第8話
球技大会は大盛況のうちに終了した。もちろん優勝は体育科が持っていったけど、うちのクラスは準優勝。みんな、千景くんのおかげじゃないかと思うほど、あの後の試合は大活躍だった。
「千景〜!もう、めっちゃかっこよかった!」
「本当女子キャーキャー言ってたよ!」
「ありがとう」
「そういえば、千景、途中いなかったのどこ行ってた?」
「あの時、お前いないからピンチ迎えてたんだぞ!」
「ごめんごめん。ずっと体育館にいたらしんどくなっちゃって。外の空気吸いに。」
「そうなんだ、言ってけよな〜」
「ごめんごめんっ」
千景くんたちの会話は聞こうとしなくても、もちろん聞こえてくる。やっぱりわざわざ保健室に来てくれたのかな…保健室での千景くんの顔や言葉が浮かんできて、顔が熱い。
「中川〜。呼んでるー」
「はいー」
入り口には見たことのない男の子が立っていた。…誰?ってなって夏子を見る。
「体育科の矢野だわ。バスケ部…告白?」
夏子がそんなこと言い出すもんだから、周りもちょっとだけ騒ついた。
「とりあえず行ってくる」
みんなの視線を浴びながら、矢野くんとやらの元へ向かう。
中庭まで移動した私たち。矢野くんはしっかりとした目で私を見ていた。
「突然ごめんな」
「大丈夫」
「俺、体育科の矢野春希です。中川さんのことずっと気になってて。
急に付き合ってなんて無理なのはわかってる。だから、友達から始めて俺でいいってなったら付き合ってほしい」
背が高くて、短髪で爽やか。誠実そうな雰囲気がすごく伝わってくる。
「って急に言われても困るよなー、ごめんなー」
手を顔に当てて、急に恥ずかしそうにする姿すら好感が持てる。
「い、いや困ってはないよ!ありがとう、告白というか、その、そう言うの初めてだから、なんて返していいかわからなくて。
友達からでよければ…お願いします」
「嬉しい!ありがとう!また、声かけるから!」
何度も頭を下げて、矢野くんは去っていった。すごく良い人なんだろう。ここに呼び出すのだって緊張するはずなのに、わたしを気にかけてくれた。その姿を見て、誰かわからないからって断るのもなんか違う気がした。
「果乃、どうだったの?」
少し興奮気味の夏子。
「友達になってって「それで?」
「…友達になった」
そっかー。やるなー、矢野!と、ニヤニヤする夏子越しに千景くんが見える。
友達っていうけど、矢野くんの友達と、千景くんの友達は違う。わたしは誰とどうなりたいんだろう?
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