未定 2

 少年が生まれ育った町で起った災害は人々の命を奪った。


 天秤に乗せられた命は、素性、能力、地位、様々な要素から優劣を決められた。

 犠牲と呼ばれる命は、優先すべき命を輝かせた。犠牲を無駄にしない為に生きよう……と。


 社会的な価値が高い命を優先して救う事は間違いではないが、後回しにされた命を大切に思う者は、差別的な扱いに不満を抱きうる。区別と差別の境界は難しい。

 価値で物差しをはかる事は当たり前、価値は何かを比較する時に使われるから。

 社会は価値を重んじる。価値は優劣を決め区別を促す。促され区別した末に犠牲は生まれる。

 正しき保証が有れば区別と成り、保証なき区別は差別になる。


 身近で区別された命を見て、理不尽に苦しんだ少年は区別を嫌った。

 正当性で守られた命と正当性で定義された犠牲を受け入れがたい。


 区別する人々に不満を抱きながらも区別する自分が居る。

 貴族は地位に守られ……神官は女神様に守られ……庶民は自分で身を守る……。

 社会の権力や権威から守られる人々は自分と異なり、優遇される事に嫉妬した。


 人々を見守る女神は現れず神官に代行させている。

 女神を信仰する人々は、女神に感謝しているが、人々を救う神官より女神へ感謝する事が不思議だった。

 神官は女神に仕え善行が当たり前で感謝される時も女神が一緒。

 女神に感謝する神官は人々へ、女神様が居るから利益に囚われず万人を救う機会が与えられると説いている。

 女神の存在は見えずとも、神官を通して女神を見ている人々は、神官を語る夢物語に囚われる。


 全ての人々が女神を妄信してはいないが、希望を求めて縋る事が間違いとは言い切れない所。女神の教えは神官を通じて広まっている。厄が有ると女神の名は広まりやすい。


 大切な家族が、万人へ救いの手を伸ばすと言いながらも、救い難い命を理由に諦められて、神官を嘘つきと言えたが、間違っていない神官を責める自分は悪者に成ってしまう。

 期待し裏切られた不満は行き場を失い、命が失われる事を受け入れきれず苦しい気持ちを抱いた時に、夢物語に登場する女神へ縋った。

 真剣な気持ちは無く、嘘つきと思いたい神官へ対する八つ当たりを神官の長である女神に当たっただけだったが、文句が切っ掛けで神官に指名された少年は神官の生活を送る中で、抱き続ける不満を解消する為に、諦めない自分で有ろうと決意した。


 家族を失った少年は生きる力を得るため神官に成った。


 命を天秤に乗せぬよう意識して、区別を避けようと思っていても、社会や人には様々な違いが有り、全てが等しくない事から、個性を尊重する事も必要で、全てを等しく扱う事は出来ないが、命や心の重みは等しく扱う事は出来ると夢を見続けるは何時までも夢を捨てなかった。




色々と

 全ては救えない前提を持つ者には、見捨てる覚悟を持った強者が存在するが、Zは弱さを捨てられず、弱さを捨てる必要がない別の強さを欲した。

 障害に阻まれ夢を追い続けるか迷ったZは、女神から正しいと思うなら貫いても良いと背中を押された。

 Zは身内が区別され見捨てられた事が許容できず、見捨てない価値観を周囲から否定されていたが、明確な肯定はしないが否定もしない女神に救われた。




色々と

 女神様に一方的な恋心を抱き続けたZは恋の駆け引きが未経験。

 女神様を優先する都合上、恋を不都合と捉えている神官は、積極的な恋をする事は無い(能動的はあり得る)。Zは女性へ優しく接しているが自分も相手も恋を前提とした駆け引きは基本的に存在しなかった。

 Zは女性と深く交流した経験が無く、浅い関係から女性を理解しているとは言い難い。

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来世で恋を ネミ @nemirura

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