神様パソコン

今村駿一

第1話 神様パソコン 誹謗中傷書き込むと

 インターネット掲示板『あめちゃん』内 アニメ声優スレッド

 今日もひどい誹謗中傷が書かれみんな嫌な思いをしていた。

 そんな時、俺は書いた奴を成敗する。



パンダマン『いやーそれにしても村宮の奴何が永遠の17歳だよなぁ。40歳超えてそれはキツイって。ついでにブスだしな』


 このパンダマンとかいうコテハンの悪口は限度を超えている。

 よし正義執行だ!!


ゴッドジャスティス『もうこれ以上誹謗中傷を書き込むのを止めろ、どれだけファンが嫌な思いをしているのかわからないのか、パンダマンこと中山!!』


パンダマン『? 俺はそんな名前じゃないけどな』


ゴッドジャスティス『じゃあフルネームを書くぞ。中山大志!!』


パンダマン『? だからそいつは俺じゃねーって』


ゴッドジャスティス『次は住所を書くぞ』


パンダマン『そんな事をしたら犯罪だぞ』


ゴッドジャスティス『別にこいつが他人だったらお前が焦る事ないだろ。第一お前がいつも書く誹謗中傷の方が犯罪だろ。早く謝罪してコテハン引退しないと本当に住所を書くぞ。年賀状沢山届いて良かったな中山大志』


パンダマン『すいませんでした。コテハン引退します』


『すげーゴッドジャスティスまた1人クソコテを倒したぞ』

『さすがゴッドジャスティス。でもどうやって特定してるんだろ?』



 俺の名は菅田良大。

 コテハン(固定ハンドルネーム)名はゴッドジャスティス。

 今日も匿名だと思って好き放題インターネットで暴れている奴らを成敗する。



 数か月前



 北陸の田舎から大学に入学する為上京してきた俺。

 彼女を作りたくてしょうがないが相変わらずいない。

 友達すらできず1年の2学期に突入していた。



 初秋の夜。

(今年のクリスマスも多分ひとりぼっちかな)

 東京に馴染めず学校で少し浮いていた俺。

 バイト帰りにトボトボ歩いていると、

「ちょっと。本当に止めて下さい」

「いいじゃん別に。少し遊んでよ」

 女の子が2人、DQNに絡まれている所を発見した。

 高校生の頃格闘技をやっていた俺。

 チャンス到来、とばかりに助けに行こうとする。

 だが怖くて足が動かなかった。

 ちょっと行って殴ってくれば良いだけなのにこんなに怖い物だとは思わなかった。

 テレビとかに出てくるヒーローってスゲーんだなぁ。

 そんな事を思っていると、

「おいてめー何見てんの」

 ご丁寧にもDQNの一人が声をかけてきてくれたのでようやく体が解れ、動くことが出来る様になる。

 ニコニコしながら近づく事にした。

「何おめやンの?」

 勇ましいDQN達。

「何をだよ?」

 とても丁寧に聞く俺。

「喧嘩だよ」

 またもや勇ましいDQN達。

「できんの?」

 笑いながら聞く俺。

 売り言葉に買い言葉。 

 口喧嘩がはじまる。

 まぁDQN2人位オリンピック強化選手や国体上位組と比べたら何て事ないだろう、と思い落ち着いた気持ちになる俺。


 ヒューン ガンッ


 そんな俺の考えを吹き飛ばすかの様に突如DQNの頭にブロック塀が投げつけられた。

 バターン

 倒れるDQN。


 ヒューン ガッ


 物凄い勢いでもう1人のDQNの頭にも命中。

 崩れる様にその場に倒れた。

 ……死んでないよなぁ。

 少し心配になり倒れているその顔を覗き込もうとすると、


 ヒューン


 うわあぶねー。 

 なぜか俺にもブロック塀が投げつけられる。

 当たらない様鞄でブロックする。

「おらー、しねー!!」

 絡まれていた女の子達の1人、小さな方の女の子が思い切り投げつけてくる。

「俺は違うだろ」

 必死に鞄でブロック塀を受け止め続ける俺だったが、

「うるせー、しねー!!」

 なおもブロック塀を投げつけてくる小さな女の子。

 何度も何度も投げつけてくる。

「ちょっと、その人は違うんじゃない?」

 もう1人の女の子が制止してくれた。

 ようやく止まったブロック塀の嵐。

 ホッとしていると、小さな女の子の声が大きすぎたのか遠くからパトカーの音が聞こえてきた。

「おいやべーぞ」

 立ち上がり逃げ出すDQN達。

 あー良かった、生きていた。

 ホッとするのもつかの間、

「私達も逃げましょう」

 俺の手を引っ張る女の子。

 とても可愛い。

 手の感触を楽しみながらにやけていたら、

「ほらっ、行くぞ!!」

 もう1人の小さい女の子に蹴飛ばされた。

 とても最悪な奴だ。

「なんか言ったか?」

 心の声聞こえたかな?

 俺は彼女達と逃げる事にした。



 だいぶ遠くへ逃げてきた俺達。

 呼吸がだいぶ整ってきた。

 改めて2人を見る。

 小さい女の子は小中学生位だと思うのだが、金髪にツインテールで生意気そうだ。

 対してもう1人の女の子は身長は高めで長い黒髪、清楚な感じでモロ俺のタイプだった。

「あの、助けて頂きありがとうございました」

 丁寧にお礼を言ってくれる。

 とてもドギマギしてしまう俺。

「こいつ何にもしていないよ。それよりも……」

 このちっこいのは本当に嫌な奴だなぁ、と思ったらある事に気づいてしまった。

 慌てて鞄を開けてノートパソコンを見る俺。

「あー、俺のパソコンがぁ~」

 やっぱり壊れていた。

 あれだけブロック塀を防いでいた訳だからこうなるのは当然だ。

 電源を入れても起動しない。

 あんなにバイト頑張って買ったパソコンがぁ~。

 課題もやらなきゃならないのに。

 俺はその場に泣き崩れた。

 シクシクシク

「あの、大丈夫ですか?」

 心配そうに俺の顔を覗き込みその後パソコンに目を向け事態に気づく黒髪の子。

「私弁償します」

 そして毅然と言ってくれた。

 何て優しい子なんだ。

 でもそんな事させる訳にはいかない。

「いいから気にしないで下さい、じゃあ」

「でも……」

 その場から去ろうとした俺の袖をチョコンをつまみ心配そうな声を出す黒髪の子。

「しょうがないなぁ~、それ貸して」

 金髪ツインテールの方が俺から壊れたパソコンをひったくるとリュックからノートパソコンを取り出した。

「直してあげるからそれまでそれ使っていて。どこかに繋がなくても使えるしゲームもエロ動画もサクサク動くから」

 なんちゅう事を言うんだ。

 そんなものは見ません、と言いたい所だがそんな訳が無いから言えない。

「じゃあね、行こう藤川さん」

 金髪ツインテールが藤川さんと呼ばれた黒髪の子の袖を引っ張る。

 去り際、俺に向って小さく笑顔で会釈をしてくれた藤川さん。

 いや本当に素敵な人だなぁ。

 俺の人生で今後知り合う事なんて無いだろう。 

 少しでもお話できて良かったな、と思いながら帰る事にした。

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