ライトノベル新人賞二次選考の壁の厚さについて
澤松那函(なはこ)
7年経っても超えられない壁『2次選考』
私が小説を本格的に書き始めたのは、2012年の1月頃でした。
どうして書き始めたのか経緯を詳しく語ると3万字ぐらい書ける自信があるので箇条書きしますと、
1.映画監督兼シナリオライター志望だったが、専門学校で自分の撮りたい作品が数十億円の予算が掛かる現実を知る。
2.日本の娯楽産業で自分の作りたい作品を表現するには、資本的な制約を考えるとアニメ・漫画・小説の3択しかなかった。
3.一切絵の描けない私には、小説しかなかった。
4.さらに作りたい作品を受け付けてくれる小説新人賞が、私の知る限りラノベ系の新人賞しかなかった。
真面目に文学を志す人からお叱りを受けそうな理由で小説を書き始めた不届き者です。
そしてラノベなら普通の文学賞よりも受賞しやすそうな失礼千万なイメージもありました。
この甘えたイメージに拍車をかけたのが初めて書いて新人賞に投稿したラノベです。
いま読み返してみるとひどい出来の作品なんですが、こいつが『1次選考を通過』してしまったのです。
最終的な結果としては2次選考落選でしたが、初めて書いた小説で1次選考を通過して、まだ若かった私はこう考えたのです。
「ラノベの新人賞って楽勝じゃね? 初めて書いた小説で1次選考突破出来んなら1~2年やれば受賞行けるっしょ!」
当時のウェーイしてる私に、現在の私は石を投げてやりたい。
お前が楽勝だと思ってた2次選考の壁、7年経っても破れてないぞ。
私の投稿歴は、7年で合計21回。
長編のみですが、使い回しも込みなので実際に書いた作品数は11作品。
1次選考の突破回数が6回。
間に20万字のカクヨム用小説を2本執筆している事を考えても、試行回数少なすぎだろという話なのですが……というか数えてたら予想外に少なくて悪い意味でビックリしました。
完成したけどあまりにつまんなくてお蔵入りにした小説が4本ありますが、それ込みで分量的には、年間文庫本3冊弱しか書いていない計算。やっぱり少ないですね。
一田和樹さんの自主企画に参加するためにこのエッセイを書き始めたのですが、自分の予想以上に自分が努力してない事を気付かされて恥ずかしい反面、自分の甘えに気付くいい機会になりました。
良い機会を提供してくださってありがとうございました!!
とほぼ自己完結出来てしまいそうですが、このままじゃあんまりにあんまりなので、もう少し続けてみようかと思います。
〇どうして2次選考を突破出来ないのか?
これに関しては「つまんないから」が結論な気がしますが、身も蓋もないのでもう少し自己分析。
ラノベ新人賞も各レーベル毎で行われていますが、自分と相性が良いと感じるレーベルの新人賞が作家志望の方、皆さんにあると思っています。
私の場合は、電撃文庫さんの電撃大賞が1次選考の突破率が高い傾向にあります。
逆に相性が悪いのがGA文庫さん。電撃大賞で1次選考通った作品の改稿版がことごとく1次落ちです。
GA文庫大賞は、1次落ちでも評価シートがもらえる利点があるのですが、自分の突破率が低いのと、唯一GA文庫大賞の2次選考を通った作品は、他の新人賞で箸にも棒にも引っかからなかったので、一昨年の後期を最後に投稿を止めました。
第24回電撃大賞に応募した際には、やはり二次選考落選だったのですが「ストーリーは、綺麗にまとまっているが捻りが足りない。何か飛び抜けるものがあれば刊行レベルの作品になる」と編集者の方のコメントを頂きました。
社交辞令なのは分かっているのですが、それでも「刊行レベル」という単語が出て来た事を嬉しく思いまして。
ええ、単純な人間です。
『飛び抜けるものがあれば』を自分に都合よく解釈してるんですから。
第25回電撃大賞には、自分なりに独自色マシマシにした作品を応募したのです。
結果的には、こちらも二次選考落選だったのですが、総合評価に関しては前回よりもむしろ下がってしまう始末。
「ゆったりとした雰囲気に独特な魅力がある」と2名の方から評価いただいたのですが「オチが暗すぎ」と「各章が駆け足」との指摘。
多分間を取っていくのが正解なんだろうけど、この匙加減が難しいです。
最近では「プロの作家になる」よりも「どこの新人賞でもいいから2次選考を突破する」が目的化しつつありまして、よくない傾向かなと。
とは思いつつ目に見える形での前進が欲しいと思ってしまいます。
○オリジナリティ・個性・作者のカラー。
私が自己分析をする上で避けて通れないのがこれだと自覚しています。
映画の専門学校に通って撮影技法と並行してシナリオ制作を学んでいた経験上、破綻のないストーリーは書けると思っています(思うだけならタダ)。
でも破綻のないストーリーは、魅力的なストーリーや個性的なストーリーとイコールではない。
私がラノベ新人賞に応募するようになって評価シートで毎度のように指摘されるのが、
「オリジナリティが足りない」
この一点です。
そしてこの一点が恐らく2次選考通過作と落選作を隔てる壁なんじゃないかと。
ではオリジナリティとは何ぞや?
