第3話. ネタと作戦。

【 ノォール・アシスタントA&B 「トリオ:漫才コント『モンスターと人間』」 】


A:「いやいや、日々モンスターやっているとね、結構キツいんですよ」

B:「えっ、なにがキツいの?」

A:「モンスター同士のテリトリー争いですよ」

B:「へぇ」

A:「ここ高原でしょ? あっちに森、あるでしょ? 原っぱと森のモンスターって微妙にちがうわけ」

B:「ほうほう」

A:「んで、僕らメシ食わないと生きてけないから、エサ探すじゃん」

B:「ふんふん」

A:「普段は原っぱにいるんだけど、エサが見つからなかったら森にいく。すると、森のモンスターに、『ここはお前の居場所じゃないだろ!』って言われるの」

B:「あら、大変だね」

A:「そっから、話し合いですよ。『あなたも原っぱに来ることあるでしょ? 気分転換とかで……』」

B:「……そこへ!」

A:「へ?」

B:「“人間”がやってきました」

A:「あ、さっきから黙ってるお前、“人間”やって」

ノォール:「あ? “お前”って、誰に口きいてんの?」

A:「(ノォール様! あくまでも、ネタです! ネタの台詞です!)」

ノォール:「(あぁ、そうか……)おいおいおい、こんなとこで、モンスターたちに遭遇しちまったなぁ!」

A:「あっ、人間! 今、こっちは取り込み中なんだよ!」

B:「そうだそうだ! テリトリー争いで忙しいんだよ!」

ノォール:「(お前ら、さっきからなんで俺にタメ口なの……? 普段からそんな感じ?)」

A:「(いや! ですから、ネタなんです!)」

B:「(ヤバイっす! 持ち時間、終わるっす!)」

ノォール:「(そうか、ネタ中だったな……)……テリトリー争い? そんなん知らねぇよ! この世界では、人間様が一番エライんだ! ぶち殺すぞ!」

A:「やい! やれるもんなら、やってみろ! 出来そこないのボス野郎!」

B:「そうだ! そうだ! 上半身裸の変態野郎!」


 ノォールは、アシスタントA&Bのもじゃもじゃを掴み、持ち上げた。


A:「あっ、痛い痛い! ホントに痛い! ネタです! これ、ネタですってば!」

B:「ちょっ、そこは股間です! ちがう世界が広がるぅ!」

ノォール:「人間の怖さを思い知ったか! ガハハハハハ!!」


  *  *  *


 ターン終了。はたして、どこまでがネタだったのか……。不覚にも、A&Bのマジっぽいリアクションに笑ってしまった。あと、ノォールが、敢えて人間役をやるのも良かった。


 パーティ内のHPを見る。ヤバイ。全員、今の攻撃で減りがすごい。次のターンで決めなくては。


「みんな集まってくれ、次のターンは……」


 私は、考えた作戦を3人に伝えた。


「……ということだ。大丈夫か?」

「OK!」

「OK!」

「OKの反対の反対!」


 先に私の番だ。再び、ピン芸。


「……すかされた……」


 嘆くジグをスルーし、ノォールの前に立つ。


  *  *  *


【 ナガイ 「ピン:漫談『なぜ、“おっぱい”は高尚なのか?』」 】


なぜ、“おっぱい”は高尚なのか?

そんな話しをします。

これは、下ネタではありません。

人生を歩む上で、大事な話です。


例えば、スマートフォン。

スマートフォンは、“いつでも、どこでも”、情報を引き出せる、技術の結晶です。


それでは、“おっぱい”はどうでしょう?

“いつでも、どこでも”、見たい! と思ってもみれない。

触れたい! と考えても触れられない。

こんなにも、時代は進んでいるのに……。


しかし、だからこそ、“おっぱい”がもつ、本能のまま、自由とならないことに、“貴重さ”を感じるんです!


つまり、“おっぱい”を見たり、触れたりするのは、「今しかない」という、「瞬間」が勝負。

そこに至る経緯を考えると、なおさら、貴重な時間でしょう!


“おっぱい”と向きあう。

日常生活で、こんなにも集中することがありますか!?


「瞬間、瞬間、人を集中させる存在力」が、“おっぱい”にはあるんです。

大きさに関係なく、“おっぱい”そのものを、私は心からリスペクトします。


“おっぱい”が秘める力、私もつけます。

以上です。ありがとうございました。


  *  *  *


 ……ここは、「笑わし」に行かない。思考を「聞かせる」プレゼンスタイル。狙い通り、“おっぱい”に興味あるノォールは、今のネタを「なるほどな……」と深く聞いていた。余韻にひたっている。


「今だ! ジグ、エリザ、フィリー! トリオネタ!!」


  *  *  *


【 ジグ・エリザ・フィリー 「トリオ:コント『今日の気分』」 】


ジグ:「いや〜、今日は羽交い締めしたい気分じゃな! あっ、ちょうどここに羽交い締めしがいのある身体がある! ソレッ!!」


 ガシッ!! ジャンプしたジグ。ノォールの背後に飛びつき、力強く締め上げる。


 私のピン芸に注目させる間、バレないよう、後ろに回りこんでもらったのだ。そして、


エリザ:「あぁ! 今日は、この“草”をブンブン振り回したい気分ね!」

フィリー:「そうですねぇ〜、振り回しがいがある“草”ですものねぇ〜」


 エリザとフィリー。身動きが取れないノォールの左右に近づく。2人は高原でむしり取った、“適度に長い草の束”を持っている。


ノォール:「ぐっ、な、なんだ! “小道具”だと!?」


 地肌の脇をめがけ、ぐるぐる草が振り回される。


エリザ:「それそれそれそれ!!」

フィリー:「こちょこちょこちょこちょ〜」

ノォール:「ドワァッハッッッハッハァーーーッッッ!!!!!」


 最後に大笑いをしたノォール。ズドンッ!! 倒れた。ニコニコしながら、絶命。勝った!!


 そう。「笑わせれば、ダメージを与える」というルール。私は、闘い方を「ネタ」ではなく、「くすぐり」にした。……卑怯? 闘いの「目的とゴール」は「面白いネタ見せ」ではなく、「笑わせる」ことだ。


 これは卑怯かな? と注意しながら闘って、こっちが死んじゃったらたまらんよ。でしょ?


 生きる術。生き残る術。真剣に考えての行動だ。大真面目だ。「真面目にふざける」。それが、私のモットーだ。


  *  *  *

  *  *  *

  *  *  *


「なんとか、勝てたわね」

「あぁ、危ないとこじゃったな」

「よかったですぅ〜」

「……みんなありがとう。しかし……できれば、はやく元の世界に帰りたいな……」

「……であれば、ラスボスを倒せばいいのよ!」

「倒したらなんかあんの?」

「なんでも『願いが叶う』って噂よ」

「本当に!」

「そう、業界の噂……」

「業界ってなんだよ……」


 ピロピロピロ! エリザのHPが回復した。


 まぁ現実世界でも、「笑いとユーモア」の力をつけようとしていたところだ。時間軸は同じっぽいし、こっちの世界でクエストを進めながら、芸の力をつけるのもアリか……。


「じゃあ、ラスボスを倒すまで、進んでみようかな」

「そうこなくっちゃ!」

「ちなみに、ラスボスってどこにいるの?」

「見える? あの遠くの山。頂上にある、塔の中よ」

「あれか……あの塔の名は……」

「『芸能プロダクション』よ」


(完)

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