうなんですね」で流したい。全員一緒の職業なら良いですけど、反応の差があると女性も尻込みしちゃうと思うので。
あ、でも「ひよこ鑑定士です」とか「おとなのおもちゃ屋です」とか言われると食いついてしまうかも。「南極でペンギン観察しています」とか「プロの添い寝屋です」とかも抗いがたいですね。うーむ、言うは易く行うは難しですか。合コンを楽しむにはもっと自分を磨かなければ。
「へー、ヘビの猛毒採集しているんだー。うちの近くにも毒蛇でるけど、もう採集した?」
くらいのテンションでこなせるようになりたいものですね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます