第4話


結局、何も返事することができなかった。というか、タイミングがなく…


いや、話しかける勇気がなかったのか?


いざ、花山くんに声をかけるタイミングになると、誰かが先に話かけたり、夏子が来たりと「ねえ」ってたった2文字がなかなか言えず。


相手があの花山千景だからなのか、恐るべし花山千景。


心の中で言い訳かましつつ、今の時刻4時。



「どうしようかな」



夏子と別れて、少し考えてみる。




でも、せっかく手紙をくれたと言うことは何か用事があるんだよね、行かなきゃ失礼だよね。



そうして、また、あのまっすぐ伸びる道を左に曲がる私。


昨日よりずっと慣れたもんで。あの垣根の穴をカサカサ音を立てながら通ってみせたのだった。






カランカラン…





昨日と同じ静かで綺麗な店内。


「花山くん…あ、」


「ん?千景の知り合いかな?」



レジにはおじいさんが座っていた。


「えっと、あ、花山くんと同じクラスの中川です!」


「おお、そうか!千景のお友達か」


「えっと…」


友達って訳では…ないような


「おーーい千景!友達来たぞー!じいちゃんは行くから頼むぞー」


「…はーい」



部屋の奥の方からかすかに聞こえる花山くんの声。


「じゃあ、あとは任せた」


「は、はい」


肩にポンッと手をのせるとおじいさんは店を後にした。


ここで待っていたらいいのかな、なんかソワソワするな…




ドンドンドンドン…階段を降りる音が聞こえて


「ごめん!遅くなって」


「ううん、私も学校で返事ができなくてごめん」


「来てくれると思ってたからそれは大丈夫。」


それって、どういう意味…


「今日は大丈夫?」


「何が?」



「弟とか」



昨日言ったこと覚えててくれたのか、


「今日は大丈夫。親休みだと思うし」


「そっか。」


…。



「花山くんはどうしたの?」



本当にどうしたの、手紙なんかくれるしなんか色々。







「これ」


少しだけ間を置いた花山くんは。小さな包み紙を手渡した。



「何?これ、開けていい?」



「うん」





中身は



「これ…「あげる」




透き通るような、綺麗なガラス玉がついたヘアピンだった。



「え、こんなしてもらうようなことしてないよ!」



「でさ、」



「ええと、うん」













「…俺たち、友達にならない?」






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