アルコール(2)
飲み会は久しぶりだ。ここ(会社近くの飲み屋)に来るだけでそわそわしてしまう。たしか新人の頃に3回だけ行ったことがある。1回目は同期が吐き、2回目もおんなじやつが吐いた。3回目は吐きはしなかったもののからみ酒をする奴がいて僕が吐きそうだった。こんな思いしかしてこなかったので飲み会の印象は最悪だ。でもその最悪な飲み会に鮫島がいる。しかも僕の隣に!
「高木さん。高木さんは何飲みますか?」
「あ、みなさんと同じので。」
「ふふ、わかりました。頼んできますね。」
こんなに嬉しいことがあっていいのだろうか。憧れの人(に似ている人)に飲みたいものを聞かれ、微笑みながらオーダしてもらったのだ。しかし、油断してはならない。いくら似ているからといって誰にでも菌はいるものだし触れられたら早く除菌したいという気持ちは変わらない。触れないでくれ、でも隣にいてくれ!!
「高木さん一つ質問なんですけど綺麗好きなんですか?この前、机やその周りを一生懸命拭いてるの見ました。あと、いつもスーツからアルコールの匂いがします。」
ここはなんと答えるべきなのか、、、。正直に言ってしまったら気を使われて離れていってしまうかもしれない。
「そうですね。人並みには。」
やってしまった。嘘をついてしまった。でもここで「あ〜そうなんです。僕潔癖症なんですよね〜」というリスクの方がでかいと思ってしまったんだ。
「わ〜!やっぱり!高木さんがよければなんですけど、この後私の家に来ませんか?いきなりでごめんなさい。でもダメ、かな?」
、、、、?!今誘われたよね?僕に言ったよね?
「え!あっはい!行かさせてもらいます!」
勢いに任せてしまったが、これは行くしかないだろ。除菌はあとで死ぬほどすれば大丈夫。服はクリーニングに出して靴下は捨てれば大丈夫。あぁ彼女の部屋に上がれるなんて夢みたいだ。
「じゃあ終わったら少し待っててください。うふふ、楽しみです!では私は亀田課長のところに行って来ますね。」
僕は彼女の美しい立ち姿を見ながら興奮した気持ちを抑えるのに大変だった。
半径2メートル あおきなみ @kinami217
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