配信テロ!?公開(後悔)動画~同人野郎危機一髪編~ 

低迷アクション

配信テロ!?公開(後悔)動画~同人野郎危機一髪編~ 

配信テロ!?公開(後悔)動画~同人野郎危機一髪編~


 「ハイ!皆さん、今日の視聴覚の時間は、昨今起きた文化衝突と、その後の私達が

歩いてきた、これからの社会のための勉強です!なので午後は、お昼休憩の後に視聴覚室に集まって下サーイ。」


長めの狐耳をふんだんに“パタパタ”しながら、最近赴任の“ケモ耳女教師”の

“フォクシー先生”が明るい声(少し訛りが残るが!)で生徒達に話をする。


「先生ー!動画って一体何を観るんですかぁ~?」


クラスには必ずいやがるお調子者の一人、役立武(やくたたけし)こと“やーさん”が声を上げる。先生は笑顔を絶やさず、穿いているスカートから上手にはみ出した9本尻尾を

“フサフサ”させながら答えた。


「ハイ~、今年の夏に開催された漫画の祭典“スーパーコミック☆フェスティバル”通称、スパコミの映像を流しマース。これは先月、教育放送のドキュメント番組で流されていた

物で~す。今世界の構築において、私達と貴方方の共生~多大な~る影響を与えてくれた、

この行事をみんなで勉強デ~ス。」


この言葉を聞いた時“あたし”の顔は文字通りの“恐怖”を描きそうになった。クラスの

奴等は元気に返事したり、騒いでいるが、それ所ではない。その前に先程から、いや、恐らくこれを読んでる連中は少し“異質”な印象を受けるかもしれない(昨今起きた文化衝突とか?狐耳のフォクシー先生ってなんだよ?だよね?)安心して!異常なのはこっちで、

そっちが平常なのだから…


 最高の時代とは言ったもんだね。そう遠くない未来、カルチャーパンク?それとも技術

レベルがあたしらの頭の正常レベルメーターを振り切った?魔法少女に特殊能力者、

変身ヒロイン。それら全ての漫画的要素が現実の世界に突如として現れた。かつて

“クールなんたら”という文化の流行を起こした、この国は“狂うJAPAN”と

新たに名付けられた現象の影響をたちまち受け、今や彼女、彼等が日常を闊歩するのは

当たり前と…ここまで語れば、だいたいわかると思うけど、そんな感じ。勿論、それに伴う事件や問題も色々起こってて、現象前から愛されてきた漫画アニメを含んだ“オタク文化”も最高潮の盛り上がりと一部の世間の冷たい視線の半々の中で存在している現状で!


長くなっちゃったけど、要は!あたしは!!そのオタク文化にドップリ漬かっている

女子高生(隠れオタ)で!これから流れる“動画”のイベントにもバッチシ、サークル参加してて!(同人誌とか作って売る事。)問題なのは、その“動画”に恐・ら・く・自分が

映っているのだ!ギャー(絶叫)そしてそれは大きな問題を孕んでいる訳なんだ…


 「午後の視聴覚、最悪・・・」


1時間目後の10分休憩、頭が恐怖でガンガンしているあたしに、同級生の

“九鬼琴子(くきことこ)”が話しかけてきた。長身!長髪の

(とっても重要)でスラッと和風美人!最高の、というより…


「ふぅ(あたしの呼び名)も、そう思うよね?ね?」


あたしより背の高い彼女が、両手でこっちの頭をガッチリ抱えて「キスできるんじゃね?」

くらいの至近距離で確認を求めてくる。それを見ていたやーさんが「やっべ、ガチだ!」と吠えるが、九鬼の長足が一閃し、やーさんを吹っ飛ばした。

(吹っ飛ばされても、タダでは転ばないやーさんは「パンツ見えたぁ」と叫んでいたが…)


「も、勿論!ロン持ちだよ!?くーさん!最悪!ダリーよねぇ!ハッハァ!」

「そうだよね!良かったぁ。」


本当にサイコな親友だ。危うく頭を割られる所だった。ことオタク文化に対しては、

おもっくそ“アンチオータ(あたしらの世界に存在する過激的オタク否定者の略称)な彼女は、時折こうなる。何か嫌な思い出があるのかもしれないけど、フォクシー先生とかに対しても敵意むき出しなもんだから相当だ。そう、ここまでくればわかってくれると思うが、

問題なのは、この彼女に例の動画が見られる事なのだ。そっと頭を抱えてみる。触れた髪には先程の九鬼の指跡がハッキリと残っていて、改めて戦慄!


(やばい、確実に死ぬ。てか殺される。)


イベント当日の事を思い出して、改めて後悔!

あの時は当日の雰囲気に飲まれて、つい、撮影カメラに笑顔でピースをしてしまった。

オンエアされた映像を家で観た時は恐怖したが、次の日の九鬼の反応は至って平静。恐らく忌み嫌うジャンルだから視聴を避けたに違いない。そこで安心したのも束の間。まさか授業で流す事になるとは…

断固として動画を見せる訳にはいかない。あたし自身の生存のために!!


