【詩】憂惷

あの空の赤味がかった淡い鼠いろ

ぼやけた絵画のような不思議な明かり

暗闇に打ち負かされた光の軍勢

うす紅のヘブライ語

おまえに言いたいことがある


時として

人を自殺に駆り立てるのは

飢えでも裏切りでも嫉妬でもなく

至高の料理を

心ゆくまで味わい尽くし

満腹になるまでたいらげたあと

外に出てふりかえるとき

そういう瞬間の

何気ない怠惰だと思わないか


白い待合室の茫漠たる虚無と

共産党選挙カーの破廉恥なオペラ

信じるがゆえに救われない人々

谺するざらついた悪霊の呼び声


絶望は

いつも

西にある

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る