どうやったらオリジナリティのあるストーリーを書けるのか?
私なりに考えて、辿り着いた結論が才能でした。
ストーリーを書く事は、誰にでも出来る。
破綻のないストーリーを書く事は、誰でも出来る。
でもオリジナリティは、才能がなければ書けない。
ここがプロの作家とアマチュア作家を隔てる壁なんじゃないかと。
オリジナリティというのは、斬新な作品を生み出す能力だけを差すわけではないと思います。
平凡な題材で王道的な話運びでも、人の目を掴んで離さない魅力的なストーリーを書けるというのもその作家のオリジナリティであると。
つまりオリジナリティが足りない=お前には才能がないという意味なのでは?
こんな簡単な事に気付くのに私は、7年の歳月を要しました。
なのに心のどこかにまだあるのです。
「それでも私は、作家としてやっていける才能があるんじゃないのか?」
理屈で言えば甘ったれた妄想なのですが、それでも振り切れない。
振り切れないからデビューして作家として生きていく自分の姿を妄想して、適わない公算の高い夢を追いかけている。
2次選考の壁を突破したとして、3次選考の壁があり、電撃ならば4次選考の壁があり、さらに最終選考の壁がある。
そしてこの壁を超えるのは、2次選考の壁を超えるよりも遥かに困難な作業なのでしょう。
冷静になって考えたら才能のない人間が作家になるって夢を持つのは、
「俺、裸でエベレスト無酸素登頂してくる」
と、登山もした事ない素人が公言してるに等しいんでしょう。
しかもたかだか長編11本しか書いてない分際で、夢がどうだの語るのは、何様だって話ですね。
多分高尾山すら昇っていない段階ですよ私は。
才能云々言う前に、もっと努力しようって話です……。
○中毒
ツイッターでも昨夜愚痴ったのですが、私は中毒です。
人よりも多くの作品を書いているわけではありません。
何より作品を書いてる時は地獄のような日々だし、パソコンの前に座り書かなくちゃと思う毎日が憂鬱で仕方がないのです。
なのに作品が完成した瞬間、こう思ってしまう。
「早く次の作品を書きたい」
私は人より書くペースが遅いですし、多くの作品を書いてきたわけではありません。
没原稿とネットに投稿した小説込みで長編17本しか書いてません。
そんな私でも作品が完成して新人賞に応募したり、カクヨムや小説家になろうに最終話を投稿した瞬間、次の作品を書かずにはいられなくなる。
才能がないのは自覚しています。
仮に新人賞を受賞したり、カクヨムやなろうの小説が伸びて書籍化されるみたいな夢が叶わなくても書き続けているでしょう。
でも書き続けるのだからこそ、この道でお金を得て食べていけるようになりたいという思いもまた日増しに強くなっていくのです。
○最後に
最近溜まっていた自分への鬱憤だとか内心の諸々の文章に書いて少しすっきり出来ました、と言いたかったのですが、文字に起こしてみて改めて自分の甘えっぷりをいやというほど思い知りました。
今年も懲りずに電撃大賞に応募しようと思っていますが、どこまで自分に厳しく出来るかが課題ですね。
自主企画を立ち上げられた一田和樹様に、2次選考の壁についてお尋ねするつもりで筆を執りましたが、延々自分への愚痴で埋め尽くされてしまった印象です。
ですが自分を見つめ直すとても良い機会になりました。
改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。
こんな日記帳みたいなエッセイで自主企画に参加するのは、失礼かもしれませんが、折角書いた3500文字ですので公開しようと思います。
今年こそちゃんと自分でも「頑張った!」と胸を張れる努力が出来るように頑張ります。
ライトノベル新人賞二次選考の壁の厚さについて 澤松那函(なはこ) @nahakotaro
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