葱坊主

安良巻祐介

 

 大きな頭の、子供だった。

 頭のてっぺんに緑がかった黒髪が一掴み、顔は白く、まん丸く、両の目は猫のようであった。

 表情らしい表情というものがそこにはなく、虫に似た無機質さが支配していた。

 そんなものが、ずっと前から家の戸口のところに立っていて、荒れはてた畑を見ている。

 土が干からび、雑草さえも枯れ、板や棒の残骸が散乱しているその畑を、ただ、じっと見つめている。

 こめかみ辺りに青い血管が幾筋も、蚯蚓のように浮き上がって、子供の顔を一層異様にしていた。

 何かよくない事が起きる、何かが弾ける。

 そんな気配が満ち満ちていたけれど、幸か不幸か、子供の姿を見る事ができる者は、家にはいないのであった。

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葱坊主 安良巻祐介 @aramaki88

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