第5話 裏サイド 死神Ⅴ

グリムリーパーもとい黒都が家に帰ってきた頃には深夜二時を回っていた。

変装のためのマントなどの身に着けていたものは『管理者』の能力の応用で作り出した物なので自由に作成ができ既に消していた。


ポケットから鍵を取り出し玄関を開けた。

目の前にはリビングまで廊下が続いている。左側の手前からトイレ、千咲の部屋があり右側は風呂場があり少し行った後にキッチンが一緒になってるダイニングが一緒になった部屋がスライドドア一枚隔ててある。

黒都の部屋はリビングに入ってすぐ左側にある。


自分の部屋に向かおうとしてふと気が付く、ダイニングから明かりが少し漏れていた。


気になりダイニングのスライドドアを開けるとダイニングテーブルに伏して眠っているパジャマ姿の千咲がいた。

千咲の方には毛布がかかっており、静かな呼吸音と共に上下している。


「はあ、先に寝てろっていったのに」


買い物から帰ってきてすぐに千咲からの話を聞きいて黒都はすぐに、現場を調べに言っていたのだ。

元々黒都自身も怪しいと目星は付けていたためすぐに行動に移し調べ始めた。


かなり時間が掛かると予想できたため千咲には予め先に寝ておくように言っていた。


「ん?んん・・・」


気配に気がついたのか目を擦りながら起きた。


「あ、お帰りなさい」

「あのな千咲さん?俺先に寝てていいって言っただろ」

「ええ、聞いていたわ。でも私が待っていたかっただけだから」

「それは自分が協力者だから俺が行動しているのに自分は何もしていない、だからせめて起きていよう。とかいう理由は含まれてないよな」

「ッ!!それは・・・・」


千咲は顔を逸らしてしまう。


(予想どおりか・・・・)


軽く溜息をつきいた。


「別に俺はお前を手駒にするために協力者にしたわけじゃあない」


その言葉を受け千咲は更に黙り込んでしまう。

千咲が黒都が出会ったのはとある精霊が絡んだ事件だ。千咲はその事件の被害者だった。

その時から恩を感じてからか千咲は何かと黒都の役に立とうとする。

心意気自体は嬉しいのだが黒都自身それに縛られて欲しくないとも思っている。


黙っていた千咲だが口を開いた。


「・・・・・それでも、私にはあなたに返しきれない恩があるの」


膝の上で拳を握る千咲。

その姿を見てもう一つ溜息をつき気恥ずかしそうに頭をかいた。


「まあ、お前の好意には素直に感謝しておくよ。ありがとな、あとただいま」


千咲は顔を上げ驚いたというように目を見開いていた。

その視線に照れくさくなりつい目線を逸らしてしまう。


「この話は終わりだ」

「そう、わかったわ」


余り表情は動いてないがどこか嬉しそうな千咲。そんな微妙な空気に耐えきれなくなり話の話題を変えた。


「結論を先に言えば、だった」

「それじゃあ」

「ああ、精霊関連だな。それにわざわざ新しい証拠まで見つかった」

「新しい証拠?」

「四人目の被害者だ。辺り一帯瓦礫の山にしながら上半身が吹っ飛んだ死体を見つけた」


三人目の現場を見ていた時、ズシンと重い音が響いてすぐその場所に向かうと先程見た光景が広がっていた。

千咲は驚きを隠せないようだった。黒都はそのまま話を進める。


「精霊自体がやらかしたのか、それとも『例外』つまり特異能力者とくいのうりょくしゃがしでかしたのかはまだ判別がつかないがな」


特異能力者――――精霊が存在する事によって発生する二次被害と言えるものだ。


元々精霊と言う存在がイレギュラーなのである。


精霊は本来なのだ。

精霊の詳しい存在理由は世界のシステムの運営・管理を任された『管理者』といえどわかってはいないが、精霊は元々この世界とは異なる世界に存在する謎の生命体であり、常軌を逸した異能を有している。


ただでさえ世界にとっては異常事態であり、その上精霊がこちらの世界に現れると『本来存在するはずもないものが存在する』と事により世界に膨大な負荷が掛かり歪みが発生する。

本来ならば世界にとっての修復能力と言える修正がかかり、そのような存在は元の世界に戻されるか、存在性が崩壊し消滅するのだが精霊はその修正力に対して抗えてしまう。

そのため精霊が存在する限り世界は歪みを抱えてしまう。その世界の歪みによって人間が持つはずのない異能を持つ人間が特異能力者と呼ばれるものだ。


「どっちがやったかは今後調べていくしかないな」

「そう、私も調べてみるわ」

「だからな、俺は――――」


そう言いかけた時、千咲の言葉によって遮られた。


「お願い。手伝わせて、私もあなたの役に立ちたいの。協力者だからじゃない私自身の意思よ」


固い意志を宿した眼差しだった。

例えここで駄目だと言っても何かしら行動するだろう。それに千咲の好意をあまり無下にするのも心苦しかった。だからと言って危険に晒すわけにもいかない。


「わかった、ただし自身の安全を第一にしろ。相談もせず事に突っ込まないことが条件だ」

「ええ、わかったわ」


そこで話は終わり黒都と千咲は部屋に戻っていった。

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