エピローグ「ニートだったオレが中学時代憧れだった資産家のお嬢様と結婚するまでの話」
「それからオレ達はしばらくして式を開いて結婚しましたとさ。とまあ、これが『ニートだったオレが中学時代憧れだった資産家のお嬢様と結婚するまでの話』」
ソファに座りながら今年5歳になる娘に語り掛ける。話すと当時のことを思い出して懐かしい気持ちに浸る。
あれから約6年、婿に入ったオレは美里のお父さんと彼女にサポートしてもらいながら仕事をして慣れてきた時に彼女が妊娠していることを知って元気な娘が産まれてすくすくと育って……時の流れというのは速いものだなあ。それと信じられないことに、あのプロポーズの後鈴木先生が最後に職員室か離任式で広めたのかは定かではないけれど今では4階のあの場所が告白の聖地になっているというのだから驚きだ。
オレがしみじみとしていると娘が感想を述べるために口を開く。
「パパって、前からちょっと格好つけるところがあったんだね」
グサリ、とオレの胸に何かが突き刺さる。少し仄めかしたところもあったのだけれど、両親の恋愛事情の感想としてはあまりにも変わりすぎていないだろうか?
「何を話していたの? 」
パタンとドアを開けて台所からエプロンをつけた美里が今晩のおかずの松風焼を持ってくる。いつもは変わらずお手伝いさんに来てもらっているのだけれど松風焼の時となると彼女は台所を譲らないのだ。
「わーい、ママの松風焼大好き! 」
そう言って娘が美里に抱き着く。
「パパとの思い出の食べ物なんでしょ? 」
「え、ど、どうしてそれを……」
そう驚く美里に得意気に笑う娘を遠目に頬を緩ませながら眺める。
「それじゃあ、次はママがパパとのお話をしようか」
彼女が顔を赤くしながら娘に笑顔でそう言った。
0から始める恋愛~中学時代憧れだった学校のアイドルと結婚する話~ @yusuke226
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