「酸性雨で服溶け女子多数発生“よっしゃぁ!”」なのに物体X 

低迷アクション

「酸性雨で服溶け女子多数発生“よっしゃぁ!”」なのに物体X 

「酸性雨で服溶け女子多数発生“よっしゃぁ!”」なのに物体X


 始めにって言っていいかどうかはわからないが、とりあえず始まりの台詞はこうだ。


「外は雨が降っていた…」


ゲリラ豪雨と言うより最早、テロじゃね?な、“衣服のみを溶かす”本当に誰かさんの

ご都合が良すぎる、最高の、いや、恐怖の酸性雨が

発生する、ディストピア、ハルマゲドン?終末の兆しを見せ始めた昨今!


今日みたいな、日中突然の雨は、今頃、外を歩く老い(オイ!)も若きも、とりま野郎は

死ね!女の子も、男の娘も、おねーさんも、叔母さんも、

おばあちゃん(えっ?おばあちゃん?ババア…いや、ロリババアならあるいは…)


も、嬌声(正しくは強制)ハニー☆フ〇ッシュで全裸解禁!“服溶け女子”満載


「キャアアアア、の〇太さんのエクスタシィ!」


的大爆発のクソオタ&変態共(同じか!?)スマホの容量は足りてるか?な、煩悩解放!

色々解禁の日だって言うのにっ!?


俺達はN大学前安アパート兼、長屋風、集合家屋から、楽園の外に出られない。

その理由は単純!唯一の入口である一階表玄関付近を(今、俺はその前に立っている)


「キシャアアアアー!」


と、不気味な咆哮を上げ、ブヨブヨの体に不定形な体型を震わせる謎の未確認生物、

そう“物体X”の野郎が“史上最大の脅威”として立ちはだかっているのだ。



 話は15分程前に遡る。明日が見えない低級社会人“T”とでもしておくか?

俺は、狭い自室に現れた田黒さん(あ、飲食用語的にゴキブリの事ね)にビビり、

会社を休んでいる所だった。


窓辺でタバコを吸う額に一滴の雨が降り注ぐのと同時に携帯のJアラートが鳴り、

超強力酸性雨警報独特の、危険なのに、何処か楽し気なメロディが鳴り始め、人口減の筈の

通りから女性のか弱さ&魅力MAXの黄色い悲鳴と、


「イヨッシャアアア!フォッォォオオオオ!!オッシャアアアア!!!」


との咆哮が上がり始め、凄まじい賑わいを見せ始めた。そうと来れば、俺だって速攻!

扇情?いや、便乗!!スマホを片手に、狭い廊下を飛び出す。


廊下を脱兎の如く、通過し、一階に続く階段をスーパーマンみたいに一気に飛ぶ。


一階のボロ塗れの床に降り立った俺の耳の複数のざわめきが聞こえてくる。

ここに住む奴等は全員野郎!平日の夕方にさ迷うは貧乏学生か、俺みたいな世捨て人、

つまりこの世のクズ!皆、同類!だから、仲良し!!そんなクズ共に笑顔を見せようした


俺の顔は驚愕で凍り付く。


「キシャアアアアアー」


と咆哮し、廊下一杯に触手を広げたモンスター?的な“何か”が男共を振り回し、

自分の体半分程に広がった大口に次々と放り込んでいく。


やがて、呆然とする俺に、化け物が体中についた複数の目を向け、尖りまくった触手を

伸ばす。通常の選択肢なら“逃げる”を選ぶだろう。

だが、走馬灯の如く(あ、それって死ぬ事か?)


駆け巡る様々な女の子の裸身、服溶け女子達!帰宅途中の女子小、中、大、高生、

買い物帰りの主婦でもいい!非現実的要素だが、ゼロではない、

どっかのお屋敷メイドさんとか!実は御年何千歳のローリーなおばあちゃんとか!!