「あのさぁ、くーさん…そしたらさぁ、午後の授業ふけない?ゲーセンとか行こうよ。」

「ふぅ…」

「あたしもたるいしさ、パーッとやろうよ。奢るよ!マジで。」

「馬鹿ツヴァイ(バカ×2の意味)!」


勢いよく九鬼に頬を張られて吹っ飛ぶ自分。席二つ分を通り越し、そこに座っていた

色白西洋風ロリでポイント高しの“上村みぬき(カミムラミヌキ)”が

吹っ飛ぶあたしをナイスキャッチで受け止めた。


「ど~したの~?」

「あ、みぬちゃん、助かっ…」


と思う間もなく白い歯見せて笑ったみぬきが、もう一度あたしを九鬼の前に放り返す。またまたガッチリ彼女に掴まれたあたしは、今度は全身が、軋むくらいに抱きしめられる。


「駄目だよ!!ふぅ!授業はちゃんと受けなきゃ!」

「う、うん、そうだよね。ゴメン、くーさん。だから。」

「よく聞こえない、イエス?イエスっていいなよ。」

「い、いえ、てか骨が…折れる。」


意識を失いかけるあたしと、それを面白そうに見つめるみぬきに、顔面血だらけで蘇った

やーさんが「やっべ!再びのガチだ!」とはしゃぐ。そう言えば以前、九鬼の超和風な家で勉強中に、あたしのノートに貼ってあったアニメキャラのシールの件で丸一日、全裸で

座敷牢に監禁された事があった。絶対、マジで…絶対…何とかしな…そこで意識が途切れた…


 要はテレビを見れなくすればいいのだ。3時間目(ほとんど記憶がない。)の休憩時間

10分を利用し、視聴覚室に手早く侵入する。友人のラインで2時間目に他クラスが教室を使用した事がわかっている。


「ふぅがめっちゃ映ってたね。あたしは気づいたけど、他の子は「ん?」って感じ。大丈夫じゃない?」


色々こちらの事情通な友人は、楽天的な文章をよこしてくれる。だが、不味い!あのノリの良いフォクシー先生なら


「あらあらぁ~皆さんのお友達が映っていますネ~?誰デスか~?」


なんて言う!絶対言う!機材の前に立ったあたしは、その時、こちらを振り向く九鬼の表情を想像し、身震いした。


「やるしかにゃい!」


犯罪とか、道徳観念とか!この際関係ない!自身の生命を!素敵なオタライフを守る

のだ!!最初はテレビ!導線の一部を引き千切ってやれば事は済む。更に

念を入れるとすれば、PCから接続して視聴覚室に備えてあるスクリーン!

こちらで流されると、もっと厄介なので、そちらも壊しておこう。友人の情報によれば、

次の時間もここは使われる。急がねばならない。テレビの裏に回り込んだあたしは、導線に手をかけ、一気に…後ろから凄い力で肩を掴まれ、文字通り引っこ抜かれたみたいな状態に

なる。そのまま床に、毬みたいに転がったあたしの胸を、力強い足(良かった、靴下!)が

抑えつけた。


「やっぱり~♪ふぅ~♪ここにいたぁ!」


混乱なあたしの頭上に逆さま顔のみぬきが覗き込む。不味い、バレてた。おのれ~みぬちゃんめ~…という事は今、自分を踏んでるのは…


「ふぅ!いくら友達の事、気遣ってくれたって、そこまでしなくてもいいよ!」

「いや、違くて…」


弁解も聞かずに、九鬼が足に体重かけてくる。ご丁寧に靴が並べて置いてあるのが、可愛いが…あかん、コレ…潰れる。


「わかった!くーさん足どけて!まじ、呼吸が苦しく…」

「どけないよ!ひぎぃって!ひぎぃって言いなよ!!」

「えっ?わざとやってる?てか、キツ…ひ、ひぎぃぃっ!!…」

「ぃが一個多いよ!ふぅ!ふぅ?」

「・・・・」…


 こうなれば!直接直談判だ!4時間目終了後(意識どころか保健室で過ごした。)

のチャイムと同時に職員室に駆け込んだあたしは稲荷寿司弁当を美味しそうに“ハムハム”しているフォクシー先生に詰め寄り、事の次第を話した。


「ていう訳なんです!先生!!なんで、午後は映像を別のにするか、私の部分を大幅カットで!!ヨロヨロでお願いします!!」

「ええ~っ、それは無理デスよ~教材資料ですから~」


困った~みたいに両手を“フルフル”する先生の胸倉を掴み、叫ぶ!(かなり胸がたわわ!)


