第6話 表サイド 金色の精霊Ⅰ
四月十七日、月曜日午前七時。
「お兄ちゃん。ホントいい加減起きて」
「ぐはっ」
そんな声と共に腹部に強烈な衝撃を受け起こされた青年―――
一瞬、何のことかわからず辺りを見回す。
そこはいつも道理の自分の部屋であり、ベットの横にはニーソックスに包まれた片足を西也の腹部に思いっきり乗せている学校の制服姿の妹―――
肩口くらいで切り揃えられた軽くウェーブした髪、可愛い系の整った顔立ち。
そんな自慢の妹が冷静な表情で西也を見下ろしていた。
「なあ、夕夏よ。俺の可愛い妹よ」
「何ですか、お兄ちゃん」
「まず足をどけていただけないでしょうか?」
「いいんですか、私みたいな女子高生に踏まれるなんて中々ない事ですよ」
「俺はそんな特殊性癖は持ってない」
そう言われてようやく足を退ける夕夏。
「あの~夕夏さん。何をそんなにご立腹なのか教えていただけるといいんですが」
基本的に冷静な態度の夕夏だが、こうも冷たく扱うときは何か不満があり怒っている時であり、そのことに西也も気が付いていた。
伊達に夕夏が生まれてから十五年を過ごしてきたわけではない。
夕夏は「はあ」と短く溜息をついた。
「四回目」
「えっ?」
「だからこれで起こすの四回目」
そう言われて西也は慌てて記憶を呼び覚ました。
余りはっきりした記憶ではないが確かに何度か起こされた記憶がある。しかも「あと三分」とか三回とも言っていた記憶もだ。
寝起きの悪い西也は夕夏に目覚ましの依頼をいつもしていたのだ。
「あー・・・・すまない」
「はあ、もういいよ。朝ご飯もう準備できてるから早くリビングに来てくださいね」
「了解」
夕夏は部屋のドアに手をかけて出ようとした時、いったん止まってくるりと顔だけ振り向いた。
「あと、次寝たら刺しますよ」
「何をッ!?」
西也の質問には答えずそのまま部屋を出て行ってしまった。
夕夏のモーニングコール(?)でしっかりと目が覚めた西也は起き上がり、適当に寝癖を手で押さえながら部屋を出て、階段を下りてリビングに入る。
リビングの真ん中に置かれた木製のテーブルには二人分の朝食が並べられていた。
夕夏は台所でコーヒーを入れておりその様子がカウンターテーブルを挟んで見えた。
テレビもついており、いつも通りの朝のニュース番組が流れている。
西也が席に着くとコーヒーカップを運んできた夕夏のも席に着く。
「そういえば、母さんと父さんは?」
「暫く仕事で帰れないって」
「そうか」
両親二人そろって大手の企業に勤めているため、度々こうして家を空けることがあった。
「今日未明、東京郊外の廃工場にて新たな被害者が発見されました――――――」
西也たちが朝食を食べているといつもはBGMくらいの役割しか果たさないニュースの内容に気になるものがあった。
その内容は、今起こっている正体不明の殺人事件の四人目の被害者が発見されたというものだった。
画面にはある程度ブルーシートに隠されているが滅茶苦茶に破壊された工場の様子が映し出された。
殆どが瓦礫の山と化し地面や柱には鋭く深い傷跡が刻みこまれている。
一般人から見ても異常な破壊痕。
「最近物騒だな、夕夏も気をつけろよ」
「了解。お兄ちゃんもね」
朝食が終わった後西也は支度をし、夕夏と共に学校に向かった。
死神は世界を壊さない 黒幕 @mazinsan
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