実際には


「そんな溶けてねぇよ!」


とネットやSNSで呟かれているが、それでもゼロではない。俺は“可能性”に賭ける!!まだ見ぬ世界のために、ここで死ぬ訳には行かない。


かつてない程のやる気を見せ、怪物の触手に対し、拳を見舞う。固くザラついた不快感触を殴り飛ばし、第2撃を見舞うために突。だが、怪物の体からいくつも伸びた

触手の数に


(やっべぇ!!)


と臆する気持ちが先に出た。


「こっちだ。T!」


複数の銃声(映画以外で初めて聞くので、多分銃声!)が響き、白煙立ち上る自動小銃を

構えた一階住人の明日が見えない世捨て人“S”が、手狭な共用浴場から、体を覗かせ、

こちらに手招きしている。


「生きていたか!S!!」


叫び、そのまま浴場に転がりこむ。弾倉を替えながら、ドアを閉めたSは、共用スペースの机をバリケード代わりにドアへ押し込み、肩で息をついた。


「全く、服溶け女子を拝もうと思ったのに、化け物と接近遭遇とはついてねぇ。お前も

同じかS?ちなみにそいつはAKか?」


「ああ、一眼レフを常備して臨もうと思ったら、この様だ。AK突撃銃は犠牲になった

一階住人、千倉(ちくら)さんの旧ソ諜報活動時代の残り物だ。と言っても、散々撃ちまくって、ここに詰まってるのが、最後だ。」


「マジかよ!千倉さんすげぇな!!バーコードハゲは伊達じゃねぇな!しかし、一体あれは?」


俺の疑問にSは訳あり顔で両手を組み、語り出す。


「一階住人の田村(たむら)は知ってるか?」


「ああ、あの色々な分野に理解のあるオタク野郎か!確か、夏コミ3日目、東館配置の!」


「ああ、そのクソペド野郎な!毎回、何か事件報道あんたびに、絶対、アイツだろ!のアイそして、これを見ろぉぉ!!」


「こ、これはぁぁっ!?」


Sが差し出したパッケージには、萌え系なイラストに卑猥な触手が絡みつく…


「魔法少女リカちゃんと触手からの物体Xゥゥウゥ!!」


「そうだ、最後に俺が奴の部屋からエロ本失敬した時に、このソフトと大量のちり紙が…

恐らく、あの怪物は、いや、物体Xは田村の邪悪な欲望と分泌物の賜物、化身の怪物…」


「いや、ちょっと待てや?その理論で言ったら、あれだよ?それだったら今頃、

巷、化け物だらけじゃね?独身男子ばっかだよ。この界隈!」


「そうだな…いや、あるいは…とにかく…今はここから逃げる事を考えよう。」


「一階の窓は?ここからでも、逃げれそうだぞ?って、なんじゃぁ、こりゃ?」


俺は自身の指さした手を自ら引っ込めた。窓付近には、先程こちらを襲ってきた

触手が犇めている。


「その様だ。2階から飛び降りるのもナンセンス。先日、危険ドラッグで狂った

2階の吉住(よしずみ)を思い出してみろ?落下地点しくって、また裂きぞーさんになってたからな?」


「という事は…奴のいる1階正面を抜けるしか手がないか…」


「ああ、そうなるな…多分、残ってるのは俺達…」


不意に黙り、耳を澄ませるS…


「どうした?」


「何か聞こえないか?…」


ボロアパート内部ではない。今だ降りしきる雨の道を駆ける音。それも裸足っぽい?

