第二回目 『食』



「こんにちはー!是枝ユメで~す!『異世界╋卵╋現実世界』の第二回、はっじまっる~よ~ん!」


 テンション高いなぁ……ども、タマゴです。


「え~?じゃあ、暗い方が良いの~?……ヒヒヒ……じゃあ……始める……タマゴ……割る……割るワル?ワル……食べる?」


 いや……怖いから普通に……。


「じゃあ、今回のお題は何だ、バカヤロ~!?」


 ……。こ、今回のお題はズバリ!『食』です!


「人間の欲求不満の一つですね?」


 ……。『不満』は要らないな。いや……異世界事情では不満もあるのかな?


「で、お題が決まったところでゲストは?」


 今回は食ですので、やはり料理人に来て頂きたいところ──という訳で、『剣と魔法』の異世界から、元・宮廷料理人という異色の経歴を持つ大衆食堂の主、ユーザーンさんに御越し頂きました!


「女将を呼べ!」

「おおっと……いきなり問題発言ですねぇ。大丈夫ですか?」


 どうか一つ寛大なお心でお見逃しを……へへへ。


「卑屈だぁ……」


 ま、まぁ利益が関わるものではないので大丈夫かと。そこは楽しく読んで頂く為に……。


「まぁ良いでしょう!」


 何で君が偉そうなんだい?


「それより話しろや、タマゴさんよぉ?」


 ………。わ、わかりました。



 異世界といっても様々です。ただ……現実世界と共通する認識がある世界では、食は最低限の味と量が確保されねば成り立たない。


 それ程大事な『食』となれば、やはりお題としては申し分無いかと思われます。



 という訳で比較や疑問、考察を加えて行きましょう。


 ──と、その前に……今回はもう一人ゲストをお呼び致しました。多忙らしいので少しだけお話をお聞きしましょう。


 科学の進んだ未来からコンニチハ?未来食料研究機構から御越し頂きました、シェロさんです。


「女将を喚べ!」

「おぉっと……またもや問題発言ですね。しかも『喚べ!』──召喚しろって言ってますよ、タマゴさん……」


 ま、まぁ、未来の方ですから、何等かの転移技術があるのかも……。


 とにかく、先ずは未来……シェロさんにお聞きします。未来の食事情は?


「そうだな……先ずは環境維持の観点で限界があって世界人口が一気に減った」

「いきなりシビアな……」

「人間は欲を捨てきれなくてな……結局、地球は作物を作れなくなった。今使ってる……というか今住んでるのはテラフォーミングした火星。当然、大多数は移民出来ず全世界人口の十分の一に人類は減った」

「…………うわぁ」


 …………。


「今は地球を緑化中だが、俺が生きてるウチは無理だね。全く……アホな連中のせいで酷い話だよ」

「そうだ、そうだ~!」


 ……タマゴとしては見ているだけになるから申し訳無い。といってもそうじゃない未来もあるんだろうけどね?


「おっと……食料事情だったな。まぁ、簡単に言えば自然食品は超高級品だ。金持ち連中が準備していた種子の栽培は限界があってな……代わりに一般的なのは遺伝子組み換えの食材、もしくはブロック型サプリメントレーションだ。味が落ちるのが欠点だな」

「……それって身体に問題ないの?」

「取り敢えずはな?まぁ、その食材も限りがあるし……今流行ってるのは仮想空間での食事だ。脳に味覚データを送って楽しむってヤツ?それなら必要な栄養源だけを詰め込んだレーションでも美味いからな」

