製家族

安良巻祐介

 

 虎斑とらふ模様のお菓子をお土産に帰宅した大叔父が、玄関先で真っ黒い土の山に変わってしまった晩、離れで振り子式の鳥の注ぎ水を飲み始める祖母と、家の入り口をふさいだ土塊をスコップで機械のように掘り返し続ける祖父、模造の宝石を砕いたものを白い皿に盛って食卓で静止している父と母、それらがまるでずっと昔からそうだったかのように目の前に現れてきて、僕はカレンダーを凄い勢いでめくりながら、「あわあ あわあ あわあ あわあ…」と永遠に喉から出てきそうな声を、印象派の絵にも似た沢山の家族のかたちに向かって、投げかけ続けることしかできなかった。

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製家族 安良巻祐介 @aramaki88

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