2日目

大きなセルリアンを見つけたので眺めていた。

4本の脚が生えていて蜘蛛みたいだ。

どうやら傍にある放置された大型トラックを調べているらしい。10トン以上ありそうな大きなトラックだが、それが小さく見えるほど大きなセルリアンだった。

セルリアンはひとしきり大型トラックを観察すると、上についているアームを伸ばし、それを掴んだ。すごい音がして車体がひしゃげる。セルリアンはそのまま軽々とトラックを持ち上げて、自分の体に突っ込んだ。

食べてしまったのである。

セルリアンにはいろいろな形や機能を持つものがいる。それは、こんなふうに人工物を体に取り込むことで、その形状や機能をコピーしているからだという。

人間がセルリアンに対抗するために、人工物である武器や道具を使ったことは、実に愚かな行為だった。セルリアンたちは次々に人間の武器をコピーし、凶悪な存在に進化していった。街を悠々と闊歩するセルリアンたちは、鋼の装甲とライフルを備え、レーダーやカメラアイでエサを探し回り、鋼鉄のアームでビルを破壊している。こいつらはもうすでに人間の手に負える相手ではない。

そしてセルリアンは本能的に、“ヒトの形をした生き物”を探して食い殺す性質を持っている。私たちフレンズならば身体能力を生かして逃げることができる。なによりセルリアンに対し致命的に有効な攻撃手段がある。セルリアンがどんなに大きくなろうと、フレンズにとってはあまり脅威ではない。しかし人間の力だけでセルリアンを倒すのは不可能に近い。

だからセルリアンは実質ヒトを食い殺すだけのマシンのようなものだ。あんな食うだけの生き物たちの気が知れない、いや生き物ですらないか、などと思いつつセルリアンを見てたらどうやら獲物を見つけたらしく、アームでビルを崩している。すると人間が出てきた。結構な数だ。蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

ドドドドッドドドッ

機関銃の発射音が響いた。

人間どもが血を吹き出して倒れていく。弾丸はセルリアンのアームから放たれていた。なかなかやるじゃないの。おっと感心している場合じゃない仕事仕事

私はセルリアンから逃げていく人間たちに先回りした

残念逃げられなかったわね

ヒト1「フレンズか!? 頼む助けてくれ!」

ヒト2「セルリアンだ!殺される助けて!」

ヒト3「あいつだ!あのセルリアンだ!(後ろを指差す)」

ヒト4「助けて!お願い!」

ヒト5「やっつけてくれ!」


は?

よくも人間の分際でそんな口を利けたな

駆除よ

私は走ってくる人間の

一人の首を手刀で飛ばし

一人の胴を爪で引きちぎり

一人の顎をつかんで握りつぶし

一人を蹴りつけて粉々に粉砕した。

後から走ってきた人間どもは悲鳴をあげて方向転換し路地や建物内に逃げ込もうとした。

逃げられると思うな。

私は近くにあった道路標識(制限速度50km)を根本から引き抜き、逃げていく人間どもめがけて振り回し胴体を真っ二つに切り裂いた。

残ったやつらは一人残らず標識で突き刺し、最後に標識を地面に突き立てた。

駆除完了。

だがまた返り血を浴びてしまった。美しい毛皮が血で真っ黒だ。

一旦洗い落とすことにしよう。


私は川で水を浴びて返り血を洗い落とした。

水面に自分の姿を映し、汚れが落ちたか確かめる。

すばらしいわ。

私はつくづく自分の容姿が気に入っていた。

しなやかで強靭な体躯。鋭い牙。大きな耳。立派な房毛がイイ感じである。

自信に満ちた顔には王者の威厳が漂う。

百獣の王たるにふさわしい貫禄があると思っている。

フレンズたちを集めたら私が王として君臨するべきね。

川面が陽光でキラキラと輝いて見えた。


フレンズと出会った。

高い塔に登って街を見下ろしていたら、私の所まで飛んできたのだ。

鳥のフレンズだ。初めて見た。

カワラバト「初めまして。わたしはカワラバトだよ」

あら あなたフレンズなのね!初めまして!