「世紀末って感じだねぇ……」


 そういう世界に至るまでに様々なものが失われたと考えるべきでしょうね。多分ですが、人間が油断して消えた調味料は多いかと……。


「まぁ、そうだな。最低限、塩や砂糖は確保したが、足りないものは山程ある。とにかく、味覚は仮想空間でどうにでもなるから問題は無いがな」

「……虚しくなりません?」

「生きる為だからしょうがない。だが、更なる未来にはきっと調味料も復活するかも知れん」

「逆に電脳世界にドップリになる可能性も……」

「そりゃあ先の人類次第だな。今の俺達は食えて味があるだけマシなんだろう。おっと……時間だ!じゃあな!」


 ………何か腕時計弄ったら消えたな、あの人。


「未来の食はどう変わるかは分からないみたいですね~………さて、ここからは剣と魔法の世界……ユーザーンさんから話を聞きます」

「●◇▼を喚べ!」

「何か名状し難き者を要求してますけど……」


 と、ともかく話を続けましょう。


 現実世界の中世をモデルにした『剣と魔法』の世界。ファンタジーに代表的な舞台も当然ながらこの世界には現実世界同様の問題が存在することになります。


 特に生産。広大な土地を普段どうやって魔物の様な存在から守っているか……これは永遠の課題では無いでしょうか?


「作者・赤村の作中では農地を魔除けの石で囲んでるって話でしたよね?」

「我が国は魔法により結界を張っている。食は命に繋がるからな」


 それって労力凄いんじゃないですか?食材だって多いし……。


「それも已む無しだ。その為だけに存在する役職もある。もう一度言うぞ?食は命だ」

「それって王様とか貴族用?」

「当然だな。王都が最優先。後は貴族がそれぞれ所領で努力するのが当然だ」

「うわぁ……それじゃ国民大変だぁ……」

「そうでもない。貴族は民を大事にせねば見棄てられる。分かるか?」

「領主が見棄てる、じゃなくて?」

「民が見棄てる、だ」


 多分、他領地に逃げるということなんでしょうね……。民が減れば税が減る。つまり自分に返ってくる。


「その通りだ。他領地に逃れようとするのを力で止めても、力で押さえ付けて働かせてもどのみち先はない。生産力は低下するだけで税は減少し、やがて王から叱責される。結局、最善は民を大事にすることなのだ」

「深いですねぇ……何処かのバカな政治家に聞かせてやりたいですねぇ。やること為すこと嘘ばっかじゃねぇかよ、無能議員どもが!」


 ユ、ユメさん?政治の話は出来れば止めてね?


「え~?だって~……」


 止めなさい。


「は~い……ちっ!」

「……発展しても苦労はあるのだな」

「発展したから腐れたんですよ。大体、平和ボケ……」


 止めなさいってば!


「は~い!」


 政治に不満があるのはわかりますが、今回の題材は『食』です。機会があれば『政治』も取り上げてあげるから……。


「はいはい。期待しないでまってるよ、日和見タマゴ野郎」


 ………と、トゲがあるなぁ。


 と、とにかく、食の量を確保出来るかは結局国力に掛かってきます。魔法にせよ人海戦術にせよ、食を守らなければ明日はない。

 世界によっては魔物が穏やかだったり飼い慣らせたりもありますが、大抵は定期的討伐が必要です。


 現実世界でも食の問題は解決に至っていません。国民の口に届いてもそれが他国にまで届いている訳ではないんです。

 他国の貧困にはそれなりの理由がありますが、自国に飛び火しないとも限らない。


 現代でも酷暑にて不作とかね?コーヒーの不作で高騰とかならまだ良いですが、人為的なものとなると質が悪い。他国が勝手に領海で操業、国際ルール無視の乱獲とかね?まぁ、その辺は政治家にも責任が出てきますが……。



「我が国はそれで戦争になった過去もある。だが、そうでなければ話にならぬわ」

「う~ん……シビア」


 生きるということはシビアなんですよ……。


 さて……未来のシェロさんが言ったように味覚に関しても色々とありますね~。


 良く異世界の料理が美味いという話がありますが、多分現実世界の人間にはシンプル過ぎる可能性が高い。

 例えば調味料。塩、砂糖、……発酵菌がある無し醤油や味噌擬きもあるのかな?ハーブなどはあっても不思議じゃないけど……。



「現代人の舌は肥えてますからねぇ……確かに異世界で店を出したら儲かるかも」


 実のところ、無理だと思いますよ?材料面で限界がありますから。


「どうしてですか?」


 添加物の問題です。自然調味料だけでも出来ないことはないと思いますけど、水一つ取っても硬水、軟水があります。その最適のバランスを見極めるだけで一苦労だと思いますし。


