百獣の王
着飾り雀
1日目
また同じ夢を見た
ヒトを襲って食べる夢だ。フレンズになる前の本能がそういう夢を見せているのだと、女王は言っていた。動物だった頃のことは、何も覚えていない。でも、さぞかし勇猛で、屈強なけものだったことだろう。
なにしろ私は、"百獣の王"なのだから。
身を隠していた建物から外に出ると、四方に巨大な四角い建物が延々と並び立っている。ビル、という建造物らしい。かつて多くの人間が使っていたそれは、今ではあちこち壁が崩れ落ち、無残な姿を晒している。私は任務でここに来ていた。
今日もこの瓦礫の街で、ヤツらを駆除する
そう遠くない距離でズシン...と音が聞こえた。それが何なのかはすぐに見当がつく。私は近くの大きなビルに飛び乗って街を見下ろし、何がいるのか確認した。そいつはすぐに見つかった。無機質な目。セルリアンだ。珍しい相手ではないが、このあたりは特に多い。今回のターゲットはこいつでは無いが、見つかると少し厄介だ。私は速やかにその場を離れた。私が女王から授かっている任務は2つだけだ。
1つ目は、フレンズを見つけ、セントラルに連れて帰ること。
私たちには仲間が必要だった。女王の願いは、かつてフレンズたちが暮らしていた楽園、"ジャパリパーク"の復活だ。何者にも邪魔されることなく、フレンズたちが自由気ままに暮らしていた理想郷。そんな場所があったのだという。女王は当時のフレンズの生き残りだ。いつかまたみんなで平和に暮らすことを夢見て、まだ見ぬフレンズたちを探していた。私は女王のもとで新しく生まれたフレンズで、女王から全てを教えてもらった。私は何の動物なのか。フレンズとは何か。セルリアンとは、サンドスターとは何か。私は女王の願いを叶えるため、フレンズを探しているのだ
私は地面にしゃがむと、耳をすませた。私の大きな耳は微かな音も聞き逃さない。フレンズの足音や話し声を探す。けものだった頃もこうして見えない獲物を探していたのだろう。私は音を頼りにビルの間を素早く、かつ、注意深く進んで行った。すると、瓦礫の向こうに、それらしき影が動いているのを見つけた。あたりを見回している。私は見つからないようにじっとしてそいつを観察した。ヤツは。フレンズではない、耳と尻尾のない姿。間違いない。それこそが駆除対象だった。私の2つ目の任務は、「ヒト」その生き残りを駆除することだった。
私は瞬時にその人間の背後に回り込みその体を引き裂いて殺した。
私の身体能力を持ってすればこれくらいは容易いことだ
何か叫び声が聞こえ、突然背中に痛みが走った。銃弾が数発、背後から打ち込まれたようだ。後ろを見ればヒトの群れだ
仲間がいたのだ
ヒトは道具を使うゆえに他の動物に優るという
だがこんな弾丸では私は殺せない。
私が倒れないのを見て奴らは走って逃げようとするが遅い遅い笑ってしまう
私は50mほど離れたヒトどもに一跳びで追いつき、一人ずつ引きちぎりバラバラに解体していった。かつてフレンズたちが平和に暮らしていたジャパリパークは人間の手によって滅ぼされた。その後フレンズたちの反撃やセルリアンの攻撃で逆に人間たちが殺され、絶滅していった。生き残った少数の人間たちがまだ抵抗を続けているので、私が駆除しているのだ。私は散弾銃を撃ったやつの首をもぎ取ると、前を走る一人めがけてぶん投げ胴体を両断した。建物に逃げ込もうとしてるやつを蹴りつけると柱に激突して肉片になり散らばった。瓦礫に隠れようとしていたやつは足を掴みビルの壁に叩きつけトマトのように潰した。
あと数人、100mほど先を逃げていくやつらがいる。
往生際が悪い
まるでゴキブリのようだ
追いかけようとしたら突然そのうちの一人の胴体に風穴が空いて吹き飛んだ。逃げていく先にセルリアンがいたのだ。おっとここは引いてセルリアンに任せよう