カワラバト「よろしくねぇ。あなたはなんの動物?見た感じ...猫?みたいだけど」

ライオンよ、百獣の王なの

カワラバト「ほえぇ、ライオンってこんな感じなんだぁ」

ほぇほぇといって笑う。可愛らしいけどなんだかへらへらした子だ。

まあ私はフレンズと出会えたからとても嬉しかった。

カワラバト「なんだかセルリアンがたくさんいて大変だよねぇ。あなたは大丈夫?」

平気よ。私は用心深いから。

カワラバト「よかったぁ。わたし、飛んで逃げられるのに、ぼーっとしてるからけっこう食べられそうになるんだよねえ」


フレンズ同士馬が合うというか、すぐに打ち解けた。聞けば、その子はほかにフレンズの知り合いがいるのだという。

それって本当?ぜひ会いたいわ!実は私フレンズを集めてるのよ。

カワラバト「そうなんだぁ。それじゃあみんなの所に案内するよぉ」

お願いするわ。

助かる。今度こそフレンズを連れて帰れそうだ。

私はカワラバトの案内についていった。

建物の上を走っていく。

カワラバト「あなた走るの速いんだねぇ」

当然よ。百獣の王だもの

ふと遠くに煙が立ち上っているのに気づいた。

ちょっと待って。あの煙、人間が火を炊いてるんじゃないかしら。

カワラバト「そうなの?」

ええ、ちょっと寄っていってもいいかしら?

私は煙の元へ向かった。

カワラバト「火ってコワイなぁ」

そうかしら?ちょっとあったかいだけじゃない

煙は街の外れの林の近くから出ていた。

テントが張ってある。人間が焚き火をしていた。

やっぱり人間だったわ

任務開始ね

私は素早く接近して、焚き火をしてるやつを真っ二つに引きちぎった。

続けてもう一人を爪で引き裂く。肉が大きく抉られ臓物を撒き散らした。

ドスッ

私の脇腹にナイフが刺さった。別の人間が突き刺していた。

ちょっと 痛いじゃない!

そいつの喉元に手刀を突き刺した。血を吹き出して倒れる。

私は脇腹に刺さったナイフを抜いてテントに向かった。

カワラバト「ちょっとライオンさん!何してるの!?」

何って駆除よ 害虫の人間を駆除してるの

カワラバト「この人たちが何をしたっていうの?」

何をしたかなんて関係ないわ 人間はフレンズの敵よ

だから駆除するの

カワラバト「敵じゃないよ!ヒトは優しいんだよ?」

うるさい子ね

邪魔するとお仕置きするわよ?

カワラバトにナイフを向けて言う。

銃声が響き散弾が私の体を貫いた

銃を持ってるやつがいたのね

許さない

撃った奴はテントの後ろに隠れているようだ

銃口から上る煙が見えている

無駄ね

次の瞬間 私はそいつの目の前に立ちナイフで喉を掻き切った。

所詮は人間

私の動きに反応することすらできない

私はナイフでテントを切り裂く。

やはり中にも人間がいたので全員ナイフで刺殺した。

これでここにいたやつは全部ね

ふとカワラバトを見ると散弾が当たったのか痛がっている

情けないわねそれぐらいの傷で

カワラバト「ううぅ 痛いよぉ...ぐすッ」

困った。案内してもらわないといけないのに

まあでも焦ることはない

ほらね やっぱり人間は私たちの敵なのよ

これで分かったでしょ

カワラバト「...でも、優しいヒトもいるんだよぉ?

私いろんなヒトからいっぱいおいしいご飯もらったし

みんなにこにこしてぇ私を見ててくれたよ?

どうして仲良く平和にしてはいけないの...?」

ぷっっっつんときた

ああ そういうことなのね お前もそっち側ってわけか

平和ボケした鳥め

お仕置きが必要だわ

私は力任せにカワラバトの前髪をひっつかんで地面に引きずり倒した






 気がつくと私は林の中で血まみれになって座り込んでいた

住宅街が夕日に染まって真っ赤だ

ふと両手を見ると血でべっとり汚れている。口もひどく汚れていた

私はこんなところで何をしているんだ?

確か私は人間を見つけて駆除していたところだった。

そうそう、鳥のフレンズに案内してもらわなくちゃいけない

でもそのフレンズはどこにも見当たらなかった。どこかに飛んでいってしまったのだろう。惜しいことをした

まあでもそのうち高いところに登ったりすれば会えるかもしれない。

とりあえず一旦帰って報告しよう

ライオン「申し訳ありません。またしてもフレンズを連れてこれませんでした」

女王「そうですか...それは残念です。ですがお前は気に病む必要はありません。次の任務に行く前にゆっくり休みなさい」

ライオン「承知しました。次こそは必ずフレンズを連れて来ます」

女王「...待っていますよ」


続く

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百獣の王 着飾り雀 @TTR_OTI

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