 知人のオタ調理師さんに聞いて異世界で料理する自信があるかと聞いたところ『無理』と言われました。理由は調理法と資金。

 その世界では既に料理人達が研鑽に研鑽を重ねている訳ですよね?それをポッと行った人間がそれを上回るのは無理だと。妙に納得しました。


「資金と関係無いじゃん……」


 だから、そういう人達が使う調味料や素材ですよ?安値で手に入ると思います?


「うむ。ウチでも専用農場を用意しているしな。で、農場の管理には魔物対策に金が……」

「成る程……割に合わないと……」


 そうです。勿論、新たな調味料の開発余地はある訳ですから絶対じゃありません。


「幸せの白い粉とか?」


 それは『禁断の調味料』……女子高生、恐いな!


「そう言えば魔物は食べないんですか?」

「大体の魔物は肉が固い。上手い魔物は乱獲されて希少だ。あまり主食向きではないな」

「厄介な存在ですねぇ、魔物は」

「いや……天然植物の受粉や害虫排除の観点では役に立ってはいる。要はバランスだ」


 世界に存在する意味はちゃんとある訳ですね~……。



「じゃあじゃあ、異世界に転移して料理で一儲け、って無理なの?」


 出来なくは無いですよ?現実世界から材料を持って行ければ安定している上に安いし美味いですから……ただ料金に金貨とか貰っても何処で換金するのかとは思いますけど……。


「確かに金貨とかどうするんだろうね?出処不明の金貨なんて下手したら逮捕されますよね?」


 まぁ細かいことを気にしちゃいかん、ということで。


「でもさ?それじゃ異世界に転生しての場合は?」


 それはもう特殊能力でしょう。考えて見てください……現実世界で料理専門学校にすら通ったこともない、農業のイロハも知らない人が、聞きかじりの知識だけで凄い料理とか出来ると思います?異世界の味覚で育ったなら、まず成人するまでに味覚も狂う筈ですし……。


「確かに……」


 タマゴは結構自炊しますけど未だに料理レシピ確認しますよ?例えネット検索があっても農業なんてやる自信もありません。特殊能力じゃなかったら神様ですよ。


 それは農業も同じ。農業ナメんな!(笑)というのは専業農家の友人のお言葉です。


 でも特殊能力ということなら万事解決なんですよぉ。


「チート万歳!」

「むむむ……異世界人め……ズルい」


 そう思いますよねぇ……。


 でも、全ては創作物という娯楽の為!多少のことは目を瞑らないと作品の世界が小さくなってしまいます。


「いやいや……散々突っ込んでるじゃん、タマゴさん」


 許してくれよぉ……気になっただけなんだよぉ。赤村も同じくボッコボコになるんだから大目に見てやってくれよぉぉ!


「…………」



 さ~てさて……普通に考えれば難しいのはデザートです。まず異世界には冷蔵庫が無い!(笑)まぁその辺は魔法で何とかなるんでしょうけどね~。実はチョコレートが難問かと思ってます。


「チョコレートかぁ~」

「何だ、それは?」

「ん?はい、一つあげるよ?」

「こ、これはぁぁっ!女将!女将は何処だぁぁぁっ!?」


 あ……。


「世界の彼方に走っていっちゃった……」


 ………。


「…………」


 ま、まぁ、今回はこの辺りで御開きにしましょうか。



 ね、念の為言っておきますが他の作家さん批判じゃないですからね?

 想像の海は自由でなくてはいけません。他者が受け入れる、受け入れないは別として、認められている人なら胸を張って欲しいと思います。


 赤村なんてプロでも何でもない……訳で……すから………。


「ドンマイ!凡才!」


 

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異世界╋卵╋現実世界 ──世界比較考察記── 喜村嬉享 @harutatuki

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