「無理じゃないんですよ!先生!!こっちは自身のデッド・オア・アライブが、かかってるんです!お願いしますよ!」

「でもぉ~!そんな事でぇ、授業内容を変えるワケニハ~」

「そんな事っ!?生徒一人の生死がそんな事と言うたか?この胸か?それともこの

フルフルな狐耳が言ってんか?もしも~し!!聞こえてますか~?今度出す同人誌は

“狐耳ティーチャー!生徒に…”18禁にしようかな~?」

「キャアアア、止めて下サ~イ!」

「止めて下さいじゃないデスよ!こうなりゃ地獄は道連れ!先生の本で壁際配置の

大手サークルになってやりますよぉ!」


あたしの声が大きすぎた。ふと恐るべき視線に気が付けば、職員室の入口に九鬼とみぬきが立っている。恐らく保健室で休んでいたあたしの(誰が原因だよ!と思うが)様子を見にきたのだろう…みぬきが面白そうに、九鬼は冷たい顔と拳を握りしめている。


「あのくーさん…」

「…お願い…って言いなよ?ふぅ…」

「あの、その、お願い…」…


 昼休みになった。現在、教室の床に正座中ナウのあたしだ(九鬼曰く“お仕置き”との事。食事も彼女の生足に乗せた経由でとらされた。)30分休憩が終われば、午後の授業が始まる…もうすでに、肉体的にだいぶ壊れかけだけど…トドメの時間がやってくる。九鬼は今、

お手洗いに行っている。このわずかな時間に上手い手を…いや、もう正直疲れた。このまま静かに最後を待つのもいいかもしれない。“狂うJAPAN”の現象以降…漫画的要素が

現実化した事を受け、オタク達もだいぶ“オープン”になったと思う。電車や学校内で堂々と萌えアニメについて語り、服装やキャラモノのバッグを持つ彼等、そこに描かれた存在が実際に町中やメディアの中を闊歩している訳だから仕方ないのかもしれないが…自分が

神経過敏なだけだ。この時代において隠れオタ的な者は存在してはいけないのかもしれない…“順応”という2文字の漢字が頭で踊る。ふと何かの声が、あたしの耳元に聞こえてくる。目を上げればクラスメイト達が携帯に映った動画を見ている。自分達が小学生の時に

流行ったダークヒーローモノのアニメだ?確かタイトルは「マッドマン(泥男)」

内容から察するに、最近テレビでやっていた「特選懐かしアニメの名場面集」の一部、

マッドマンのラストシーンだ。体中が泥で出来た彼は最後の敵を倒し、大雨の降る夜を歩いていく。自身の弱点である雨の中をだ。体が溶けて徐々に小さくなっていく彼に、人々が声をかける。


「何故だ!?平和な世界になったって言うのに。何故、死を選ぶ?」


その問いに彼は短く答え、水たまりに沈んでいく。


「私は…嫌だ…」


マッドマンは知っていた。自分達のような異能者を全て倒した後の世界を…

それらを全て倒し、自分だけが異能な世界…そんな世界では生きる事ができない事を。

一番よく知っていたのに、結末がわかっていたのに…順応を選ばず自分の生・き・方を貫き

世界を守ったのだ。あたしの心は熱いモノでいっぱいになる。


「やっぱりアニメ最高!…」


立ち上がる。自分が隠れオタで、親友がオタク嫌いだっていいじゃないか!それはあたし

自身が選んだ、確立した生き方なのだ!!人に隠れてとか!人の目を気にする、

そんなライフでいいじゃないか?自分が選んだ道だ!!後悔もクソもない。親友の九鬼もみぬきも好きだ!でもアニメも大好きだ!!この、あたしの人生において、最も重要な

“要素”を漏らす事なく生きるために何でもやってやる!そう決めた。こちらをアホ面で

眺めていたやーさんの前に立つ。ニヤニヤ笑いの奴さんの顔面を張り(先程と同じくらいの

盛大な血が飛び散った)倒れ込む彼のズボンからライターを拝借する。やーさんが

粋がってタバコを持っていると言ったのは嘘ではなかったようだ。教室を飛び出し、人気のない屋上前の廊下に辿りつく。階段踊り場に置かれたいる予備の椅子を引っ張り出し、その上に立ったあたしは、天井にライターを翳す。


「マッドマン…参考になったよ。」


着火したライターと火災報知器の音、そして、彼にトドメを刺した水が勢いよく学校全体に降り注いだ…


 「午後の授業中止だって。」


あたしの頭を丹念にタオルで拭き取る九鬼が耳元で囁きかける。学校全体が水浸し…

当然の結果だ。流石の彼女も、自分がここまでしたとは思ってないらしい…良かった。


「帰りにゲーセン行こっか?くーさん。」

「うん。」


嬉しそうに頷き、カバンを取りにいく彼女を目で追う。良かった。結果はヒドイが。

万事何とかなった。やーさんは殴られすぎて、よく覚えてない様子だ。あたしが疑われる事はない。良い気持ちで鼻歌を歌うあたしの鼻先に携帯の画面が突き付けられる。そこには

コミスパ会場で嬉しそうにピースサインの自分が…!?


「いやぁ~ざんねん、今日の授業はふぅの見せ場だったのにねぇ~?」


すっごく妖艶な笑顔のみぬきが自分の前に立っていた。あたしの闘いはどうやら、まだまだこれからのようだ。苦笑半分(震えを悟られないように)恐る恐るで聞いてみる。


「あの、何をしたらいい?」

「とりあえず~“ワン”って言いなよ。ふぅ~♪?」


(終)



 

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