クソみたいな小説
「はあ~……。今日も
「幼馴染みに対してその言いぐさは酷いんじゃない?」
「げっ、いたのか」
「『げっ』じゃないわよ! 好きな人にそんな風に言われる気持ち考えたことある?」
「
「……もう知らない!」
「あっ、おい! トラックが!!」
「へ?」
「嘘……だろ…………。う、うわあああああああああああああああああああああああああ」
あまりにも唐突な出来事に、感情が追い付かなくて、なにも考えられなくて、涙が止めどなく溢れ続けた。泣いて、泣いて、ようやく涙が止まった頃、気がつくと
「よく来てくれた、異世界の勇者よ。どうかこの国を、この世界を救ってはくれないだろうか」
「
「私からもお願いします」
そう言って玉座の陰から現れたのは、ドレスで着飾った
「幼馴染み!? お前、幼馴染みか!?」
彼女が生きていたという事実に、驚きと喜びのあまり、彼女の下へと駆け寄って思いきり抱き締めた。
「良かった、無事で良かった! もう会えないかと思ってたぞ、心配かけさせやがって!! もう絶対に離さないからな!!」
「
近くにいた従者から無理やりに引きはがされたことで、幾分か冷静になった。
「どなたか存じ上げませんが、別の方と勘違いされているのではないでしょうか。私は
「そうだな、この国を救ってくれた暁には、娘をお前にやろうではないか」
「ちょっと、お父様!
「救うっつっても、何をすればいいんだ?」
「実はこの世界は、
「なるほど、なら魔王を倒せば
「事情は分からぬが、どうやらやる気になってくれたようだな。では、勇者の世話は
「王国騎士団団長だ。よろしく頼む。まずは
団長の指示通りにステータスプレートに触れると、ぼんやりとステータスが浮かび上がった。
ステータス
団長は何やら呟くと、国王に向き直り、言い放つ。
「王よ、彼に関しては全て私に一任下さい。必ずや立派な勇者に育て上げて見せましょう」
「うむ、任せたぞ。勇者よ、精一杯励むが良い」
「はい!」
こうして俺は、世界の危機に立ち向かうために、団長の下で日夜修行に明け暮れ、
そんな、長きに渡る旅も、ついに終わりに差し掛かろうとしていた。
「この扉の先に、魔王が……」
「また『罠でしたー』なんてのはもうゴメンだぜ」
「こんな濃密な瘴気は味わったことが無い……。間違いなく魔王はこの先にいる」
「そうと分かれば、さっさと突入してちゃちゃっと倒しちゃおうよ!」
「そうだな。皆、これが最後の戦いだ! 気を引き締めていくぞ!」
仲間たちが頷いたのを見て、扉を押し開ける。部屋から溢れ出してくる瘴気の量に、思わず咳き込んでしまいそうになるのをぐっと堪えつつ中に入ると、禍々しいオーラを
「よく来たな、勇者よ」
「おん……な……?」
「魔の頂点に立つ者が女とは想定外だったか? 人類の長たる勇者でさえこの有様とは、やはり人間は劣等種だな。話にならない。無駄な偏見に囚われて想像力が欠如している。世界を次の段階へ進める為にも、人間を絶滅させることは不可欠だな。評議会を通さずとも、この有様を見れば頭の固い元老院の連中も理解してくれるだろう」
「
「
「俺たちは生きて元の世界に帰るんだ!
放たれた技は、確実に魔王に直撃した。強力な奥義の余波が、魔王の間の壁を跡形も無く消し去る。しかし、
「……この程度か。いくら劣等種とは言え、傷一つ付けられないとは期待外れも甚だしいな」
「なっ、無傷!?」
「もういい。目障りだ、消えろ」
その瞬間、魔王を中心に莫大な質量を持つ波状の何かが発生し、空高く吹き飛ばされ、成す術も無く地面に叩きつけられた。衝撃で意識が朦朧とする。咳き込むと同時に夥しい量の血が喉から溢れてくる。
「ほう、まだ立ち上がるか、劣等種」
「……当たり、前だろ」
この世界に来る前の自分だったら。仲間と出会う前の自分だったら。ここで諦めていただろう。しかし、この世界に来て人と出会い、仲間と出会い、多くの願いや思いを託されてここまで来たのだ。
「背負ってるものが、違うんだよ。もう俺一人の命じゃねえんだ、こんなところで負けるわけにはいかない」
「面白い! ならば来い勇者! 貴様が立ち上がり続ける限り、何度でも叩き潰してくれようではないか!」
「
●
こんな
実験ルビ小説 西藤有染 @Argentina_saito
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