残った人間たちは仲良くセルリアンのえさになった
よかったわね八つ裂きじゃなくて
まあ結局死ぬなら同じか
さてこれだけの数のヒトがいたのだからこの近くに必ずやつらの巣があるはず
セルリアンがどこか行くのを待ってから近くのビルをくまなくチェックしたら果たして人間の集まっている建物が見つかった
私はさっき拾ったショットガンを持って突入し銃床で人間どもの頭を叩き割っていった。次の部屋に行くとまた人間がいたので順番に頭を割っていったがそのうち銃がダメになってしまったのであとは素手で殺した。やつらはここで繁殖していたらしく小さい個体もいた。こいつらはうるさいが頭を飛ばせばすぐにおとなしくなった
こうして一人残らず殺しながら一番奥の部屋にたどり着いた。すると驚いたことにここには数人の人間と一人のフレンズがいた。イヌ科の仲間のフレンズのようだ
かわいそうに怯えている
すぐに助けてあげるわ
私はその場にいた人間たちを蹴り飛ばして壁に叩きつけて殺し震えているイヌのフレンズに優しく声をかける
もう大丈夫よ私について来なさい
イヌ「ブルブル...あなただれ...?ブルブル」
私はライオン 百獣の王よ
イヌ「...ライオン...?そうは見えないけど...ブルブル」
あ そっか私今返り血で真っ赤だったわ ライオンなのよこう見えて
イヌ「ブルブル...ヒトさんは...ヒトさんたちはどうしたの...?ブルブル」
ヒトはもういないわ みんな私が殺したのよ だから安心しなさい
するとイヌのフレンズは泣きわめき出した
よっぽどひどいことをされていたのだろう
あらあら怖かったわねえ
私はその子を抱き寄せようとしたが逃げられた
あ そっか私今血まみれだったわ
イヌのフレンズが落ち着くまで待ちたかったがせっかく見つけたフレンズだ一刻も早く女王の元に届けたい
ほら早くみんなのところへ帰るわよ
私はその子の手首を掴んで多少強引に引っ張って連れて行こうとした。するとその子は錯乱したのか私の腕に噛み付いて来た。
あらあら平気よ落ち着きなさい
この程度のことでは私はいや結構痛いわ
私はその子にビンタして言った
うるさいわね連れてくって言ってんでしょ黙って歩きなさい
イヌ「お前なんか...お前なんか殺してやる...!!」すごい形相だ
なんて口を利くのかしら こいつ まさか人間と仲良ししてたのか
もうキレた
お仕置きよ
私はイヌちゃんの首をガッと掴んだ
気づいたら私はビルの一室で血だまりの中に突っ伏して倒れていた。窓の外から夕日が差し込んでる。どうしてこんなところにいるのかしら?
確か私は人間の巣でフレンズを見つけたんだった
そうだ早く連れて帰らないと
でもそのフレンズの姿はどこにも無かった。その子の匂いを探すと、どうやらここから立ち去った様子は無い。部屋の中を探してみたが、あたりには殺した人間の屍が転がっているばかりでフレンズの姿は影も形も無い。ふと自分の顔に手をやると口の周りがひどく汚れていた。何か食べたのだろうか。確かに満腹感があるがよく思い出せない
いやそんなことよりフレンズだ
結局その子はどんなに探しても見つからなかった。残念だが今日は一旦引き上げて報告するほかない
ライオン「すみませんせっかくフレンズを見つけたのに連れてこれませんでした」
女王「そうですか...それは非常に残念でした。しかし謝る必要はありません。お前は立派にやったのですから...。」
ライオン「ありがとうございます」
女王「ご苦労でした。任務に戻る前にゆっくり休みなさい」
ライオン「承知しました。一日も早く女王様の願いが叶いますよう...」
続く
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