【詩】ことばのシロアリ

時を噛み潰すのもいいけどね

君、ちょっとはモールス信号のセキュリティ問題についても

考えてみては

どうだろうか

あれではまったくだめだろう

たとえば私が君に向かって

こんなことばを投げかけようか


・-・・・ -・・- -・--- ・-・・ ・・ ・- ・・-・ -・・・ ・・ ・-・-・ ・・-・- -・-・ ・・・- ・- 


ごらん

すきまが多すぎる

これではいまに「怪盗」があらわれて

大事な宝をぬすんでいってしまうよ

壁にするなど言語道断

柱にするなら欠陥住宅

屋根にするにも雨漏りがひどい

こんなものでは

とてもじゃないが

使いものにはならないね

これはまさしく

ことばのシロアリのしわざだよ

ことばのシロアリは

用語置き場に棲みついて

気づかないうちにこっそりと

古い秘密を

虫食いにしてしまうのさ

意味をなくしたことばたちは

黙り込むしかできないが

それでもなにかを伝えようと

あるいは手を振ってみせるかもしれない

なんともあわれな姿だが

記号の死骸というものは

えてしてそういうものなのだ

ちなみにさっき私は君に

「おまえがいちばんみにくい」

と話しかけたのだけれども

こういうことならむしろ

はっきりと伝えたほうがいいので

やはりモールス信号はいらないと思わないかね、君

まあしかし

そこまで君がこだわるのなら

こちらもたったひとつだけ

とっておきを教えてあげよう

それは


---- ---- ・-・-


というのだが

あきらかに さっきのものよりいくらか丈夫だ

お気に召してくれただろうか

むろん穴はいくつかあるが

これならなんとかふたりで塞げるだろう

なんといっても会話というのは相手がいてこそだからね

なんでも 人の数だけ---- ---- ・-・-はあるというが

もしみんなの---- ---- ・-・-をつなげたら

いったいなにが起こるだろうか

ちょっとやってみるかい


---- ---- ・-・- ---- ---- ・-・- ---- ---- ・-・- ---- ---- ・-・- ---- ---- ・-・- ---- ---- ・-・- ---- ---- ・-・- ---- ---- ・-・-


うん まあ

気休めにはなったね

それじゃあまた

世界中の事案を鑑定する

仕事に戻るとしようかね

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