第2話 魔王は王よりも優しい方ですが……。
「アタシはデルフィーム。アンタの、ディメン一族とは近い存在なの。魔王って呼ばれてるけど、別にそこまで悪いことはしてないからね。これ、ホントの話」
現在、魔王様のお城にある大広間に居ます。そして、一族の皆もいます。皆、ワタシを手厚く迎えてくれました。現在進行形で私、とっても幸せです。
「皆は聞いただろうけど、ヘリィも来たからもう一度話すわね」
魔王様の言葉に皆は口を閉じて、耳を傾けます。もちろん、私もです。
「アンタ達が前にいた国は、ディメン一族を国の守護者だと思っていた。なぜなら、ディメン一族は国を一つ滅ぼすぐらい容易なほどの力を持っていて、それを自分たちの生きる国を護る為に使っているんだから。当然よね。そんな中、国の王は国内で危険な薬や武器の密輸を密かに企てていたの。お金稼ぎするためにね。それをするには、ディメン一族は邪魔な存在。バレれば王もただでは済まない。だからディメン一族をこの世から消すことにしたの。まぁ、たかが人の力じゃ無理に決まってる王はまず、国民に嘘の噂を流したの。『ディメン一族は人を食べて生きている』ってね。国民はあっさりその噂を信じじゃって、ディメン一族に攻撃的になったの。そうすることによって、ディメン一族の国からの信頼を失わせ、排除するのに誰も止める人がいない状況を作ったの。そして、王は魔王であるアタシの討伐をディメン一族へ依頼し、アタシに殺させようとした。ま、実際はこの通り。アタシは無用な殺生はしない主義だから。てか、王の計画はアタシに筒抜けだったのよね。王のしようとしてること、関係してそうな大臣とかにお金握らせたら、ペラペラ喋ってくれたのよ。てことで、ならアタシは無実のアンタらをこっちでかくまってあげようと現在に至るわけ」
私はとりあえず王が私達を裏切ったことを理解しました。王、あの伸びた髭を顎が取れるまで引っ張ってやりたい気持ちです。
「今、国では大量の武器と薬が出回ってるでしょうね。あれはもうお終いよ。そのうち、敵国でも攻めてきて終わるでしょ」
ふふ、と魔王様はかすかに笑った気がしました。うん、やっぱり王は許せません。自分のお金儲けの為だけに一族をひどい目に遭わせたのですから。
「私、王が許せません」
私が言葉で言い放つと、一族の皆も「そうだそうだ」、「あの王を倒そう」と声が上がりました。
魔王様はまた笑って、「いらっしゃい」と皆を別の所へと案内しました。
皆でぞろぞろと魔王様の後ろに付いていくと、お城の外へ出ました。魔王様は一点を指さしました。指さす先、そこには私達の暮らしていた国がありました。
「皆の足だと1日かかっちゃうわ。森を抜けて、橋を渡って、それでも行くの?」
魔王様の言葉に、皆は「行く」と答えました。
「また、国から攻撃を受けるわよ?それでも?」
それでも皆の意思は変わりませんでした。
「そう、よかったわ。反対する人がいなくて!」
さっきよりも、ややいたずらに魔王様は笑って言いました。
「じゃ、国を滅ぼしましょう!」
魔王様の明るく言ったそれに応じる様に、皆は「おー!!」とまるで吠える様に答えました。
次の瞬間でした。
魔王様の指先が一瞬光って、次には国が爆発してました。
爆発の轟音と爆風がこちらに来ました。
皆、何が起きたのか分からないような、ぽかんと口を開けて爆発した国の方を見てました。
「はぁ、すっきりした!アタシ、あの国出身で王とは兄弟なんだけど、破壊出来てよかったわ!アイツったら、アタシが魔法使えること両親にばらしてこの城に隔離したのよ。ほんっと、ムカつくわ。でも、アイツの国は今滅んだの。あぁ、とても気持ちがいいわね!」
魔王様は声を出して笑います。
「魔王、様。どうして国民まで……?」
私の問いに、魔王様は答えました。
「国全部壊してこその復讐よ。国民だって、立派な加害者でしょ?ま、一瞬で死ねたことに、国民は感謝することね!」
皆さん、この人は……。私好みの美男子で、オネェ口調ですけど…………。
—————心は真っ黒な、正真正銘の魔王様です。
魔王様はオネェ口調ですけど……。 雨中紫陽花 @nazonomoti1510
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