思わず声が低くなる。

「まさか、服溶け女子?」


「そうか、雨から逃れるためにここに?しかし、正面には奴が。」


「迷っている暇はない。S!」


間髪入れずに銃弾を窓にぶち込むS、割れたガラスから一旦引き下がる触手を確認し、

外に向かって声を張り上げる俺達だ。


「外の人、正面は危険だ。窓から中に入ってこい。」


こちらの声が聞こえたのか?走る足音が近づき、破れた服を纏った半裸の影が

窓枠を飛び込え、野・太・い・声で礼を述べた。


「助かったぞ?君達!」


「お呼びじゃねーんだよ!!」


体躯のガッシリした男の上裸を蹴飛ばし、再び触手で覆われた窓の前で、俺達は虚しく肩を

落とした…



 「紹介が遅れたな。私は在日米軍の兵士“パターソン”だ。既に君達は会っていると

思うが、この窓を覆う怪物を追って、ここまで来た。詳しい事は言えないが…」


「その辺はいい、とにかく俺達はここを出たい。アンタ達は大勢か?それとも

奴を倒す武器や手段を知っているんだろうな?」


「残念ながら何も…我々にとっても未知数なんだ。そして私は1人、部下は皆奴に…」


ガックリと肩を落とすパターソンを見ながら、とりあえずSの予想が外れた事に、俺は

安堵する。問題は一つ。


「何故、奴はここから出ていかない?」


全員が黙り込む。何か理由がある筈だ。しかし、その答えを出すには時間があまりない。

身体に対する自身の危険ではない。このままでは雨が止む。病んでしまったら、服溶けなGIRLS達がっ!?…ん?待てよ?そうか奴も、もしかして。


「試してみる価値はあるぞ!」


俺の声に二人がこちらを見る。それに自身ありげに頷く俺。手早く指示を出し、

すぐさま行動を開始した。


バリケードをどかし、廊下に飛び出る3人の前に怪物が“待ってました”とばかりに

向かってくる。Sが銃に残った弾をばら撒き、怪物を怯ませていく。


「今だ!突撃!!」


俺の号令一下、パターソンとSが怪物のおぞましい体に突撃をかけ、飛びつき、

入口に向けて押し出していく。


「このまま押し出せ!」


「グギャ?グギャッ、グギャアアア!」


俺達の意図を察したのか?怪物が悲鳴を上げ、固い触手を鞭のように奮い、応戦してくる。

全身に火をつけられたような痛みが走るが、気にしている暇はなかった。


敵が焦っているのは、こちらの意図が正しい事を示している。一階窓の上には屋根がついているから、自身の触手を這わしても、問題はなかった。しかし、外に自身が出る事は…


3人が無言でタイミングを合わせ、怪物の全身に込める力を合わせる。勢いよく弾んだ怪物は入口から外に転がる、次の瞬間…


「ギャオオオオオオオ」


と絶叫を上げ、全身を湯だてながら、溶け崩れていく。


「凄い、効いているぞ?」


驚くパターソンの隣で俺は呟く。


「コイツも“雨宿り”してたんだ。」


怪物が何処から来たかは知らないが、人間達にとっては服を溶かすのみの雨、だが、コイツにとっては死に繋がる雨。それに助けられた訳だ。


ボロアパートの敷地一杯に広がる怪物の残骸を見つめながら、俺はゆっくりと行動を…

“本来の目的”に向けて動きだす。Sは傷が深くて動けそうにない。パターソンに

手当てを頼む事も忘れてはいない。最も、そういう俺の横腹は触手によって、抉られ、

満身創痍だが…


「何処に行く?」


傷口を見ながら、パターソンが訪ねてくる。暗に“行くな”と言っているのがよくわかる。

掠れる声を精一杯高め、答える。


「目的があるんだ。」


「目的?それは自分の命を削ってまでのモノなのか?何故だ?

どうして?それは、そこまでする価値があるモノなのか?」


「無論だ。」


俺は短く告げ、雨が降る外に走り出す。自身の衣服がゆっくりと溶ける感触を楽しみながら、

夕暮れの町並みに足を進める。やがて、霞んだ視線が乳白色?肌色で目の前を走る

“何か”を捉えた。


怪物の毒素が見せる幻か、それとも現実、どっちでもいい。俺は静かに微笑みながら、雨に光る町の中で映える、それに向かって歩みを早めた…(終)




 

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